「シンデレラ」
「時間だ」なんて
立ち上がる前から
分かってた
君はいつも同じ
この時に
そうやって
この場所を
後にするんだ
ここは舞踏会ではなくて
ここに王子様がいるはずもなくて
それでも
君はシンデレラなんだろ
時計の針が重なる前に
魔法が解けてしまわぬように
かつてシンデレラは呟いた
「これこそ魔法」
「熱くもなく冷たくもなく」
「これこそベストポジション」
シンデレラは信じてる
「二つのピースはもう」
「ぴったりはまっているから」
「違うよ」
「それは魔法じゃない」
僕は認めない
「それは呪いなんだ、「シンデレラ」」
シンデレラ
君の帰り道はまだあるだろうけど
君がそこを走り抜けても
僕達が戻れるわけじゃないんだよ
本当は
気付いているんだろ
シンデレラ
「じゃあね」
「うん」
「おやすみ」
「うん」
「またね」
「うん」
同じ場面を
繰り返すように
シンデレラは夜道を歩き出す
また今日も
君の心が分からない
シンデレラ
君はどうしてここにいるんだい?
僕は君といたいけど
その声を
言葉にしたら
形にしたら
どうしても
今みたいには
いられないから
今日もまた
躊躇っているんだよ
シンデレラ
ガラスの靴はどうしたの?
僕のとこには落としてはいかないんだね
シンデレラ
本当は君の王子様が
とっくにその靴を
拾っているんじゃないのか?
「シンデレラは楽しくて」
「時を忘れて」
「王子様と過ごしていました」
シンデレラ
僕が少しだけ
期待していることがあるんだ
君が出て行くその時は
本当のギリギリの
ギリギリなんじゃないかってこと
魔法が終わる直前に
かぼちゃの馬車が行ってしまう寸前に
シンデレラがそこに飛び込む
そんな場面を想像してみるんだ
もしそれが本当なら
僕は
ほんの一瞬
たった一瞬
君の手を
つかめればいいだけで
堂々巡りの
このお話も
違う展開を見せるかな
それでも
臆病な僕は
頑なに君は
運命の歯車が
動き出す一瞬を
じっと待ってる
「乗れた?」
期待とは裏腹の
偽善と見せ掛けの
からっぽなメールを
もっともらしく送ってみる
シンデレラ
物語はいつかは終わるんだろうけど
どこかで終わりに向っていくんだけど
その時
何かが震える音がした
シンデレラ
君がいたその場所で
僕がガラスの靴に気付いてすぐ
君がここに
この場所に戻ってきたんだ
それが事故だか故意だか
分からないけど
「「靴」のために」
戻ってきた君は
勇敢なシンデレラ
魔法を
呪いを
飛び越えて
今
物語が
進み始める
―
なんとなく改訂版。
ネタ切れの気配も漂わせつつ、変化していく軌道を示しつつ、夢とリアルを織り交ぜつつ。
物語の終わらせ方より、始め方を知りたい今日この頃です。