書き留めることばはいつも同じ
たまたま開いた昔の手帳に
詩が一つ
書いてあった
それは
七日に一つ、と
今でも続く
ことば探しを
始めた頃の
ことば
その時だって
今だって
誰にも話していないことなのに
君が
よりによって君が
教えてくれた
一つの詩
それは教科書に載るような
特別な詩人が書いた詩で
多分有名で
多くの人が知っていて
きっと深い意味はなくて
別に意味はないはずなんだけど
えらく感動したらしい君は
自分の手帳に
自分のペンで
書き留めた
愛し合う二人へあてたことばを
僕に読ませてくれたんだ
君の心が分かったことなんて
ただの一度もないけれど
あの日ほど
心が疼いた瞬間は
多分ない
君に教わった
ということはともかく
僕もいたく感動させられて
家に帰ったあとで
この手帳に
その詩を書き留めたんだけど
君に言うべきで言わなかったこと
それだけで
僕は
本が書けるかもしれない
それも
何冊も
何冊も
そういえば
手にしたら多分
君に話さずにはいられない
そんな理由で避けてきた
その人の詩集を
僕は今
手にしている
君に話せても
話せなくても
今の僕の
今の手帳に
彼の詩が
また増えて
君を思い出す
きらめくような
つらぬくような
ことばが
また
増えた
―
タイトルを考えるのは苦手なんですが、なんだか最近それを楽しめるようになってきています。
楽しむこと。
物語を書くにしても、そのことを大事にしていきたいな、とも思っています。