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令嬢は追放されてロボに乗る  作者: 金谷 令。
第一章 魔導帝国
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「……ふぅ」


 私は紅茶を飲んで一息つきますわ。

 

 あれから二日たった今、九番隊にある私の部屋で、四人でお茶を楽しんでおりますわ。

 スーフェはメイドをしておりますので、一緒ではありませんが、一緒の空間にいる人物は五人ですわね。


 私の意識が回復した日から二日経っておりますわ。

 初日はスーフェから無理をし過ぎだと起こられてしまいましたが、言葉の端々に私を気遣う気持ちが見えましたので、なんだかとても温かな気分になりましたわ。

 

 そして今何をしているのか、と言うとあの日何があったのかをご本人の口からお話しいただこうと言う事ですわ。

 テーブルを囲んでいるのは、私とグレースさん、エミリー少尉、それとソーラ嬢ですわ。


「それでは聞かせて頂けるのですね?」

「ええ、先ず最初に言っておかないといけない事がありますね……ソーラ・トリフェとは偽名です、私の名はシャルロ・ダグマ、家は此処帝国の伯爵家ですわ、私は病弱で家に引きこもっているという設定で九番隊に所属しております、此処から外には出ませんのでばれる心配はありませんので」


 そう言って小さく笑い紅茶に口を付けるソーラ嬢、いえシャルロ嬢は今まで私が感じていたソーラ嬢の雰囲気とは変わり、とてもリラックスした様子ですわ。


「私の役目は簡単、此処に来る元貴族の付け込まれやすい者を囲う事です」

「今後強行派にそそのかれてしまいそうな人物を押しとどめ、潜在的な敵を減らす役割と言う事ですわね」

「その通りですアメリアさん、ですので、今迄騎士の本懐として此処を出て行った方々は私の範囲外と言うことです……ですが私が九番隊に来たときに既にいたリリー嬢だけは何故私のお茶会を共にしていたのか気になっておりましたが、まさか強行派だったとは……」

「調べませんでしたの? ……いえ、調べたけれど保守派だと?」

「そうですわ、我が家の諜報に調べさせましたが保守派だと、昨日遺体で見つかりましたが……なんともこちらの愚かな話ですが」


 つまり強行派のスパイを信じていたが、その人物も口封じに殺されてしまったという事ですわね。


「そもそも昔は九番隊は強行派の隠れ蓑となっておりましたの、何時の時代にもそう言った物たちはおります故、少ないまっとうな者達は直ぐに追い出し必要な物は囲う、私が送り込まれたのは、私がその楔と成るため……ですが実際は強行派にいいように使われていただけしたが」

「そもそも何故姫様が此方におられたのですの?」

「……強行派が姫様を狙っているという情報を掴み、保守派の者達が姫様を私の所に隠れさせたのです……保守派の中には姫様を担ぎ上げて実権を握ろうと考えている者もおります、愚かな事ですが」

「……貴方は何故保守派にいらっしゃいましたの?」

「端的に言えば父がそうだから、そして私自信が第二皇女殿下が上に立ちうる者であると考えているからです……本人は又くその気は無いようですが」


 成程、強行派はそれこそ国家転覆帝国滅亡を最終目標としているのだとすれば、保守派は帝国を守りながら――自らの欲しか考えていない者も多そうですが――今の皇帝のやり方だけが気にいらないという事ですのね。

 それならば保守派が強硬派に遅れを取っても正直致し方無いように感じますわ、何せ気概と準備が違いすぎますもの。


「それじゃあ私は……」


 エミリー少尉がポツリとこぼした言葉に、シャルロ嬢が困ったように首一度左右に振る。


「貴女の場合は本当に偶々だったようです」

「……そうか」


 そこで一度沈黙が流れ、皆お茶に手をつける。


「それで、シャルロ様は今後どうなさるおつもりで」

「父の意見を仰がなくてはなりませんが、もう此処にはおれません、非公式とは言え姫様の誘拐に一役買ってしまいましたので……まぁあとは上の方々次第ですが」

「それもそうですわね」


 こうして、私がやって来た九番隊内部の問題は、保守派と強行派、そして戦争の一歩手前のこの時に一瞬にして終わったのですわ。

 結局元凶だと思っていたソーラ嬢は、確かに反皇帝派でしたが、本当に目を向けるべきは虎視眈々と獲物を待っていたあのリリー嬢と言う事ですわね。


 ……余談ですが、セレス嬢は本当に何も知らされず、それに加えて未だ自らが貴族であると思っている方だそうですわ。

 正直、一番おかわいそうな方ですわね。



 

 今後一体どうなるのかは分かりませんが、私ももうこの九番隊には長くいないと感じておりますわ。

 あの日、執事姿の青年からの呼び出し、あれが引っかかりますわね……そしてそこから私の運命がまたも分岐していく様に思いますわ。


 ……まぁ何があろうと私は私として、私の思うがままやらせて頂きますが、何せ私は元悪役令嬢ですので、おーほっほっほっほ、おーっほっほっほっほっほ、おぁーーっほっほっほっほ!


「お嬢様、高笑いが漏れています」


 そこにはため息を吐くスーフェと、クスクスと笑うグレースさん、苦笑いのエミリー少尉、そして興味深くこちらを見るシャルロ嬢……皆さんの顔を見ると、今後が何となく上手くいく気がしますわ!


第一章、御付き合い頂きありがとうございました、次話から第二章が開始されます。

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