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令嬢は追放されてロボに乗る  作者: 金谷 令。
第一章 魔導帝国
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 馬車から見える景色は、真っ黒でつまりませんわね。


 服屋を出てからスーフェの手配の元――どちらかと言うと魔導帝国の手配と言った方がいいかしら――馬車に乗り込み、魔導帝国へと進んで行く。


 目の前の初老の男性は何やらスーフェと話しており、此方に聞こえない物凄く小さな声で話しているので聞こえてこない。

 折角なので私にも聞かせて欲しいですわね、内緒話と言う物ほど興味をそそるのですから。


 そう言えば、王様たちの追っては撒けたのでしょうか。

 服屋を出るときに、どうやら追手が来ているらしいと言う事でしたし、関所で捕まるなんてつまらない事にならなければいいのですけれど。

 まぁその時はその時で、一応捕まった後の事も考えておかないといけませんわね。


 ……とは思った物の、やはり気を張り詰めていたのでしょうね、眠いですわ、えぇとてつもなく眠いですわ。

 あれだけ馬に乗って走ったのですし、満足に高笑いも出来ませんでしたから疲れてもしかたがありませんわね。


「スーフェ」

「はいお嬢様、毛布は此方に」


 スーフェは横につまれている荷物の中から毛布を引っ張り出して私に渡してくれる。

 やはりスーフェは長い間共にしただけあって、私の事を良く分かっているわね。


「ありがとう」

「いえ、お嬢様も本日はお疲れ様でございました、ゆっくりとお休みくださいませ」


 私はスーフェのその言葉に一つ頷き、ゆっくりと目を閉じ直ぐに寝入ってしまった。




*****




「お目覚めですかお嬢様」

「……んっ、おはようスーフェ」

「はいおはようございます」

「おはよう案内人さん、それと知らない人」

「おはようございます」

「どもっす」

「…………ってこの人誰よ!」


 いつの間にか日ものぼっており、かなり寝ていたことが伺えた。

 そんな事よりも目の前にいる茶髪でどこか抜けてそうな童顔なこの男は一体何者ですの!

 

「この男は私の部下ですよお嬢様」

「スーフェの部下ですの?」

「ほらご挨拶なさい」

「あ、自分はチェイスって言うッす、スーフェのあねさんにはいつも情報集めてこいって色々な所に飛ばされて……」

「チェイス」

「は、ハハハなんでも無いっすよ、いい上司っすタハハ……はぁ」

「まぁチェイスとは後でお話しするとして」

「……いやっす」

「……」

「了解っす」

「成程、その無言の威圧、有無を言わせぬ笑顔、は部下の方にも発動しているのね」

「何か?」

「何でも無いですわ、それにしても部下と言うのは中々面白いですわね……偶に長期休暇を取った時に逢引でもしていらしたのかしら?」

「はい、その時に必要な情報を探させたり、新たな指令を受け取ったりと色々です」


 成程、確かに年に一度か二度休暇を許している我が家では、その様なやり取りはやり易かったでしょう。

 それにしても約十年も気が付かせないと言うのは、それだけで凄いですわね。

 こちらが間抜けと言われればハンカチをかみしめる程度で言い返せないのですが、いえ逆にスーフェを称え、どーよ私のメイド素晴らしいですわと高笑いが出来ますわ!


 あ、そう言えば私もう公爵令嬢ではないのでした、しかしスーフェは私について来てくれると言っておりますし、これがまた何かのスパイ行為だとしてもスーフェとは気の置けない友の様な存在でもありますから、そのせいで殺されたとしても私の見る眼が無かったと言う事で諦められますわね。


「んっん、お嬢様、因みにですがお嬢様が寝ておられる間に街を通過致しました、こちら簡単で申し訳ございませんがお食事でございます」

「あら、そうだったのね、ありがとうスーフェ」


 スーフェは隣にあるバスケットから簡単なサンドイッチを手に取り渡してくれる。

 私はそれを貰い口に運ぶ。

 そう言えば簡単なとは言え、食事をしたのは一日くらい前かもしれませんわね。

 そのせいかお肉と野菜の挟まったそれを私は直ぐに食べ終え、スーフェに水を貰う。

 はぁ、やはり食後には紅茶が飲みたいですわ。

 そしてそんな甲斐甲斐しく世話? をしているスーフェを有り得ないような目で見ているチェイスさん。

 きっとスーフェは外ではあの威圧笑顔と無言の圧力全開なのでしょう、分かりますわよ、そんな方がこんな事をしていたら驚くでしょう。

 でもそれがスーフェの全てでは無くてよ、スーフェにメイドの仕事は嫌か?と聞いた事がありますが、楽しいですよと少し素っ気なく、しかし確実に本音のこもった声を私は聞いたのですから。


「チェイスさん」

「は、はい!」

「これもまたスーフェですわよ」

「あー……一寸驚いたッす」

「当然ね、でも私といる時にいちいち驚かれてスーフェが呆れてしまいますわよ」

「そ、そうっすよね」

「えぇ、その通りですチェイス慣れなさい」

「りょ、了解っす」

「所でチェイスさんがスーフェの部下だと言うのは分かったけれど、一体何故この馬車に」

「それに関して私めから案内人としてアメリア様にお話しが」


 今まで黙っていた案内人さんがさっと会話に入って来る。


「魔導帝国ではウディアードの調査も盛んであるのですが、新たな遺跡が国境付近に見つかりまして、その調査に急遽近くにいた者達を向かわせる伝令が来たのです」

「それを伝えに来たのが自分っす」

「国境付近と言う事もあり、そして地下遺跡であると言う事も災いし、アメリア様が今離れようとしているアーリスル王国との権利を巡っていざこざが起こる可能性がございまして」

「ですからさっさと調査をして、必要な物は引き上げて撤収したいと言う事ですわね、そしてこの馬車は先ずそこに向かい、最悪私が魔導帝国に行けなくなる可能性もある、と言う事で間違いはなさそうですわね」

「はい、大変申し訳ない事ですが」

「構いませんわ、それに折角ですから、その遺跡とやらにもウディアードにも興味があります、一体何型のウディアードが発掘されるのかしら」


 ……何かしら、少し頭が痛い気がするけど、長旅と言う程長旅でも無いですが、疲れが残っていたかしら。


「……報告によれば量産型MV、ヴァメリティが二機、そして見た事も無い機体が一機あったと、その二機は不明の一機を守る様にしていたとの事です」

「な、成程……因みにその不明な一機と言うのはどのような物なのですか?」

「それは」

「宜しいのですか?」


 そこでスーフェが止めに入る。

 確かにまだ部外者である私には話し過ぎかもしれませんが……知りたいですわね。


「勿論です、それで見つかった一機と言うのは、中距離射撃武器と思しき武器、そしてレイピアを模した剣を持った赤い機体と言う事です」

「銃……にレイピア……赤い……」

「お嬢様? 大丈夫ですか? お顔が少し赤いようですが……」

「大丈夫ですわ……赤い……それは少し軽量化されているような細見のフォルムでは無くて?」


 案内人さんがチェイスさんをちらりと見て、チェイスさんが一つ頷く。


「や、はりそうでしたのね……それは、ライリー皇女殿下専用SVH……ヴァレリア、でしてよ」


 あ、頭が痛いですわ。

 この感じ、前にも一度。


「専用機! ……ってお嬢様がどうしてそんな事を知っているのです!」

「ライリー皇女殿下専用機ですと……御者! 急ぐのです! なんとしても確保しなければなりません!」


 あぁそうですわ、これは私が乙女ゲームの内容を思い出した時と同じ。


「スーフェ」

「はいお嬢様」

「私は、大丈夫でしてよ、直ぐ、良くなりますわ」

「お嬢様、失礼します……ッ、嘘! こんな高熱いつの間に!」


 私はスーフェの驚きの声と共に、眠りへと落ちた。



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