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私達三人は、騎士団の寮があるエリアから抜け、街にやって来ましたわ。
お城を通過する事は出来ませんから、お城をぐるりと半円に回りながら街へと向かったのですわ。
先ず目についたのは、貴族の方々が住む貴族区と呼ばれるところですわね。
お城の近くであればあるほど敷地や屋敷が大きく、それだけ力の持っている貴族の屋敷だと言う事が伺えますわ。
勿論そのような場所には騎士が派遣され見回りをしておりましたので、出会った際にはお疲れ様ですわと声を掛けて行きましたわ。
普通、この様な場所に不信な女性三人がいたら注意する所でしょうが、私達の服装を見て納得したように頷き去って行きますわ。
たまに、今日は休みか? と声を掛けて下さる騎士の方がいらっしゃいましたので、私はそれに頷きお疲れ様ですと返すのですわ。
何故、騎士の皆様が私達を騎士だと分かったのか。
それは今着ている服が教えているのですわ。
今私達が来ているのは、簡易なロングワンピース、所謂一般的な女の子の服ですわね。
その肩の部分にこの国の紋様である、剣が六本六角の辺の部分に書かれており、真ん中には盾の紋様が記された刺繍がなされているのですわ。
これは、騎士に最初に支給される普段着で、一人一着のみ渡され、もし紛失した場合は即座に上司に連絡する手筈になっておりますわ。
騎士は休日街に出るときは、この恰好が主ですわ。
勿論、街で買った洋服を着ている方も勿論いらっしゃいます。
私も、此処に来る途中に買った洋服を着て行こうとしましたが、グレースさんはどうやらそのようなお洋服を持ち合わせていないようで、一人騎士だと分かる格好をして、周りに私達がいるのも釈然としませんので、皆でこの支給された服を着たのですわ。
因みに、私が白色、スーフェは青色、グレースさんはオレンジの色の洋服ですわ。
そうこう歩いて行きますと、だんだんとお屋敷が小さくなり、あるお屋敷は本当にこじんまりとしたものになって行きましたわ。
その後、一本道を挟みそこからは居住区。
この帝都に住む住民の皆様の家であったり、宿であったりが置かれておりますわ。
居住区はそこまで煩い訳でも無く、たまに子供たちが走り回っており、私達はそれを微笑ましげに見る程度ですわ。
他には買い物帰りの主婦の方等、生活感あふれる方々の横を通って行くと、一つの広場に出ましたの。
そこには噴水があり、少し寛げる広場の様になっており、お城に続く一本の大きな道とは一本ずれているところですわね。
「ここはいい場所ですわね、今度ゆったりと読書などしたいですわ」
「お嬢様、その前に本を買わなくてはなりませんよ、本は中々に高価です」
「……そうでしたわね、家の書庫の物を勝手に読む事はもうできませんものね……残念ですわ」
「でも、今度此処に軽食を持ってピクニックに来たいですね!」
「それは良い案ですわグレースさん、今度お茶とサンドウィッチでも持ってピクニックですわ」
「フフ、それでは次の休日はそのように準備致しますね」
「えぇお願いスーフェ」
「因みに、此処を抜けると商業区、様々な方が様々な物を売り、そして育てている場所に出ます、お嬢様の目当てのお店もそちらなのですよね?」
「そうですわ、この広場を抜けた直ぐそことの事ですし、丁度朝の八時になりそうな時間だと思いますから、丁度いいと思いますわ」
とりあえず、お店に行ってみない事には何もわかりませんし、突撃あるのみですわ!
*****
そうして私達は歩いて二軒のお店の前におりますわ。
広場を抜けて大通りの隣の少し大きな通りを進んで行くと、二つの家がくっついているような、対称な建物を見つけましたの。
まるで真ん中で鏡に映されているような光景ですわ。
左右両端に入り口の階段があり、そこを三段上るとテーブルとイスが置かれている場所があり、そこから更に奥に進むと、お店の中へと続く扉がありますわ。
一応まだ開店前と言う事で、扉の取っ手部分に準備中と板が掛かっておりましたわ。
私は扉を少し強めにノックをすると、中から可愛らしい女性の声が聞こえましたわ。
少し扉から離れて待つと、勢いよくメイドの恰好をした茶色い髪が先っちょでクルンとカールし、少しそばかすのある子が出てきましたわ。
「はーい、まだ準備中ですけど何かごようですかー?」
「宜しければ今日一日働かせて頂きたいと思っているのですわ」
「あーバイト志望の方ですねー……それじゃあ中に入って下さい、今マスター呼びますねー……マスター! バイト希望の子達だったー! うん、三人……え? うーんとうちは一人で隣が二人ってとこかな……」
女性は何やら奥にいるマスターと話しながら、マスターの元へと向かって行っている様子ですわ。
中も外と大きくは変わらず、テーブルとイス、カフェのような雰囲気の場所ですわ。
しかし隣の建物とはつながっておらず、丁度真ん中あたりで区切られているようですわ。
私達は折角なので、出入口付近の椅子に座り待っていると、二人の女性がやって来ましたわ。
お二人ともとても似ているお顔立ちで、目じりの下がったホンワカな印象を与える顔と、金色の髪、そして赤いドレスを纏い此方へとやって来ましたわ。
近くに来ると本当に似ているのがはっきりとわかりますわね。
ただ目の下の黒子が対象ですので、覚えるのはそれを目印にした方がよさそうですわ。
「「いらっしゃぁい、カフェアパタイトへよーこそぉ、うんうん見た目もいい感じだし、合格合格」」
「此方では即日、その日のみのアルバイトが出来ると伺っているのですが、間違いありませんの?」
「「あってるよ、うちは可愛い子は歓迎も歓迎でその日だけでも大丈夫よぉ」」
「それにしても、その日のみでも可能と言うのは中々に珍しいですね」
「「うーん、そうねぇ、うちはいつも同じ店員にならなくていいようにぃ、こうやって来た子がいい感じならその日だけって言って雇うけどねぇ」」
成程、確かに固定客を店員につかせるのも大切ですけど、たまには知らない子がいた方がお店の真新しさを味わえると言う、お店の飽きさせない工夫ですわね。
此処では、貴族や平民は出来る限り関係なく接しているお店と言う事ですし、貴族の方と思しき人物が来た場合、その様に説明もすると確かゲームで言っていた記憶がありますわ。
そのためもあり、貴族のお忍びで来ているお客様もいらっしゃるようで、此処を我が物にしようとした輩や、店の中で暴れた貴族は、いつの間にか大人しくなるか力が弱ると言う恐ろしい噂も立つくらいですもの。
まぁそれに関しましては、私のゲームの記憶ですし全て同じと言う事かどうかはわかりませんが、今迄の経験で行くと、当たらずも遠からずと言った所ですわね。
「それじゃあ水色の服を着た子はアタシの方に」
「あとの二人はアタシの方に」
「「ついてきてぇ」」
私達はマスターと呼ばれた二人の女性の後について行き、厨房を横目に見ながら更に奥へと進んで行きますわ。
そして進んで行った先にあったのは、一つの部屋ですわ。
そしてその部屋は、どうやら隣のお店とも繋がっているようで、スーフェは此方に、私とグレースさんは隣のお店へと誘導されたのですわ。
活動報告にて、22話までの物凄く簡単なダイジェストのような何かを掲載させて頂きました事をご報告させて頂きます。