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亡き妻から届いた手紙

親愛なる絢斗へ


 元気でやっていますか?


 この手紙を読む頃、絢斗は二十七歳になっているんですね。三年後の結婚記念日にこの手紙が届くよう送るつもりです。きっと既に新しい彼女ができて幸せな日々を送っているんだろうな。


 私の事は気にせず、新しい恋をして下さいね。


 わたしも向こう側で絢斗よりイケメンつかまえてやるから(笑)


 病院の先生も絢斗も癌の事は隠しているようですが、私の体の事は私が一番よく解ります。もう先は長くないのですね。


 実は今、お腹に赤ちゃんがいます。市販の検査薬で調べました。病院の先生には言っていません。


 お腹の赤ちゃん、産んであげられなくてごめんなさい。私が死んでしまう前に未熟児のまま帝王切開で産む選択肢もあると思いますが、これから先の絢斗の為に赤ちゃんと一緒にあちらの世界へ行こうと決めました。


 あっ、ごめんね。「重い」なんて思わないでね。私が決めた事なので(^^)


 だから私、寂しくないよ。赤ちゃんとずっと一緒にいられるんだもん。


 一年にも満たない結婚生活だったけれど、私、幸せでした。絢斗に巡り合わせてくれた神様にも感謝しなきゃだね。


 沢山の思い出も絢斗からもらいました。一番の思い出はやっぱり海かな。出会いも浜辺、定番のデートコースも浜辺、結婚式も海が見渡せるチャペルだったね。


 最後に一つお願いがあります。毎日私の事を思い出して下さいとは言いません。年に一度でいいから私の事を思い出してやって欲しいな。


 いろんな記念日、誕生日やクリスマスを一緒に過ごしてきましたね。付き合い始めての「一ヶ月記念日」や「半年記念日」なんていうよく分からない記念日も、あなたは嫌な顔をせずお祝いしてくれました。


 でも唯一私があなたと過ごす事のできなかった記念日があります。それは結婚記念日です。その日に僅か一分でもいいので思い出して欲しいのです。


 私には両親も兄弟もいません。だから絢斗が私の事を思い出してくれなくなってしまったら、私が二十二年間生きてきた(あかし)が無くなってしまうような気がして……。


 さよならは言いません。年に一度絢斗に会えるんだもん。あっ、強制トークだね(笑) 看護師さんが検温に来たのでこの辺でペンを置きます。


 私を愛してくれてありがとう。わたしも絢斗を愛してます。本当にありがとう。幸せでした。


 じゃあまたね。 

    

 平成二十三年十月一日      優花



追伸


 さっきはごめんなさい。せっかく買ってきてくれた抹茶のケーキなのに。「もう! 頼んだのはこのケーキじゃないよ!」なんて怒ってしまって。とっても美味しかったです。

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