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令嬢は追放されてロボに乗る  作者: 金谷 令。
第一章 魔導帝国
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 「私の家の領は何処にでもある普通の田舎貴族でした、小さな街が一つと村が数個あるだけの、特に何が取り柄とは言えないけど……今思えば皆と穏やかに過ごせてたのが一番私にあってた日々だったと思うんです」


 確かに、田舎の方に行くと王都や貴族の争いが多い所よりも、人間的に平和な所が多いですわね。

 村は村として助け合って生きて行かないといけないですから、隣人の事を気にかけて生活しておりますし。


「ある日、隣国からの使者様達が街を通られると言う事で、私の家でもお出迎えの準備をしておりました……そろそろ街に到着すると言う時分一頭の馬が私の家に駆けて来ました……聞けば盗賊らしき者達に襲われていると言うのです……隣国も一機ウディアードを連れていましたけど、盗賊にもどのようにしてか手に入れた機体があり、両者相撃ちになったと言うことでした」


 ……隣国の使者が自国で盗賊に襲われて亡くなった……なんて最悪望めば戦争になりかねない状況ですわね。


「……結局駆けつけて見たら、盗賊と思しき何人かの亡骸と、使者様を含めた他国の方々の御遺体が地面に転がっていたと報告に上がりました……それを知った国は私達一家を拘束し王都へ搬送、牢に入れられることになりました」


 まぁ、こう言っては何ですが、何処かに責任を押し付けなければならなくなったのですわね。

 それにしても使者を屠れるほどの盗賊と言うのも、きな臭いですわね。


「後に聞いた話では、使者を送った国は幾つか反乱があり、その後内乱となったようです、使者様達を襲ったのも反乱を起こしている奴らではないかと言うことでした」

「成程、それならば……納得ですわね……その国の中枢近くにも反乱の息のかかった人たちがいたのね」

「そうだと思います……牢に入れられて何日か経った後に、家族は国によってウディアードに乗れる才能の有無を調べられ、家族は無し私には有りでした……家族は牢屋に戻らされて、私は監視付きでウディアードの作業を強いられました……国にすれば貴重なウディアードに乗れる奴隷と言ったところですね」


 そうですわね、本当の犯罪者であれば、ウディアードに乗った時に反抗されてしまいますから、従順かつウディアードに乗れる存在など、その国からしてみれば本当に貴重と言えますわね。


「その夜は少し冷え込みました、与えられた部屋に帰り薄い毛布に包まって寝ようとしたとき、不意に窓が開く音がしたのです、そして入って来た侵入者は全身黒ずくめで顔も見れませんでした」


 それは話の流れから魔導帝国の人間でしょうけど、怪しさしかありませんわね……。


「その方は、私に逃亡の道を示して下さいました、三日後に是非を聞きに来ると、私は両親も連れて行けないかと言いましたが、首を横に振られてしまいました」


 ……一応彼女も罪人扱いでしょうから、一人消えただけでも騒ぎなのに、一家が消えたとなれば大問題となり、国内にしかも罪人に通じているに間者がいると言っているような物ですものね。


「でもその方は言いました、自らの力を付けて自らで救いだしてみせろ、と」


 それで彼女は騎士団に入ろうと思ったのですわね。


「結局私は逃亡しました、そして無事に魔導帝国に着いて二つの選択肢を与えられました、平民として普通に暮らすか騎士になるか……その時自らの力で救いだして見せろと言う言葉が脳裏を過り、騎士になったんです……ですけど入って数日で気が付いてしまったのです、その道があまり遠い事を、少し考えれば分かる事だと笑いました、あの時の自分は逃亡が成功して気分が高揚していただけなのんだって」


 国から逃げのびる事が出来たと言うその事象が、彼女に出来ると言う希望を与えた結果と言う事ですわね。


「そして私もあの一員になりました、何もできない私は只々お茶を飲んでいたんです」

「……ありがとうグレースさん、聞かせてくれて嬉しいですわ」

「アメリアさん、お父さんとお母さんは今頃どうなっていると思いますか……夢にでるんです、私が逃げたせいでお父さんもお母さんも殺される夢」

「そうですわね、確かにその可能性は捨てきれませんわ……でも先ずは知る事ですわね、貴女がもっと階級を上げて、貴女を逃がした人たちに話を付けられるようになって、探って来いと命令できるようになることが先決ではなくって? 誰もかれも自らが求めれば応えると思っていてはダメよ、そう言う本当に知りたい事は自分で出来るようにならなくては、いつか足元を掬われますわよ」


 ですが、そうは言っても自らの親の安否は今すぐにでも知りたいでしょう、しかしその為に動こうとしない彼女はそれだけの間の時間を無駄にしてしまった。


「で、でももしその間に二人とも死んでしまったら……わ、私は……」

「そうですわね……でも考えてごらんなさい、貴方に取れる道を……今すぐに助けられるならそうすればいいと思いますわ……グレースさん、貴女にそれだけの力があって? 貴女に出来るのは先ずは偉くなり人を動かせるようになることだと私は思いますわ」

「そ、それでも、頑張っても、間に合わなかったら……」


 当たり前ですが、グレースさんが偉くなるまでに間に合わない可能性も大いにあり得る。

 そして間に合わなかった後の方が大変ですわ。

 目標としてご両親の奪還を掲げたとしても、その目標は既にかなう事が無く、そして自分がやって来た事が無意味だったとなれば、そのまま死んでしまうかもしれませんわね。

 そうでなくても、引きこもるか……もしかしたら、内乱を企てるような人物になってしまうかもしれませんわ。


「なら、他の貴女のように理不尽に囚われた人々を救いだせばいいのですわ、貴女だってその全身黒服に救われたでしょう」

「そ、そんな事私には……」

「今のままでは無理ですわ、ですがグレースさんが直々に動かなくても、先ほども言った通り偉くなり人を動かせるようになれば、そう言った活動に特化した方を動かせるのですわ、後は報告を待つだけのお仕事でしてよ」

「……む、むりです、やっぱり私にはそんな」

「今の貴女では無理よ、でもしっかりと騎士団として学び力を付けなさい、それでどうしても無理だと感じて漸く諦めると言う選択肢が与えられるのですわ」

「アメリアさん……」


 私が席を立ち、グレースさんを見下げるようにし、そして手を伸ばす。


「私は折角騎士になったのです、この様な伍長で終わるつもりは有りませんわ、私のいた国に、私の空いた穴がどれほどの物か知らしめることも出来ますわ……偉くなり有名になれば……結局のところ私達が目指すのは偉くなる事、折角一緒の目標なのですわ、やはり隣にそう言った方が欲しいではありませんの……この手を取れば貴女は今までの生活を一変させ、目標に向かう事に成りますわ……どうしますの?」

「わ、私は、私も……私も頑張りたいです! お父さんとお母さんと会いたい」


 そして掴まれた私の手。

 その力は、握られた力よりもとても強い様な気がした。


 ……何はともあれ、グレースさんはあの愚者のお茶会からは抜け出せましたわね。

 こうも早く彼女を決起させることが出来て良かったですわ。


「それじゃあグレースさん、お引越しですわ! 」

「へ?」


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