9
私が遺跡から出ると、敵らしきウディアードが馬車を人質に喚いておりました。
「墓荒らしとは一体どういう事なのかしら?」
喚いている連中に問えば、隊長らしき人物が剣を此方に向けながら、得意気に語り始める。
「この山の中にあった遺跡は、我等アーリスル王国の領内である、そしてそこに眠る遺跡もまた我々の国の古代文明の墓である! それを堂々と盗もうなど!」
「あら、ですがこちらは魔導帝国の国内でしてよ? 貴方方がアーリスルの者と言うのならば、魔導帝国へ不法侵入の上魔導帝国の領内で魔導帝国の者を奪おうとしていると言う事になるのですが、あら嫌ですわ、もしかして山賊かしら」
「何をバカな! そちらが我が領内から略奪した物を取り返そうとして前に出て来ただけの事! そもそも魔導帝国の者では無い! そして我等を山賊と愚弄する貴様は絶対に許さぬぞ!」
「はいはい、煩いですわね、それで貴方方はアーリスルの者で?」
「その態度は何だ! そうだ、我々はアーリスル王国の者だ!」
「あら……では騎士なのかしら?」
アーリスル王国にはこんな品の無い騎士が大勢いるのかしら?
それにしても騎士とはまた違うような気もしますが、この方たちは一体なんなのでしょう。
「フッ、我々をあのようなお遊び集団と同一にされては困るな、我々こそがアーリスル王国の武を裏から支える者達だ」
「あらあら、裏の者なのに堂々とおてんとうさまの元に出てきて名乗りを上げるなんて……私あなた方の残念な思考回路が分かりませんの」
アーリスル王国に裏のウディアード部隊が存在すると言うのですか?
そのようなお話し、王妃教育を受けた私でも知りませんわよ。
……王族やそれに近しい物だけが知る事の出来る特殊組織と言った方がいいのかしら。
しかし、あの王様がこのような強硬手段に取るとも考えにくいですし、となると独立していると考えるのが妥当ですわね。
あの国にもこのような闇があるとは……国と言うのは本当にわかりませんわね。
「貴様、おちょくるにしても大概にしろよ!」
「ではこうしましょう」
「話を聞いているのか!」
「聞いていますわよ? 裏のお仕事なのに表に出て来たV型ですわよね?」
「……これ以上我々を怒らせるなよ、此処にある馬車を壊されたくな無いだろう?」
「あら? 脅しですの? なら……」
「ッ! 回避!」
私は瞬間腰の銃を抜き、四機の膝を狙い撃つ。
三機は後ろにバックステップで逃れたようですが、一機は当たり膝を庇うようにして後ろへと下がった。
威嚇に当たってどうするのでしょうね、その程度の腕と言う事ですわね。
私達は馬車の前に立ち人質となっていた馬車の前へ、四機のウディアードと馬車の間に入る。
「……私思うのです」
「やってくれたな貴様! 外交問題にするぞ!」
「貴方方も話は聞かないではありませんの……いいえ、それは無いですわ」
「先に手を出したのはそちらだ……」
「そう言う事を言っているのではありませんの」
私は声を被らせるようにして答える。
「私は元公爵令嬢アメリア・アゲットですわ……そしてそのアメリア・アゲットを王様はどうやら連れ戻したいご様子」
「何! 貴様が!」
「ですから、これはアーリスル王国から逃げようとしていて、偶々ウディアードを見つけそれに搭乗、そしてアースリル王国の追ってに追いつかれて交戦……その後アメリア・アゲットは魔導帝国内に亡命……どうですの? まだ亡命はしておりませんから、あの中がアースリルだと言うのであればこれは自国の問題でしてよ」
「そんな馬鹿な言い分が通ると思ってか!」
「命からがら逃げた令嬢なんて絵になると思いませんこと? それにその無理を通してこその私ですわ! 元々勢いでその場を言いくるめて出て来たも同然なのですもの、おーっほっほっほっほっほっほっほっほ」
「……もういい、このご令嬢様をあの世にお連れしてやれ」
隊長らしき人物がそう言うと、四機のウディアードが此方に剣を向ける。
はぁ、問答は此処までと言う事ですわね、では私も戦闘モードでしてよ。
先ほど持った、ハンドガンよりも大きくしかしライフル程の大きさでは無いそれを左手に、そして右手でレイピアを抜き相手に構える。
最初に動いたの先程足に銃弾――魔力弾――を食らったヴァメリティ。
私はそのヴァメリティに先程よりも魔力を込めて魔力弾を放つ、勿論頭や足、腕、胴といった箇所に一度の攻撃でトリガーを二回引き、ドドンドドンドドンと銃声が鳴り響く。
相手に届いた弾は、何とか剣でいなそうとそして躱そうとしていたヴァメリティの頭部と両足を捕え、そのまま突きぬけて当たった場所を消し去った。
もうあの機体は動けませんわね。
私は倒れ込んだヴァメリティの腕などをオーバーキルしていき立ち上がれないようにする。
一応襲って来た証人として此方の捕虜になって頂くかしらね。
次いでやって来ようとしたのは隊長機以外の二機。
三機でかかってくればいいですのに。
私は左右から挟撃してこようとする左の一機を自動ロックして、自動で左手の銃が相手に魔力弾を撃ち出す様に設定する。
その間に右側から来ている敵にレイピアを向け接近。
この機体はパワーよりもスピードを重視しているようですわね……その分速さを乗せて攻撃すれば並大抵の機体と同等以上の破壊力はもたらせると推測出来ますわね。
相手が構えて剣を振りかぶろうとしたときには既に私の間合い。
レイピアを頭部に突き刺し、鈍ったその動きを見逃さず足や腕に風穴を開けて行く。
そして後ろを見ずに大きく後ろの空中へ跳躍。
丁度真下に此方にやってくるヴァメリティを補足した私は自動ロックを切り、頭部を集中的に撃ち、何とか防いだようでしたが、相手の後ろにクルリと後ろに宙返りをするような形になりましたが、相手の背後を取りそのままレイピアで一突き……二突き……三突き……四突き……すると他の機体と同じように地にふす。
「手ごたえが無いですわね」
流石プレ戦闘と言った所かしら。
私はレイピアを凪ぎながら相手へとその剣先を向けて制止する。
「馬鹿な! 小娘一人……今まで搭乗さえした事の無いような小娘一人に此処まで!」
確かに私は搭乗した事が無くとも、搭乗していたゲームの記憶はありますから、貴方方とは相手に成りませんわ。
「何をそんなに驚いているのかしら?」
「なんだと!」
「この結果は当たり前の事でしてよ、搭乗者の腕も機体の性能も違うのですから……私に勝っているのはそのコックピットの椅子とのお友達歴ぐらいでは無くて? 私に勝ちたいのなら先ずはそのV型をどうにかするのが先決ですわね」
「き、きさ」
「私これでも少々怒っているのですわ……アーリスルにこのような……このような愚劣な組織が存在していると言う事に」
「な、に」
「私は将来王妃となるべく育てられましたわ……しかしその守るべき、尽くすべき国にこのような害悪があり、それに全く気が付かないとなれば自らに怒り、またそのような組織へと怒りを持つのは当然の事だと思いますわ」
「ハッ! お嬢様のようなお貴族様に知られたらそれこそ俺達の面目丸つぶれだ……だがここでは分がワル」
「最後まで言わせませんわーーーーー」
私は捨て台詞を吐いて撤退しようとする機体に銃弾を浴びせ、怯んだ隙に接近し頭部及び腕や足を攻撃、隊長機? は他のヴァメリティ共々と同じように地に付して行った。
「卑怯な……」
「私は悪役令嬢でしてよ? この程度は卑怯ではありませんわ、敵前で悠々と語らう貴方が悪いのでしてよ、おーっほっほっほっほっほ」
皆様お読みいただき、そしてお気に入りと評価ありがとうございます。お蔭様で日間ランキングに載りました! 作者としてもランキング入りは初めてなので、見た時は嬉しさでいっぱいでございました。今後とも少しでも楽しいと思って頂けるような物になれば嬉しく思います。2015/10/8