表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/61

チート武器(仮)

 カウンターの上で広げられた包みの中身は見覚えのある武器だった。

 黒と銀の、正体不明の素材で作られた細長い無骨な見た目。

 ……いや、まどろっこしい表現は止めてハッキリ言おう。


 妖精族フェータが取り出した代物は拳銃、それもリボルバーと呼ばれるタイプのものだ。


「どうッスか? これ僕が現役時代に使ってた武器ッス! 当時、全てにおいて最弱と言われてたある魔族達が使ってた物をチョロまかしたッス!」

「魔族……」


 魔族繋がりという訳ではないが、これを見て思い出したことがある。

 ……ガーディアンゴーレムの武装だ。


 あれが追加装甲なのか、それとも標準装備なのか、魔物の専門家ではない俺には判断が付かなかったが、全体像は……なんていうか、日本ではわりと有名なガン○ムとかアー○ード○アに似ていた。


「魔族……もしかしてそれはライカ族のことか?」


 と、ここで難しい表情を浮かべたまま、ネージュが店員に尋ねてきた。

 ……何だろう、顔色が悪いな。


「そッス! ライカ族が使ってたッス! つっても直接の開発者は別にいるみたいッス」

「ライカ族が作ったんじゃないのか?」

「ライカ族は取り柄らしい取り柄のない魔族ッス。言っちまえば魔族の一般人だと思えばいいッス」


 なるほど……全ての魔族が戦闘に特化した種族という訳ではないのか。


「ネージュ様、ライカ族について何かご存知なのですか?」

「里──こほん、私の故郷を襲った魔族の中にライカ族を筆頭に、これと似たような武器を使う輩がいた。耳を裂くような轟音と煙を撒く武器……我々は、その攻撃の軌道をついに見切ることは出来なかった」

「そう、でしたか……。申し訳ありません、不躾なことをお尋ねして」

「いや、シャルロットは悪くない。……私も、いつまでも引きずっていては前に進めないからな」


 二人が会話をしている間に、俺は件のリボルバーを手に取る。

 重量は一○キロの米袋ぐらいあって、装弾数は五発と、一般的に知られているリボルバーよりも少ない。


 ただ、現役時代使っていたというわりにはリボルバーで回転する部分に焦げ跡が全くないのが気になった。


「これ、火薬は使わないのか?」

「? 何言ってるッス? それ魔力で撃つッス」


 火薬の代わりに魔力で撃つのかよ……流石ファンタジー。


「弾……ここに詰めるものがあると思うんだけど」

「勿論あるッス」


 そう言って、今度はカウンターの裏から木製の箱を取り出してきた。

 箱の中には確かにリボルバーの弾丸と思われる弾が一列にずらりと並んでいる。


 但し、弾に使われている素材は素人の俺でもハッキリと分かる高価な素材……ミスリルで作られていた。


「これ、もしかしてキミが?」

「そッス。……あ、自己紹介がまだだッス。僕はアラン・スミシー……フォルジィスト(この店)の店長をやってるッス!」


 店長だったのか……。

 いや、確かガッシュさんは引退後、店を立ち上げたと言っていた……だからアランさんが店長だとしても不思議じゃない。


「それで、どうするッスか? ガッちゃんの話じゃ武器必要ッスよね? お兄ちゃん見たところ特殊魔術を使う魔術師みたいッス。だからこれ以上の武器はないと保証するッス」

「どうしてこれ以上の武器がないと言い切れるんだ?」

「はぁ……お客さんなら分かってくれると思ってたッスけど、全然ダメダメッス。……魔力を練り上げる……これはそれだけで即時発射可能ッス。なのにがッちゃんや他の連中は音がなるし魔術とそう変わらない弓の方が静かだからそっちが良いとか、ちーっとも理解ないッス。お客さんもソッチのクチッスか?」

「いや、言いたいことは分かった。つまり、こういうことだな? この武器は弓よりも遥かに低い練度で扱うことが出来る上に、ある程度の魔力があれば誰でも即戦力の兵士になれる……ということか?」

「分かってるじゃないッスか! なのに人間ときたら、魔族が使ってる、開発したってだけでロクに見向きもしないッス……優れた武器は積極的に使うのが普通ッスよ」


 そうか、異世界だと銃は流行ってないのか。

 ただ、背景を考えれば理解できないこともない。


 製造元はさておいても、この世界には既に魔術が存在し、戦場という分野においても有用性を示している。


 魔術は素質が必要だし、実戦で活躍できる魔術師となれば数は限られてくるが、それでもそれなりに存在しているし、運用次第では少数で大隊規模の戦力になる場合もある……と、昔酔っぱらい冒険者が酔った勢いで話していた。


 教育に手間は掛かるものの、後継者を欲する高名な魔術師は勿論、ギルドや組織も魔術が使える人間は欲しがるものだ……それこそ、国が政策を打ち出して支援する必要がないくらい熱心に。


 銃を主力に置くとしたら当然、有用性・実用性を正しく伝えて、それが成功したら今度は生産ラインを確保しなければならない……一言で言えば金と時間と手間が掛かる。


 魔術師の育成にも同じことが言えるが、有用性については今更説くまでもないし、威力を出すという点では拳銃よりも魔術の方が優れているのは議論する余地もない。


 弓が普及しているのは製造コストの面で優れてるからだろう。

 長弓を扱える人間なら魔術以上の射程を誇るしな。


「念のため訊くけどコレ、ちゃんと使えるよな?」

「当たり前ッス! お兄さん、買う気になったッスか? 今なら特別価格で五ゴールドで提供するッス!」

「五ゴールド……」


 思ってたよりずっと安い。

 買えない金額ではないがガッシュさんから受け取った報酬が丁度すっ飛ぶ額だ……これはちょっとまずい。


 何がまずいかと言えば明日、キャスト達の労いの費用が綺麗サッパリ無くなる……でもこの銃は凄く欲しい。


 殆ど直感だが、この銃は俺ととても相性がいい……何せ魔力の質をそのまま弾丸に乗せて撃ち込めるんだ。


 店長にも話していないことだが……ざっくり説明すると俺は整体魔術を使う際、魔力の質を身体に良い影響を与えるモノ──例えばビタミンやコラーゲンとか、そういうの──をイメージして体内に流し込む。


 そしてこれはその逆、つまり有毒なモノも精製できる……薬師が毒に詳しいのと同じ理屈だと思えばいい。


 現に俺はガーディアンゴーレム戦で有毒な魔力を作ってそれを直接流したことがある……大型の魔物にも充分通用するのだ。


「んん? お兄さんもしかしてお金のことで悩んでるッス? まぁ気持ちは分かるッスけど……うん、どうせならお兄さん闘竜場に出ればいいッス!」

「闘竜場って、あの街の中央にあるアレ?」

「そッス。闘竜場は武器の試し切りをするにはうってつけの場所ッス。選手として登録してお兄さんが勝てば賞金が貰えるッス。当然、上のランクに行くほど賞金も沢山出るッス!」


 闘竜場で魔物相手に試作品の試し切り……いや、この場合性能テストと言った方がしっくり来るな。


「闘竜場って、複数で参加すること出来ない? 例えば三人で一組のチームとか」

「出来るッス。チーム部門はそれなりに人気のある部門ッスから。まぁたまーに人対人になっちゃうッスけど……双方の合意がない限りは殺し合いにはならないッス」

「うーん……」


 たまに……の下りは少し気になるところだけど、気持ちはかなり銃の方に傾いているから参加してもいいんじゃないかっていう気持ちが強い。


 ただ、個人的な都合で二人を巻き込むのもどうかとは思うから一応、チーム戦に出る気はないか二人の意志を確認する。


「私としては否やはありません。御主人様を御守りする上で力は絶対必要ですし、こういう修行は積極的にこなしていくべきだと、私に槍術を教えて下さった師匠も仰ってました」

「護衛という立場上、反対だな。ただ、出てくる魔物次第では同行してもいい。明らかに危ないと感じる魔物は止めるが……」


 つまり、二人ともそこまで抵抗がある訳ではない……ということだ。

 ミスリル針を求めて彷徨っていたんだが、まさかこんなことになろうとは……。


「……仮に銃を買ったとして、弾はどうなるんだ?」

「僕の店にくればいいッス。一応、鍛冶職人ッスから僕は弾の製造代で稼がせてもらうッス! あ、弾丸もミスリル素材使ってるから一発一ゴールドは掛かるッスよ」

「大物狩らないと赤字確定じゃん……」


 この銃は五発しか装填できないが、それでもリロードなしなら最大で五ゴールドの出費は覚悟しなければならない……つまり、こいつで狩りをするなら最低でも一ゴールド以上の収入が得られる魔物を倒さなければならない。


 ……いけない、思考がそれた。

 銃のせいでここへ来た本来の目的を忘れるトコだった。


「えっと、アランさん……ガッシュさんからアランさんのことを少しお聞きしたんですが、こんな感じの道具って作れませんか?」


 口頭で説明しながら俺は、目の前の妖精族フェータにミスリル製の、極細の針を作れないか相談してみた。


 メリビアの炭坑族ドワーフ達には軒並み断られた依頼だから、正直そこまで期待はしていなかったけど──


「ん? できるッスよ。手間賃と技術費用込みで……二ゴールドってトコッスね。……あ、それだとお兄さん銃諦めなきゃなーって思ってるッスね?」

「……なんで俺の懐事情を把握しているんだ?」

「ふふん、妖精族フェータの神秘ッス。でも大丈夫ッス。今闘竜場には大口の試合があるッス! その試合に勝てばなんと、賞金一○ゴールドが貰えるッス! こりゃもう行くしかないッスよね?!」

「え、えーっと……」


 魅力的な話だけど、どうしよう……出るべきか、先延ばしにするべきか……。

 事情を聞く限り、後日来てもまだ売れ残っている可能性はある……が、その後日というのが何時になるのか全く分からない……そのことを踏まえるなら今ここで購入しておかないとまずい気がする。


 或いは、やっぱりミスリル針は後日にして銃だけ購入するという手もある……作れることは分かったんだ、何も急ぐ必要はない。


「御主人様? 私のことでしたら遠慮しなくても宜しいですけど?」


 シャルロットが気遣って話を振ってくるが……そうだな、ここは銃だけ買って闘竜場の試合カードを見て、そこで判断しよう。


 ミスリル針は最悪、改めて金を持ってきた時に揃えれば間に合う……魔力の消費が多くなるだけで現状、これと言ったデメリットがある訳じゃない……よし決めた、今すぐ買おう。


「──決めた、その銃買うよ」

「毎度ッス! ガッちゃんの紹介ッスから、最初の五発はサービスしとくッス!」


 こうして俺は、この世界に似合わないが、異世界人たる俺には何処かしっくり来る武器リボルバーを手に入れた。


この武器は迷宮編終了辺りから登場させたいと思ってました。

主人公の能力を考えた結果、多分これが一番のチート武器だと思います。

ライフルとかスナイパーだと扱いが困るので分かり易い制限のあるリボルバーぐらいが丁度いいかと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ