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……少し頭が痛いですわ。
理由は簡単、少し飲み過ぎたからですわね。
一応記憶を失う程は飲んでおりませんから、そこまで泥酔したと言う程ではありませんが、確実に飲み過ぎてしまったのでしょう。
気を付けなくてはなりませんわね。
「おはようございますお嬢様」
「アメリアさんおはようございます!」
「二人ともおはよう」
リビングに行くと、スーフェとグレースさんが朝食を取っており、私も朝食を台所から取り席に着く。
「お嬢様、大丈夫ですか? 昨日は少し飲み過ぎの様にお見受けいたしましたが」
「……頭が痛いですわ、それにしてもスーフェはあれだけ飲んで何ともないのですわね」
「私は生まれつき強いですから」
「お二人は昨日お酒を飲みに行ってたんですか?」
「そうですわ、一応配属の歓迎と言う事でしたわ」
「そうだったんですね」
その後、会話をしながら朝食を片づけ、何時もの広間に三人で降りて行く。
勿論少尉以外他の者はおらず、スーフェがさっと隣の階段を上って行く。
……そう言えば、メイドたちを迎えに行くとか言ってましたわね。
ある意味災難ですわね、彼女たちには。
「おはようアメリア伍長にグレース伍長」
「おはようございますわ少尉」
「あ、あの、おはよう、ございます」
「ハハハ、まぁグレース伍長は少し気まずいかもしれないけど、あんまり気にしないで兎も角訓練に励んでね」
「は、はい!」
そんなやり取りを少し生暖かい視線を送りつつ見ていると、階段の方が騒がしくなる。
「さぁキリキリ歩け、後一分で集会の時間だ」
「なんで私達がこんな事を……」
などと疲れた声が階段から聞こえて来ますわ。
「グレースさん、あのメイドたちはソーラ嬢とセレス嬢、それにリリー嬢のメイドで間違いないですわよね?」
「あの、アメリアさん違います、確かに私も一人に一人のメイドかた思ったんですけど、ソーラさんが二人、セレスさんが一人で合計三人なんです」
「そうなんですの? それは、少し意外ですわね」
一人に一人のメイドが付いていると思っておりましたが、ソーラ嬢が二人ですの……。
……まぁ今はいくら考えても推論にしかなりませんし、他の方も共犯の恐れもありますから、ソーラ嬢だけに注意を払う訳にも行きませんわね。
それに丁度いいことに、メイドは三人ともこちらでスーフェが訓練時間は抑えておりますから、少しは行動制限が出来ると言う物ですわ。
本日はいつもに加え、グレースさんとメイド三人と集会を行い、朝の訓練を終了させ二階へと降りる。
二階の一番手前にある部屋に入り、一番前の席に私とスーフェ、グレースさんが座り、後ろにメイドたちが座る。
「それじゃあ今日はウディアードについての座学になるよ」
最初の方は、ウディアードとはどう言った物なのか、勿論技術的にではなく、ウディアードを使える人とそうでない人など根本的な所から始まりましたわ。
「魔導帝国で一番使われている機体は、量産型MVヴァメリティね……一般的にM型やV型と言った表現で使われるかな、それじゃあアメリア伍長、このMやVと言った物、又は他の記号をどこまで知ってるかな?」
「はい、先ずはMですわね、Mは汎用を表す物で量産機などに付けられますわ、次にVですがこれは主に戦闘に置いての自らのポジションを表しますわ……Vならば前衛型、Hは中衛型、Rは後衛ですわ……そして機体にVやH、Rの単体しか表記の無い機体をV型やH型などと呼称しますわ」
「うん正解だよ……こう言った関連はアメリア伍長は強いね」
「嗜む程度ですわ」
「……お嬢様、講義中に高笑いはいけませんよ、ウズウズしてるのが分かります」
「わ、分かっておりますわ……分かって、おりますのよ」
「……それじゃあ軍曹、M型の他に機体そのものを説明づける記号があるけど、それは分かるかな?」
「ハッ、S型であります、特注や専用機等最高でも両手で数えられるほどしか生産されない特別な機体の総称です」
「正解……それじゃあグレース伍長、量産型汎用機で後衛機、専用機で中衛から後衛機、これは表してくれるかな?」
「はい、最初が量産型MR、次が専用SHRです」
「うん正解……このようにどの機体がどの戦闘位置に着くのかは明確に分かるから、しっかり覚えておくように……ただし、今の研究でV型にRの部品を付けて、油断をさせて後衛から攻撃してくるなどの戦術も考えられるので、油断をせずに対処する事が大切かな」
魔改造、と言うのでしたか?
V型にRの武器を付けるだなんて……それにしても今の人間でもそれくらいは出来る技術が身についておりますのね。
流石に古代文明とは比べ物になりませんが、いつかウディアードを一から作ることが出来る様になるのかしら。
もしそうなったとしたら、あの頃のように戦乱の世になってしまうかもわかりませんわね。
……まぁ今既に色々といざこざが絶えずあるような状況ですが。
「じゃあ実際に今日はウディアードの戦闘訓練を少しやろうか」
あら、と言う事は例の地下三階の機械を稼働させるのですわね。
私も出来ればウディアードの訓練は早いうちにやりたいと感じておりましたから、丁度いいですわ。
*****
私達は地下三階に移動し、目の前の機械を改めてみる。
これだけの機械を作れる技術力、もし技術者が一人この世界に舞い込んだだけでも各国のバランスが破壊されますわね。
「それじゃあ先ずは私とグレース伍長で実演して見せるから、モニターを見ていてね」
グレースさんは恐る恐るとカプセルの中に寝転ぶと、自動でふたが閉じる。
一方少尉は躊躇いなくその中に入る、きっとお一人でも訓練なされていたのですわね。
そして少し離れた位置に二機のウディアードがモニターに映し出された。
場所は平原、お互い向かい合うようにしている。
「それじゃあ先ず思ったように攻撃して来て」
「は、はい、行きます! やぁぁぁ」
グレースさんは可愛く叫び声をあげながら、直線的に突っ込んで行き上段に構えられた剣を振り下ろす。
それを避けることなく少尉は剣で受け止め弾く。
その弾かれた機体は少しバランスを崩すが、二歩下がって剣を構える。
「行きます!」
そうしてグレースさんは先程と全く同じように攻撃していく。
……戦闘などやった事の無い彼女の事ですから、致し方ないと言えば、致し方ないのかもしれませんわね。
まぁ経験の有無よりも、これからどうやって伸ばすかですわね、その為の訓練ですもの。
結局グレースさんは、諦めずに直線的に向かって行き上段から振り下ろすを繰り返し、少尉の合図で戦闘を終了させた。
その後、カプセルから出て来た少尉は、先程の戦闘で良かったところ、改善するべきところを上げ、今後の課題を言い渡しましたわ。
……先ずは、現実で剣を少し振り、剣の振り方を覚えると言う事になったようですわね。
次は少尉がメイドたちを一人ずつ呼びカプセルに入り戦闘し、評価と課題を渡して行くと言うのを繰り返しましたわ。
そしてメイドたちが終わった所でついに私の番が来たのですわ。




