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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
とにかく出会いは最低最悪
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第01話

4月1日、木曜日。

この日は、どの会社にとっても新年度が始まる大事な日に違いない。

でも取り分け、私が勤務している株式会社アスタルテにとっては、社史にでかでかと記載すべき記念日となる日はずだ。

なぜなら、今日から経営体制が一新し、新たな会社に生まれ変わるから……!

これから広がる大きな希望と期待を胸に、私―――遠藤遙えんどう はるかは鼻歌をうたいたい気分で、通勤路を踊るように歩いた。

歩道の傍にある花壇には色とりどりの春の花が、可憐に揺れている。

街路樹の新緑を揺らす風が、何とも爽やかだ。

昨夜の大雨に葉が洗われて、みずみずしい緑の光を放っている。

(天気予報では今日も雨だったのに、なんていいお天気! まるで、私の門出を祝ってくれているみたいじゃない!)

私はうっとりと、これから先に待ち受けるバラ色の未来に酔いしれた。

株式会社アスタルテは、外資系のクレジットカード会社だ。

世界各国に支社があり、多くの加盟店を抱えている。

小さな個人経営のお店でも、クレジットカードが使えるとすれば、それはアスタルテ系列のカードであることが多い。

入りたい企業ランキングでも毎年10位以内にランクインするほど、知名度・実績ともに名高い会社だ。

そんな一流企業に私は今年で勤続6年目になるわけだけれど、いささか労働環境に不満を抱いている。

私が現在所属している総務部には、別名がある。

それは「アスタルテの流刑地」だ。

文字通り、使えないと会社が判断した人間が、最終的に島流しにされる流刑地である。

私は、流刑される2年前まで、カード会社のエース的立ち位置といえる営業部に勤務していた。

でも、取引先との打ち合わせで役員の機嫌を損ねるという大失態を犯してしまい、私は早々に「流刑」されてしまったのだった。

(でもあれは私のミスじゃなくて、エロ親父がいきなり内腿触ってきたのを注意しただけじゃない! それを逆恨みして、上層部にクレームまで出すなんて!)

たかが2年、されど2年。

備品や機器の手配、社内イベントの企画・告知など、おおよそ第一線とは呼べない環境で、惨めな仕事を黙々と続けてきた。

「嫌なら辞めてくれていいんだよ?」

廊下で偶然すれ違うたび、営業部時代の上司達はニヤニヤしながら耳打ちしてきたっけ……。

(今思い出しても腹が立つ……!)

18歳になって生まれて初めて自分のクレジットカードを作った時、私は迷わずアスタルテを選んだ。

クレジットカード会社の老舗とも呼べるアスタルテは、学生時代から私の第一志望の会社だった。

私は日本トップクラスの会社で、自分の力がどこまで通用するか試してみたかった。

面接では「御社に骨を埋める覚悟です」と役員達に猛アピールし、その結果、念願叶って女性でも男性と対等に活躍できる営業部に配属された。

「女だから」「女のくせに」なんて誰にも言われないように、必死に目の前の仕事を片づけた。

そうして遮二無二働いているうちに、いつの間にか表彰されるまで、私の営業成績は伸びていたのだ。

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