始まりの物語
ラミとクルクルの出会いと、優しくホッコリ出来る。そんな 物語です。
プロローグ
それは、それは、
とても深い森がありました。
深い森では、不思議な力を持った動物達と、精霊や人間、ドワーフ、モンスターが住む小さな村がありました。
その村では、みんなが、力を合わせ、幸せに暮らしてました。
昔は、みんな仲良くなく。それはそれは、争いが絶えない森でした……、
悲しみと怒り、恨みの声が、森中に響き渡る。そんな悲しみに溢れた森でした……、
それが今のように、誰もがみんなを思いやり、仲良く暮らすようになったのは、1人の女の子と……、神獣と呼ばれた。森の守り神と、守り神に。拾われた一匹の魔獣との出逢から、変わりました。少女 の名をラミ、そして……、魔獣の名をクルクルと言いました。
「ウニャウニャウニャウニャウニャウニャ♪」
楽しげに。その様子からまるで、歌うように声をあげつつ。機嫌良く尻尾を立てて、左右にユ~ラユラ、
おっきな目を細め。見た目は猫。されどその大きさは、牛くらい大きいのである。
「や~クルクル。朝の散歩かい?」
牛飼いのピーノに声を掛けられ。ウニャ~ン♪機嫌良く返事を返した、
「そうか、後でラミと牧草地においで、新鮮なミルクを飲ませてあげるから」
ミルクと聞いて、
「ウニャウニャ~ン♪」
とても嬉しそうに。クルクルは返事を返した、
クルクルが村に住みだして、ラミに飼われたのが、今から一年前である。ラミは村に住む。ただ二人の人間の親子の子供で、可愛らしく優しい性格から、誰からも好かれる。そんな女の子である。森の妖精と知られてる。ホビット族の村に何故人間が住み出したのか……、ラミの両親の国は、戦乱に巻き込まれ。二人は命からがら、逃げてきた、それを救ったのが、ホビット族の長老と村の人々である。やがて二人の人間は結ばれ。生まれたのがラミだ。
ラミがホビット村の一員となり。村人全員の妹、娘のように可愛がり。やがて物心が付いた時。事件が起きました、エルフとリザードマンの戦争である。
湿地に住むリザードマンと森に住むエルフ。本来は生息圏が違う種族であり、争い等起こる筈がないのですが……、リザードマンの王が、エルフの姫に一目惚れして、拐ったことによる戦争となりました。ホビット族にとっても他人事ではありません。エルフの住まう深森と、リザードマンの住まう湿地の中間にある村です。当時エルフの王とリザードマンの王の板挟みにされていた、ホビット族を救ったのが、ラミの父と母でした、父リード・ニールは、人間の国で、聖騎士を拝命したほどの剣の使い手で、母エルダ・ニールは、その国で宮廷魔導師に任じられていた、召喚術師であった、二人の機転により。戦争は回避され。エルフとリザードマンの王から、一目置かれた存在となり。軽んじられていた、ホビット族まで恩恵が与えられるようになる。
しかし……、森に住まう沢山の種族から、争いは無くならなかった……、沢山の死が振り撒かれ。悲しみの鳴き声が響いていた……、
森の神である。聖獣テ・ミリオンは悲しんだ……、多くの命が失われたからだ。 ……ニィニィ……、弱々しく鳴く。今にも生命の火が消えかけた、小さき命、そっと慈愛の祝福を与え。全ての運命を……、この命に委ねることに決めた。
鳥の囀ずりに、つられたように。鶏が朝を告げ。寝ていた、村の動物達が目を冷ました。やがて日が顔をだして、朝の早い。牛飼いのピーノ。鍛冶職人の親方、ドワーフ族のランドルフが、朝早くから仕事の準備を始めていた、日が登りだした頃には、村に1つだけある。雑貨屋コボルトの店主ガブガブが、コボルト特有の特徴である。犬に似た風貌に、寝癖の付いた頭を気にしながら、帽子を手に。外に出た。
「ガブガブさんおはよう~」
急に声を掛けられ驚いたが、小柄なガブガブより小さな位置にある。ブルーの髪が跳ねた。思わず円らな目を和ませ。
「ラミおはようなんだな」
小さな牙をキメラかせガブガブが、微笑んだ、笑顔はちょっと怖い、
「ラミは朝の散歩なんだな?」
「うん!、神獣様の祠におはよう言ってくるの」なるほど何度も頷き、ガブガブははたと思いだし。ポケットにあったビスケットの包み紙を出して、
「僕の分もおはよう言ってくれるかな?」
「うん!いいよ」
元気一杯。輝く笑みのラミに。ガブガブまで嬉しくなって、
「ラミは優しい子供なんだな~、ガブガブ感激したんだな~」
ズボンのお尻部分から出てる尻尾が、左右に動かした。
「ラミが優しい女の子だから、これはガブガブからのプレゼントなんだな」
小さな手を、優しく上げさせ。ミルクたっぷりのみんなが大好き、ビスケットを沢山乗せる。
「うわあ~。ありがとうガブガブさん」
「うんうん、気を付けて行てくるんだな」ガブガブさんに見送られ。ラミは意気揚々祠に向かう。
聖獣テ・ミリオンの祠があるのは、村の外れ。牧場を通った先にあり。途中鍛冶場の前を通る。
「おうおうラミではないか、散歩かな?」
「あっ、ランドルフさんおはよう~」
満面の笑顔に対して、滅多な事では、厳めしい顔を崩さないで、有名なドワーフであるが、ラミのキラキラした眼差しに。目尻も下がる。
「うん!、神獣様に朝の挨拶しに。行くんだよ」
何のてらいもなく。にっこり楽しげに笑う。そんなラミに癒され。相好も笑みに変わる。
「そうかそうか、ラミは優しい子じゃな~、よしよし」昨夜ようやく。試作品に作ったプレス機。それで銀食器の小皿を作ったのがある。両手に抱えたビスケットに目をやり。髭をしごいて。優しく微笑みを浮かべて、
「うむ、ラミがいい子だから、1つプレゼントをあげよう、ちょっと待ってなさい」
鉄の塊。武骨な印象を与えるプレス機は、炉の火のエレメンタルの力を借りて、火炎石で金型を造り、溶かした鉄を流し込み。プレスで圧力を掛け、素早く金型に合わせた品が造れる。村に人は少ないが、近隣のリザードマン、エルフどちらも火を使うを苦手としていて、鍛冶職人がいない、大量に発注があると。ランドルフの所に持ち込まれる。その為の時間を考えると。大量生産も仕方なく。苦心して造り出したのが2日前。試作品は昨夜。奉じるつもりで、作ったのだが……、
「神獣様も。許して下さるだろう」
精緻な銀細工がなされた小皿を手に。外に出た。
ラミの手には小皿があって。中にビスケットが入っていて、とても持ちやすい。
「綺麗な模様だな~」
キラキラ輝く銀の皿に。満面の笑顔のラミが楕円形に写り込み。
「変な顔」
思わず吹き出していた。
ラミはランドルフさんの作った小皿を、一目で気に入った。
「ラミの宝物だね~♪」
楽しげに笑いながら、牧場まで来たラミを、ホビット族で牛飼いのピーノが、見つけ。牛に牧草を与える手を止めた。も~も~抗議ともっと寄越せの訴えに、苦笑しながら、
「ラミ!、おはよう~、神獣様の祠に行くんなら、帰りに寄りな。ホットミルク飲ませるから~」
「おはよう~ピーノさん!、後で寄るね」
元気一杯に答えるラミ。ピーノはラミが戻る前に。朝の仕事を終わらせて、ゆっくり本でも読んで聞かせようかと、考え小さく笑みを浮かべていた、
「よし!」
シャツの腕を捲る。
ラミもピーノが、沢山の本を蔵書してることを。知ってるから、
「また新しいお話。聞かせてくれるかな?」
足取りも軽くなる。ホビット族は、歌と踊り、冒険をこよなく愛する。種族として知られている。エルフの次に長命な種族であり。好奇心旺盛で、だけど臆病。知識を得る喜びを知る種族である。ピーノも見た目とても若いが、100年もの長き時を、冒険をして過ごした。人間の友や旅の途中手に入った本を、コレクションして。牧場をやる傍ら、村にある図書館を経営していて、妻と娘に管理してもらっていた。ラミや母はほぼ毎日図書館に通うから、妻のリズ、娘のアシリーと茶飲み友達である。ピーノは図書館に置かない、世界中の種族が書いてる。物語を蔵書していて、時折ラミに話してくれるのだ、
牧草地から、畦道を緩やかな坂になっていて、うんしょ、うんしょ息を上げながら、登りきり。森と村を分けるような、ぽっかりした場所がある。
何故か祠の周りだけは、不思議と木々が生えない。一面美しい草花の縦断になっていて、年季の入ったこじんまりした祠が、ぽつんとある。
にぃ……、にぃ……、
「えっ?……」
微かな鳴き声……、幼く。か弱い。助けを求めて鳴く声が聞こえる。
エピローグ
ラミは探した。あまりに弱った声だから、何故か分からないが、その時……、
「待ってて!、ラミが助けるから」
毅然と口にしていた。耳を澄ませ。微かな鳴き声を探した、ここでもない、こっちでもない、右往左往。
そして……、
祠の裏に、一房の白い毛の上に寝かされてた、魔獣の子が、鳴いていた、
「可愛い……、ラミが助けるからね」白い毛に黒の流星が額にあり。斑がテンテンお腹に2つある。魔獣はラミに抱かれるや、鳴き止み。甘えたようにしがみついた。この子は私が守らなきゃと決意した。
それから魔獣の子を、温めてた一房の白い毛を掴み。ラミは急いで、ピーノが営む牧場に向かった……、
驚いたピーノだが、ラミの持ってた一房の白い毛を見て、成る程と頷き。温め殺菌したミルクを、注射器に入れて、慣れた手つきで、ゆっくりミルクを飲ませながら、
「エルダとリズ、それから長老を急いで、呼んで来てくれるかいラミ?」
「うん!わかった」 駆け出した、ラミを好ましく見送りながら、難しい顔をしていた、
「神獣様は、お怒りか……」それから沢山の大人が、難しい顔をするなか、ラミはアシリーに手伝ってもらい、魔獣の子を、一生懸命世話をした。
「ラミ可愛いね」
「うん!、クルクルは私が守るの」
アシリーは長い睫毛を揺らし。桜色の頬を緩め。
「クルクルって、名前にしたのねラミ?」
「うん、クルクルが一杯あるし。きっとこの子は、みんなを繋げてくれるから。クルクルって名前にしたの♪」
ハッとお茶を入れる手を止めて、リズは柔らかに微笑を浮かべ、娘のアシリーは感激したように。妹のようなラミの青い髪を、なでなでする姿に。優しい気持ちが溢れ。唇を綻ばせていた。クルクルと名付けられた魔獣は、ラクシャと呼ばれる。肉食獣だが、温厚な性格であり。人に友好的だと知られている魔獣である。時にペットや家族として、希に人間の家に飼われている。そうと分かっても村を預かる長老は、気難しい顔を崩さず。村人全員にクルクルの事が知らされた、当初魔獣であるラクシャの子供を、助けるべきか話し合いがあると言われて、驚き、戸惑うが、ラミに抱かれたラクシャの子のあまりに。愛らしい姿を目にしたら、誰もが助けるべきだと説得され。
「長老様。ラミが頑張って育てるから、お願いします」
幼い頭を下げられ。渋々了承した、それが今から一年前の話である。
「うにゃにゃにゃ~」
大好きな家族に。挨拶の声をあげる。すぐさま扉が開いて、優しい顔立ちの女性が顔を出した、「クルクルお帰りなさい、足ふきしたら、ラミを起こしてくれる?」
「うにゃにゃ~い♪」
返事をして、玄関に置かれた、クルクル用の足ふきタオルで、丹念に汚れをとり。それから開いた扉から、家に入る。尻尾を器用に使い、ドアノブに巻き付け。閉めて、中に入る。
「クルクルお帰り、今日は良い天気かい?」
「うにゃにゃん」
「そうか、それならリズに頼まれてた、小屋の修理も出来るな」
「うにゃにゃ~い」 まるで頑張ってね~とか言われてるようで、リードとエルダだは顔を見合せ。笑みを浮かべた。この一年の間。クルクルは家族になった、それはニール家だけでなく。村人全員に愛されるクルクルは、みんなの家族でもある。クルクルは、家の奥にあるラミの部屋に入り。喉を鳴らしながら、ラミの頬に鼻をツンツン。
「ん~ん~」
寝言が聞こえた。耳をピコピコしたが、起きる様子はない。仕方ないなと、ラミから布団を器用に剥ぎ取り、シーツの端をクワエ、ゆっくり引っ張り、ラミがベッドから落ちる寸前。背中で受け止め。クルクルの背に、抱き着くような格好になった。そのままラミを背に、クルクルは食堂に戻る。
「クルクル……、おはよう~」
半分夢心地だが、大好きなラミの声に。喉を鳴らしながら。機嫌よく喉を鳴らして、
「うにゃお~」
と、返事を返していた。
魔王らしくない作品ですが、わりと楽しんで書いてる物語です。魔王が贈る。優しくなれる物語の始まりです。