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令嬢は追放されてロボに乗る  作者: 金谷 令。
第二章 学園と戦争
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 ヒロインのつき物が落ちてからさらに数日後、私たちはヒロインにお茶に誘われましたわ。

 姫様は呼ばれていないようでしたが、どこからかぎつけたのかご一緒ですわ。

 まぁそもそも私は姫様の護衛ですから、姫様と一緒にいないわけにもいきませんわよね。


 集まったのはいつものメンバーですわ。

 私とスーフェに姫様、それからシャルロ嬢にグレースさん。

 シャルロ嬢とグレースさんとは実はここ最近少し別行動をしておりましたの。

 シャルロ嬢は普通に学園に編入されましたので、グレースさんはそちらに付くことになっていたのですわ。

 ですが任務としては姫様の護衛。

 シャルロ嬢と裏で姫様の事を殺めようとしている人がいないか、貴族の子女たちのちょっとした会話から情報を収集しておりますわ。


 最初、グレースさんは無理無理と首を横に振っておりましたが、今では慣れたようでいつもの調子に戻っておりましたわ。


 まぁヒロインには姫様が打ち明けたので知られておりますが、それでよろしいのかとも思いは致しましたが、姫様の決められたことに口を挟める立場でもありません。

 それに、本当に破滅的に何か起こるまで泳がせていたほうがいいと私も学んでおりますから、姫様の好きなようになさるのが一番ですわ。


「えっと、集まって頂きありがとうございます」


 ラリーマ様が開始を告げたことにより、視線が皆ラリーマ様に集中しますわ。

 一応姫様のお部屋にテーブルをもう一台持ってきて、別れて座っておりますのでいつもよりは少し狭く感じますわ。


「ここ最近、アメリアさんや姫様に指摘されていろいろと考えていたのですが、私も少し可笑しな行動をとっていたと思います、それでご迷惑をおかけして済みませんでした」

「いや、迷惑はまだ掛かっていないから大丈夫だな」


 姫様がふふんとそう返し、少し表情を緩めるラリーマ様。


「少し冷静になって考えてみたのですが、自分でもあのような行動に出るのが少し不信に思ってしまったのです、それでいつからこのようなことになったのだろうと記憶をたどったのですが、それは前世の記憶を取り戻した時でした……ですからもしかしたら浮かれていただけなのかもしれません、ですが……」

「何かひっかかる点があるのか?」

「はい、記憶を思い出すきっかけになった飲み物です」

「飲み物?」

「はい、父に渡されたそれを飲んだ時に立ちくらみがして、部屋で休んでいた時に記憶を思い出しました、そこからこんな行動に出てしまったのです……正直身内を疑うなんてひどいとは思いますし、自分が浮かれていたせいというのが一番しっくりくるのですが、どうにもあの薬が頭から離れないんです……」

「なるほど、それでその薬とやらを調べてほしいというんだな?」

「……はい」


 少し俯いてからしっかりと姫様を見つめる目は、芯の通ったそれでしたわ。


「それに、父はたぶんですが脱税と横領をしています」

「……証拠はあるのか?」

「見たわけではありませんが、父の書斎の机、右の棚を上から順に引き出して最後に二段目だけを閉めると、細工で隠れていた一番下の引き出しが開くようになるんです」

「よく、知っているな」

「小さい頃は父の書斎も私の遊び場で、隠れているときにたまたまそれを見てしまったのです」

「……まぁいい、それならば……」

「わかりました姫様」


 そういってアルさんは部屋を出ていきましたわ。

 きっと、これから捜査を依頼しに行くのか、それともご自身で捜査なさるのかはわかりませんが、とりあえずはこれで結果待ちということですわね。


「ありがとうございます姫様」

「いやなに、もし本当に脱税をしているのであれば、帝国法に基づいてしっかりとさばいてやらねばならんからな」


 それからは和やかなお茶会になりましたわ。

 私も久しぶりにシャルロ嬢とグレースさんとゆっくりお話しできて、とても楽しかったですし。

 姫様は姫様でいつものようにラリーマ様とお話ししておりましたが、ラリーマ様の自然な顔も増えてきて、姫様も満足そうにしておられましたわ。





 それから約一週間後、また同じメンバーで集まっておりましたわ。


「結果から言おう、確かにラリーマの言った通り、クルーシュ家現当主の不正が見つかった」

「そうですか……」

「本来であれば一族投獄の後強制労働だが、今回は告発者がラリーマということで、クルーシュ家は一旦帝国預かりとし、ラリーマが当主として立てるようになった際に返還するということになった、民にも正義の少女として吹聴しておいてあるので、心配はいらない」

「……すみません、ありがとうございます」


 なるほど、温情の感じられる措置ではありますわね。

 まぁそれもこれも姫様の何かしらの目にかなったから、ということですわね。

 ですが、最近のラリーマ様はどちらかというとグレースさんに近しいものを感じますし、姫様とお話しされる以外では、このような機会にお二人でお話しされているのをよく見かけますわ。


「それで、本題に入るのだが、現当主に尋ねたところ、面白い事がわかった」

「それは」

「そうだ、例の薬についてだが、あれはなんといえばいいか、簡単に言うと少し理性のタガを外させるようなものだ」

「そんなものがあったんですか……」

「厳密にいえばその効果は高くないどころかむしろ寝不足の疲れた体に程よいと聞いたことがある……しかしその濃度が一番高いものを飲ませたせいで体が驚いて記憶がよみがえりそのまま変は方向へと突っ走ってしまったのだろう」

「……きっかけはなんにせよ、結局のところ私の自制心が弱かったのかもしれないですね……でもすっきりしました、姫様本当にありがとうございます」

「うむ、もっと我をほめてよいのだぞ」

「そういうところは、ちょっと抑えていただけるともっと素敵だと思うんですけどね」

「はっはっは、それは無理というものだ!」


 ラリーマ様はあからさまに困ったという風にため息をつきましたが、しかし奥の心情はきっと晴れやかなものでしょう。

 それにしてもあれから一週間でとはかなりの手際ですわね。

 それを考えると、もしかしたらすでに証拠が何点かあったのではと思ってしましますわ。


 まぁそれを今の私が考えても詮無き事であるのは変わりないですわね。


 それにしても、理性を飛ばすお薬というのは少し興味がありますわ。

 今度飲んでみようかしら。


 そんなことを考えていると、不意にスーフェと目線が合いますわ。


 ……そのじっとりとした目をやめてくださるスーフェ、飲みたいものは仕方ないと思いますわ。













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