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その後、何とか週末までに場所の当たりが付きましたので、私達はウディアードに乗り込み隠されたヒロイン専用機を回収しに向かいましたわ。
場所といたしましては、帝国領北にあります深い森の中ですわ。
そこには水の女神様が宿ると言われている湖があり、そこでヒロインと特定の攻略した人物が逢瀬のようにひっそりと落ち合い告白するそうですわ。
そして二人が結ばれると、なんという奇跡でしょう湖が割れ階段が出てくるそうですわ。
そして、その中にはヒロインの専用機が眠っているという事ですわ。
その後それに乗り込み戦争を行うというバトルモードですわね。
なんというか、乙女ゲームと前作を無茶苦茶に混ぜ合わせた感が否めませんわね。
そして、今私達はその湖に着いたのですが、さてどうやったら開くのでしょうか。
「さてラリーマよ、聞いた話では告白をすると開くらしいが、からくりは知っているか?」
「いえ、さすがにそこまでは語られていませんでした」
「……ふむ、資格あるものが二人そろって何かしらの魔力を発すれば開くのやもしれんな」
確かに、私はライリー皇女殿下の血族という資格で開きましたし、その可能性は無きにしもあらずですわね。
「では一つやてみるとするか、ラリーマよわが手を取り礼を取れ」
「礼ですか?」
「手の甲にキッスだ!」
「えぇ! それ、姫様がやりたいだけじゃ」
「それがどうした!」
「開き直らないでくださいよ!」
「しかし、やってみなければわからないだろうが」
流石は姫様ですわ。
こんな時にまでその自重のなさはとても羨ましいですわね。
ですが、あの姫様がただの戯言でこんなことを言うはずがないというのは、私達は存じておりますわ。
ですから、ラリーマ様も渋々と言った形ではありますが、姫様の前に跪き手を取り軽くキスを落としましたわ。
するとどうでしょう、ラリーマ様の仰っていた通り、湖が左右に割れるように階段が現れたのですわ。
「……」
ラリーマ様はなんとも言えない表情で姫様を見ておられ、姫様はいい笑顔でサムズアップなさいましたわ。
えぇ、さすが姫様でございますわね。
「それでは参りましょう」
空気が蕩ける様に緊張感がなくなってしまいましたので、一応私が先を促しますわ。
階段は湖に沈んでいたとは思えないほど綺麗でしたわ。
水草や藻などが全く絡まっておらず、先ほど作られたといっても過言ではないような有り様ですわね。
中に入ると、そこは大きな部屋が一つあるだけでしたわ。
しかし、その部屋はびっしりと意匠が施されており、とても神聖な気配が致しました。
その真ん中に鎮座するモノ。
濃紺の甲冑を思わせるような機構をしているヒロイン専用機。
その大きさは私のヴァレリアよりも頭二つほど抜きんでており、横幅は二倍はありそうでしたわ。
一言で表すのであれば、ゴツイですわね。
姫様とラリーマ様はその機体に臆することなく近づいていきますわ。
すると、機体がかすかに動き始めましたの。
そして、背中の搭乗口が開き梯子が垂れ下がりますわ。
搭乗できる空間には二つ。
どうやらこのウディアードはゲームと同じく二人乗りという事のようですわね。
「私達は先に戻っておりますわ」
「わかった、取り合えずこのデカブツをどうにかせんとな」
私は姫様に一言言って、スーフェと共に地上へと戻りますわ。
今回はこの四人で来ておりますので、帰りは三機のウディアードが闊歩することになりそうですわね。
私も愛機に乗り込み、姫様たちを待ちますわ。
多分ですが、魔力の登録であったりスキャンであったりをされている頃でしょうから、もう少しだけ時間がかかりそうですわね。
「姫様たちとはいまだ通信が繋がりませんね」
「まだ搭乗手続きの途中だと思いますわ、まぁもう少しゆっくりと待っていればしっかりと乗りこなして来られると思いますけれど」
「まぁ、あのお二人ですしね」
スーフェの苦笑いが此方にも漏れてきますわ。
「そういう事ですわそれ……! 敵影!」
「お嬢様!」
「スーフェは下がっていて下さいまし! この機体反応は……スミエルですわ!」
私がスーフェにそう伝えた瞬間、木々の間から紫の機体が姿を現しましたわ。
「うふふ、お久しぶりねぇアメリアちゃぁん」
「えぇお久しぶりですわね、こんなにも早くに再開できるとは思っておりませんでしたわ」
「それはそうよねぇ」
「それにしてもお一人なのですわね」
此処でリリー譲、嫌な予感が致しますわね。
彼女がここに来た理由は今のところ大別して二つですわ。
私達の足止め、この場合戦端が開かれた可能性がありますから、火急的に速やかに帝都に戻らなければなりませんわね。
もう一つは、此処にS型が眠っていると分かっての行動、あちらもあの機体の鹵獲に来たと考えられないこともありませんわ。
「まぁねぇ、この間の任務で失敗しちゃったから、此処で挽回しないとちょっと危ないわーけ」
足止めを否定しないという事は、前者の方が確率が高いという事ですわね。
「今回の目的はー、その機体の破壊と今度はしっかり姫様の身柄拘束ねぇん」
「あの時逃げ帰ったリリー譲に、出来るのかしら?」
「……知ってるわよあなたの使ったアレ、今回失敗するとかなりまずいのよねぇー……だから最初から本気で行くわよぉ!」
相対する相手の機体が、まるで陽炎に飲まれたかのように揺れ動く。
……魔力の放出ですわね。
「ヴェークシステム起動ですわ、警告は不要でしてよ、今すぐ移行なさいませ」
「展開シマス」
私の機体からは赤い霞が包み込む。
そして、どちらからともなく動く。
相手もシステムを使っているという事は、どのような効果があるのかわかりませんわ。
リリー譲は双剣でこちらを切り裂こうと迫りますわ、私の最初の行動は相手との距離を取ること、っそして弾丸を放つこと。
しかしその弾丸は剣で切り捨てられてしまいましたわ。
「うふふ」
笑い声が聞こえてとっさに横にフルブーストで瞬時に避けますわ。
そして、今私がいた場所には確かに斬撃の通った跡がくっきりと地面に切りついておりましたわ。
……なるほど、機体性能の上昇と、魔力を纏わせて剣戟を飛ばせるようになったという事ですわね。
これは厄介ですわ。
それからはお互いに銃と剣戟の応酬。
そして近接を交えながら、私は相手の右腕を一点に狙いながら刺突していきますわ。
相手も勿論傷つけさせまいとしますが銃で左手を押さえながら攻撃します。
しかし相手は特化型、此方も油断をすればすぐに切られてしまいますわ。
決めきれない私と、どうやら私のスピードについてこれない様子のスミエル、場はある意味膠着状態と化したのですわ。




