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令嬢は追放されてロボに乗る  作者: 金谷 令。
第一章 魔導帝国
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 ダンスパーティーの夜、私は王都から脱出し、今は馬車を乗り捨てて馬に跨り街道を爆走中ですわ。

 勿論スーフェも一緒ですわ。

 途中商人の方が此方をぎょっとした目で見ておられましたが、それも無理は無いでしょう、王妃に相応しいようにと育てられた私が馬で爆走しているのですから、おーほっっほっほっほ……クッ、他の商人の方の注目を浴びるからとスーフェに高笑いを禁止されてしまったのが、この道のりで一番辛い出来事ですわ。


「お嬢様そろそろ馬を休ませましょう……って変な事考えてません?」

「分かりましたわ……変な事など考えておりませんわ、ただ高笑いがしたいだけですわ! こんなにも天気がいいのですもの!」

「お嬢様、今日は曇りです」

「だからこそ私の高笑いでこの鬱々とした雰囲気を吹き飛ばすのですわ! おーほ……」

「はい! あちらに湖がありますから、そちら行きましょうねぇ」

「……スーフェ、私に対する態度が年々御座なりになってませんこと?」

「お嬢様には感謝しております、しかしもう貴族では無いですしねお嬢様!」

「ハッ! そうですわ! ではスーフェとはここでお別れですわね」

「えっ! いきなりなんでそんな発想に!」

「だって私スーフェに御給金払えませんし、私に仕える必要も無くなってしまったでしょう」

「馬鹿ですねぇお嬢様……私は色々あってお嬢様に仕える身、御給金のあてくらいあります……と言うかこのまま縛ってでも同行します!」

「し、縛って! す、スーフェ貴方にそんな趣味があったなんて私知りませんでしたわ……そ、その私を縛って愉しむのはおやめになって、ね?」

「ね? じゃないですよ! 誰がそんなプレイするって言いましたかこのアホお嬢! はぁ……それでこれからどうなさるので?」


 私はその答えにどうしようかと考えながら、馬から降りて湖で馬の水分補給を行っている途中、馬に少し寄り掛かりながら空を見上げる。


「他国に行くと言うのは決まっているのですが」

「何処に行くか決めてないんですね……はぁ、持ってこられるだけお金を持って来て正解でしたね」

「流石スーフェーですわー」


 そもそも、この断罪イベントは知っていたのですから、もっとちゃんと後々の事をきめておけば良かったと……後悔先に立たずと言うやつでしょうか。

 王子とヒロインがイチャイチャして断罪イベントが始まる二週間前、私は高熱にうなされて、その時にこの世界が前世で言う乙女ゲームだと知りました。

 実際前世の自分の性別や家族構成などと言う物は一切思い出せず、このゲームの内容だけが私の頭に流れ込んできたので驚きましたわ。

 多分そのせいで発熱してしまったのでしょうね。

 

 そして断罪させることが分かったので、何とか第一王子とアポイントを取り、今回の計画を立てたと言う事です。

 計画と言っても、第二王子の勢力を著しく貶め、自分が王になれるようにと言う物でしたが。

 第一王子曰く『あのアホに任せたら国が死ぬ』らしいですが、まぁそれには私も大きく頷く所ですから、あの王子なら旨い事第二王子の勢力をどん底に追いやって、さっさと即位なさるでしょう。

 そうしたらまたこの国……お父様とお母様に顔を出したいものですわね。

 愚かな弟は放っておいて。


「やはりここからですと魔導帝国ブレイデンに行かれるのが宜しいかと」

「魔導帝国ですの? 確かに興味深い国ではありますわね、なんでもウディアードに最も力を入れている国とか」


 ウディアード、人の何倍もの大きさで、お城より小さい程度の巨体を誇る超古代兵器。

 今の世界になる前に一度滅びた世界とも、その技術が他の世界から転移されて来たとも言われ、諸説あると言う程度しか解き明かせず、しかしその遺物の力は計り知れない。

 その一つがウディアード。人のような形をした人形のような兵器。

 

「確か、それを動かすには多量な魔力と回路と呼ばれた特殊な才能を持った者のみが動かせるのでしたわよね?」

「はい、回路については、機体と搭乗者を繋ぐことのできる物で、この回路の数でどれだけ鮮やかに機体を動かすことが出来るかが決まります」

「回路をつなげて魔力を送り、そして動かすなんて……面白そうですわね、私にもその回路とやらがあればよかったのですが……生憎お父様にお前は才能が無かったと言われてしまいましたから」


 本当に残念でなりませんわ、その様な面白い物、私も動かしてみたかったですの。


 私も少し喉が渇いたので、湖の近くに屈み少し手を入れてそれを口元に持って行く。

 冷たくて気持ちがいい水が喉を潤し、生き返った気分ですわね。

 湖には、金色の髪をギュルンと縦にロールしてある髪型に、未だ昨日のダンスパーティーで着た赤いドレスを纏った私の青い目とぶつかる。

 うーん、このロール解いちゃいましょうか、私はもう悪役令嬢ではありませんし。

 私はロールを梳かす様にゆっくりゆっくり伸ばして行き、少し時間が掛かってしまったが緩くウェーブしている程度の髪型にする。

 それを耳先から髪を手繰り後ろへと払う。


「お嬢様……」

「何かしらスーフェ」

「その御姿は……」

「心境の変化ですわね……私はもう公爵令嬢ではありませんから、ロールを止めてゆるふわウェーブでしてよ、似合うかしら」

「お嬢様はお綺麗で少しつり目ですがそれがまた凛々しく見え、ものすごく可愛い服でなければお嬢様に着こなせない服は無いでしょう、スタイルも抜群ですし」

「ありがとうスーフェ……ですが目立つこの恰好で街に入るのは躊躇われますわ」

「その事でしたら、私が調達してまいりますよ」

「その間、私は一人になってしまいますし……どうしようかしら」

「そうですね……ここから魔導帝国へ行くなら二つ街を超えて行く必要がありますし……宿屋で待っていてもらえれば」

「えぇそうですわねそうしましょう……ではそろそろ出発していいかしら?」

「はいお嬢様」


 私は馬を撫でてからその背に跨る。

 それじゃあ先ずは此処から北ですわね。


「あ、そうですお嬢様」


 私が出発しようとした瞬間、スーフェは馬に乗りながら私に話しかける。


「お嬢様は魔力も回路もかなり良い物を持っておられますよ」

「……今なんと?」

「ですから、公爵様はお隠しになさっておりましたが、お嬢様は魔力も回路も良質な物を持っておられますよ」

「ちょ、一寸待ちなさいよスーフェ、お父様がお隠しになっていた? それをどうしてあなたが?」

「この国では、回路を持つ者は必ず騎士とならなくてはなりませんが……公爵様としては、お嬢様を王妃としたかったのでしょうね、その為お隠しになられていたのだと思いますよ」

「成程……動揺してしまいましたが少し考えれば分かる事でしたわね、しかしもう一方は?」

「極秘裏に手に入れた魔力と回路の質を測る機器をお嬢様の寝ている間に使用させて頂きましたから」

「ちょ! 何勝手にやってんですの! それにそんなもんどっから手に入れたのです!」

「アハハ、だって私魔導帝国のスパイですし、そっからです」

「……へ?」


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