完璧なロボット
「博士、ついに完成しましたね…!」
「あぁ、長年の研究の成果がやっと証明されるときが来たんだ!」
薄暗い研究室の中で白衣の男が2人、手をたたいて喜んでいた。
「すぐに発表しましょう!」
「是非そうしよう。だがその前に部長に報告しないとな。
さぁ、忙しくなるぞ!」
早速電話を掛けると、気だるそうな声の上司が所長自ら発明品を評価してくれると告げたので、より一層男達は喜んだ。
そして数日後の今、眠たそうな表情をした所長を含め、これまた気だるそうなお偉いさん達が顔を並べている。
博士は緊張の面持ちで掛けていた白い布を取り去った。
「これがお話した発明品、完璧なロボットです。」
重だるい瞼の奥に少し光が指したように見えたが、それはすぐに戻ってしまう。
「ただの人間型ロボットじゃないか。今の時代そんなものは大して珍しくないぞ。」
「いいえ、これはただの人間型ロボットではありません!
従来のように無表情な物ではなく、あらゆる言葉を記憶しそれに対する表情も豊かな、限りなく人間に近いロボットなのです!」
一見普通の人間のようにしか見えないロボットは、博士の手によってスイッチを入れられると生き生きとした表情をし、およそロボットだとは思えないような出来映えだった。
「ほら、どうですか!光が目に宿っているようでしょう!」
博士の熱弁に答える者はなく、ただ鬱陶しそうな顔をしている。
「なぜですか!このロボットのどこがいけないんですか!」
ロボットもどことなく悲しそうな顔をしているが、博士の悲痛な叫びを聞くものはいない。
そのうち、所長が溜め息混じりに口を開いた。
「何が駄目か、それはその熱意だよ。」
「どういう意味ですか!」
「今このご時世に君の熱意も表情豊かなロボットもいらないんだ。
私達が欲しいのは正確に動き、文句を言わないロボットのような人間、あるいは正確に動くロボットらしいロボットなのだよ。」
「そんな…。」
「世間を見てみたまえ。表情豊かな人間がいるか?いないだろう。
だとすればそのロボットは人間らしいなんてところからは程遠い訳だ。
技術だけはずば抜けてたからここに置いていたが、発想がそれじゃあ。
集まってもらった皆に申し訳が立たないよ。」
「…。」
「今日限りで君はクビだ。君の助手と一緒に新しい職でも探したまえ。
以上だ。」
「それはあんまりです!だってそんなの…。」
もう博士の話を聞くものは誰一人居なかった。
1人残されたこの部屋で博士は考える。
人に近づけたロボットが人を越えてしまった。
それは今の人が、時代がおかしいのだろうか。それとも自分がおかしいのだろうか…。
わかりきっているはずの答えに悩み涙を流す博士を心配する人間はおらず、ただ起動されたロボットだけが博士を心配そうに見つめていた。
読んでいただきありがとうございます。
うちのテレビはカラーなはずなんですが、最近モノクロに見える気がします。
この話の世界では博士と助手だけがカラーなんでしょうね。
こういう世界にならないことを祈ります。
では、またいつかどこかで。




