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令嬢は追放されてロボに乗る  作者: 金谷 令。
第一章 魔導帝国
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 それからは朝の集会に始まり、午前の講義午後の訓練をこなす日々。

 午後の訓練は、体力を作ったり剣術を少し習ったりですわね。

 ウディアード乗りだとしても、一応は剣術を習わなくてはいけないそうですわ。

 騎士団にいる以上致し方ありませんわね。




「それでは集会は此処まで、二階に行こうか」

「分かりましたわ」

「失礼します」


 その時、可愛らしくも凛とした声が部屋を包む。

 その方向を見ると、階段から降りて来たであろうメイド服に身を包んだ茶色い髪の女性がピシリと背を伸ばし此方を睨んでいた。


「此処のところ集会にも来なかったなケイティ伍長、どういう事かな?」

「集会? そのような物一体何故でなくてはいけないのですか? そもそも貴族としてそのような場に主をお連れする従者が何処にいると言うのです」

「はぁ」

「それでそこの新しく入った方、何故挨拶に来ないのでしょうか?」


 いきなり現れて何を言っているのでしょうかしらこのメイド。

 まぁそろそろ何かしらのアクションがある物だとは思いましたが、まさかこれ程腑抜けている連中とは思いませんでしたわ。


「それこそあなた方の主に挨拶に行く必要が無くってよ」

「なんですって?」

「待て! 貴様名前は?」


 あら、いきなり攻勢で行くのねスーフェ。

 実際このような方たちに下手に出ていては埒があきませんし、私も責めの姿勢で行かせて頂きますわ! その方が面白そうですもの!


「なんと言う口の……」

「黙れ! 質問に答えろ、私は九番隊スーフェ軍曹だ、聞けば貴様らは伍長と言うではないか、挨拶をと言うのならばまず私に挨拶をしろ」

「……この事は主にご報告させて頂きます」

「はぁ……軍曹」

「なんです……なんだ伍長」

「突撃しますわよ」


 そう、こんな所でメイドと話していてもイライラするだけですわ。

 だったら直接その主とやらの所に行けばいいだけ。


 スーフェは私の意図に気が付いた様で、一つ肯定に首と縦に振る。


「はぁ」


 少尉の深いため息が聞こえますが、貴方にも責任があるのですわ少尉。

 本当はもっと騎士団と自分の立ち位置をこれでもかと教え込まなければなりませんでしたのに、それを怠ったのですわ。

 いくら聞き分けのない令嬢だからと言っても、いくら貴族の息が掛かっていたとしても、上に掛け合い根回しをすれば、皇帝陛下側の人間がいかようにも処分する事が出来たのですし。


 まぁいいですわ、過去を振り返っても致し方ありませんし、此処は一つ私が私の為にその方たちと楽むと致しましょう、フフ。


「メイド、その主と言う人の所に案内しなさい」

「ですから口の……」

「黙りなさい! メイド風情が口答え等、それこそ貴女の主はそのように品の無いふるまいをなさると言っているのと変わりありませんわ」


 そちらが過去の権威を持ち出すと言うのなら、私もまた過去の権威と、そして培った御令嬢を楽しませて頂こうではありませんの。


「……こちらです」


 そう言ってメイドは今来た階段を上って行く。

 私とスーフェそれに少尉もその後に続き寮へと出る。

 寮では、如何にもと言った様子で、ドレスを纏った平民がオホホホウフフフとお茶を飲んでいた。

 だが造りは私が泊まっている寮と同じなので、いっそう滑稽に見える。


「あら、その方たちが例の新しく入った方かしら……私はソーラ・トリフェ伯爵令嬢ですわ」


 そう言ってこの中の中心人物だろうと言う金髪少女が挨拶をする。

 少女と言っても、私よりも年上のようですわね、十八、九と言った所でしょうか。


「御機嫌よう、私はアメリア・アゲット元公爵令嬢でしてよ」

「まぁ、公爵様の、それは失礼いたしましたわ」


 どうやらこの令嬢は元、と言ったのは聞こえていないのかあえて無視しているのか、どうやら後者のようですわね。

 成程、自分が貴族では無いと分かりながらもそれを認められない口ですのねこの方。


「私の右隣の方がセレス・カルサ子爵令嬢、左隣がリリー・マティン子爵令嬢、対面にいらっしゃるのが、ハンナ・ヘーレ男爵令嬢とグレース・レイス男爵令嬢ですわ」

「少尉、この中で魔導帝国の貴族はどなたですの?」


 あら、私の質問に少尉の眉が寄ってしまいましたわ。

 ですがこれから茶番を始めますと言うのが分かったのでしょうし、仕方ありませんわね。


「この中に魔導帝国の貴族はいないよ伍長」

「ではこの中で貴族の方は?」

「……それも同じだよ伍長」

「はぁ、なら此処にいる少尉以外の方は皆さん平民ですわね!」


 私が声を大きくして平民の部分を強調すると、ソーラ嬢含め元男爵令嬢を抜いた三人がとても険しい顔をなさりましたわ。


「アメリア様……一体何を」

「少尉の御言葉聞いておりまして? 貴女方は魔導帝国の貴族でも無ければ賓客でも無い、ただの平民騎士ですわ」

「無礼な!」


 ガシャンとカップの音と共に席を立ったのはセレス嬢、短めの赤い髪を揺らしながら此方を睨む。


「その無礼、一体何方が裁いてくれますの?」

「なんですって?」

「貴方は確か子爵家でしたわね、では今すぐその子爵様とそれ以上の権威ある方の証明を頂けますでしょうか? 貴方が本当に子爵令嬢だと言うのならばですけれど」

「父上に手紙を出させて頂く」

「フフ、亡命した令嬢が、他国の貴族に、侮辱されたと? 何を言っているのかしら? そもそも国を裏切った貴女方にその国が援助すると思っているのかしら?」


 私は腰に挟んでおいた扇子を取り出し、口元でバッと広げ令嬢一人一人の顔を睨んで行く。

 そう、例えどのような理由があろうと、国を抜けた貴族など、裏切り者以外の何物でもありませんわ。

 ま、私もそうなのですけれど、フフフ。


「それに、貴女方は此処に入るときに騎士に成るための書類にサインをなさりましたわね? 貴族ならば自らがサインをしたのですから、その責務をこなさなくてはいけないのは当然ですわよね? それともあなた方は貴族ごっこに忙しくてそのような貴族の本質まで失ってしまったのでしょうか?」

「……アメリア・アゲット、その口を閉じなさい」


 ゆるりと言葉を発したのはリリー嬢、フフ、今にも怒りでその緑の髪が逆立ってしまいそうですわよ。


「同じ平民、同じ伍長の指図など受けませんわ……それにしっかりと職務に励む先輩伍長なら兎も角、この様な自堕落な平民伍長の言う事等聞く訳がありませわ」

「アメリア様、いくらなんでも口がすぎますわ」

「あらソーラ嬢、私は貴方が一番愚かに見えますわ、知りながら目を背け続けている……愚か者」


 その時、三人の後ろに控えていたメイドたちが此方に躍りかかる。

 ……ですが結局は訓練も何もしていないメイド、スーフェが一撃一撃を見舞うごとに一人一人倒れて行き、三人の気絶体が完成する。


「少尉、懲罰房はどちらに?」

「九番隊に懲罰房は無いんだよ……」

「でしたら私の寮で教育したいのですが?」

「分かったよ」


 スーフェは一人一人先ずは階段の前に運び、水を頭からかけてメイドたちを起こし、メイドはその眼に恐怖の色を写す。

 恐怖を写してしまえば、後はオドオドとしながらスーフェの命に従うだけ。


 それにしてもスーフェ、貴女軍人の時とメイドの時の差が少し激しくなくって?


「本日は挨拶に参りましたので私も帰らせて頂きますわ」


 私がそう言うと、少尉以外の全員……いえ、元男爵令嬢のお二人は此方を恐ろしそうに見ておいでですわね、お二人を除いたお三方が私を此方を睨む。

 とりあえずこの男爵令嬢二人から攻略していくのがいいでしょうか?


「アメリア様……本日の事はしかるべき所にご報告いたします」

「えぇ構いませんわ、ですが私が行ったのは同僚の注意として特に問題になる所ではありませんし、もし何かしらの罰が不当に下るならば、私もしかるべきところに貴女方の事を報告致しますわ……それに私は先程皇帝陛下にもお会いしてまいりました、ですので皆様も自らのお立場を考えるのですわね、おーっほっほっほっほ、おーーっほっほっほっほっほ」


 きまりましたわ! これぞ悪役、と言った捨て台詞でしてよ!

 私はソーラ嬢にそう言い残し、高笑いと共に地下へと入って行く。

 

 余談ですが、この階段部分私の高笑いが響いて中々良いですわね。


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