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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
とにかく出会いは最低最悪
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第10話

アスタルテに勤めてから、何度、対飯田の恋愛相談を受けたことだろう。

受付の若い女の子から、システム部のベテランまで。

人当たりがいい上気配り上手だから、見た目のチャラさに一瞬警戒する女性陣も、徐々に彼の魅力に気づいていくのだ。

本人は気にしているらしい童顔&垂れ目のアイドル顏も、女性の心を惹きつける大きな要素だろう。

(……って、今は飯田君の分析をしている場合じゃなくて!)

会社に着く前に彼に確認すべき重大要項は、まだたくさん残っている。

「で、面談の件なんだけど、続き聞いてもいい?」

「ああ、ごめん。話が逸れちゃって。その例の役員の人が、直々に遠藤を指名してんだよね」

「……はあ?」

氏名、誌名、市名……。

(―――違う! 指名だ!)

思いつく限りの単語を並べ、私はようやく答えにたどり着いた。

でも、あまりにも急すぎる展開に、何がどうなっているのか頭の整理がつかない。

そうこうしている間に、視界に本社ビルが映る。

とにかく会社に到着する前に、最低限のことだけでも飯田君から聞き出しておきたい。

「指名って、どういうこと? 何に指名されたの、私?」

「いや、だから遠藤が面談第1号なんだって!」

「はあ!? 私が!?」

(なんで私が第1号なの!? 意味わかんないんですけどー!)

いきなりの通告に、玄関前の階段で思わず足を踏み外しそうになる。

「おっと、危ない!」

にゅっと飯田君の腕が伸び、私の二の腕をぐっとつかんだ。

突然のことに、心臓がバクバクと大きな音を立てている。

「あ……ありがと」

「どういたしまして」

飯田くんはおどけた口調でそう言って、さっと手を離した。

(やばい、あのまま転んでたら本当に今日は踏んだり蹴ったりの1日になっちゃってたわ!)

彼の俊敏な対応に感謝しつつ、激しく脈打ったままの心臓をなだめる。

そしてトートバッグをごそごそと漁り、社員証のカードケースを探しながら飯田君に尋ねた。

「ねえ、それって決定事項なの?」

玄関からロビーに入ると、そこには恐ろしいくらいの静けさが広がっている。

受付の女の子達が、私達に気づいて会釈してくれた。

軽いお辞儀を返し、ふと目に入ってきた壁の時計が示す時間は、午前9時5分。

遅刻も遅刻。大遅刻である。

比較的営業部は遅刻をしても「前日の接待がたたったのだろう」と大目に見てもらえたけれど、総務部に配属されてからは常に始業20分前出社を心がけていたのに……。

部長からの大目玉を覚悟して、私は自動改札機に社員証を押し当てた。

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