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時間戦士は永遠の夢を見るのか・シン番外編「新春かるた対決」

作者: 刹那メシ
掲載日:2026/01/01

皆様、明けましておめでとうございます。今回は新春ということで、小説「時間戦士は永遠の夢を見るのか」の面々に、平行宇宙でかるた対決をしてもらいました。各キャラクターの性格はほぼそのままですが、本編やこれまでの番外編とはまったくの別物ですので、気軽に楽しんでいただければ幸いです。


<実況>

「え~、皆様、明けましておめでとうございます。それでは、只今から、時間戦士杯新春かるた大会を始めたいと思います。私、司会を担当致します、旅館の主人です。本編第10話と第13話に登場しております。この小説は、登場人物が極めて少ないため、私が駆り出されてしまいました。どうぞ宜しくお願い致します。そして……」

「解説を担当させて頂きます、遥か未来の技官であります。本編第14話に登場しております。宜しくお願い申し上げます」

「え~、早速ですが、技官さん。本日は、シフプルチームとメコリチームの頂上対決ということですが」

「そうですね、ご主人」

「シフプル、メコリ。これはどういう意味か分かりますか、技官さん?」

「はい、ご主人。共にヘブライ語です。意味については本編ネタバレとなりますので、残念ながらお教えすることはできません」

「はあ、なるほど。では、まずはシフプルチームの選手紹介です。アミカナ=デフォルマ選手と橘志音選手! 振袖姿のアミカナ選手が美しいですね」

「そうですね、ご主人。後でツーショットをお願いしたいと思います」

「え?! でしたら私もお願いします!」

「分かりました。スリーショットでお願いしてみます」

「続いて、メコリチームの選手紹介です。ミカ=アンダーソン選手と覆面X選手! 技官さん、このX選手は本編に登場しているんですか?」

「はい、ご主人。登場しているのですが、本編ネタバレとなりますので、覆面をつけての登場となります」

「分かりました。シフプルチームの二人については、本編をお読みになった方ならよくご存じの、鉄壁のチームワークが自慢ですね、技官さん?」

「はい、ご主人。アミカナ選手には驚異的な身体能力があります。一方、志音選手には、一度見聞きしたものは忘れないという特殊能力があります。この二人のタッグは、正にかるた取りのために生まれたと言っても過言ではありません」

「え~、対するメコリチームですが、ミカ選手はどうでしょう? アミカナ選手にそっくりではありますが、詳しい情報が手元にはありません、技官さん」

「はい、ご主人。ミカ選手は殆ど本編に登場していないため、能力については未知数となります。ただ、アミカナ選手の姉的存在ですので、シフプルチームは油断できませんね」

「ああ、お姉さんなんですね。道理で似てるわけだ。で、X選手については?」

「はい、ご主人。X選手については本編ネタバレとなりますので、シフプルチームの二人に匹敵するほどの素晴らしい能力を持っている、とだけ申し上げておきます」

「分かりました。なお、優勝チームには、次の番外編の主役権が与えられるそうです。どうですか、技官さん?」

「そうですね、ご主人。シフプルチームにとっては特に嬉しいご褒美ではありませんが、メコリチームにとっては喉から手が出るほど欲しい権利ですね。ミカ選手はまだしも、X選手は一度もフィーチャーされておりませんので」

「なるほど。では、今から両チーム、作戦タイムとなります」


<シフプル陣営>

「首尾はどう?」

 頭を寄せてアミカナが聞く。志音は自信ありげに頷いた。

「配置は既に覚えた」

「さすが志音!」

「で、どうする?」

 そう言われて、アミカナは袖の中からケーブルを取り出した。

「この臍の緒ケーブルで、こっそり私達を繋ぎましょう。それで思考を共有できる。札が読まれたら、志音は場所をイメージして。後は私が取る!」

「……それ、反則じゃないの?……」

 眉を顰める志音を、アミカナは小さく小突いた。

「覆面Xに主役を取られたいの?」

 一度対戦陣営に目をやった志音は肩をすくめた。

「別に構わないよ。もともと主役は君だし、そもそも彼は……」

「あー!」

 志音の言葉を、大きな声を上げてアミカナは遮った。口の前に人差し指を立てる。

「……それ、言っちゃダメなやつ」

「ああ、ごめん……」

「とにかく、やるからには勝つわよ! ほら!」

 アミカナに促されて、志音はケーブルの端を掴んだ。

「……わかった……」


<メコリ陣営>

「首尾はどう?」

 頭を寄せてミカが聞く。覆面Xは頷いた。

「配置は全て記憶した。心配なのはアミカナの運動速度だ。俺の強化された肉体でも、限界がある」

 ミカは、対戦陣営のアミカナに目をやると、鼻先を指で擦った。

「そうね。戦闘特化型アンドロイドだものね。私はどうすればいい?」

「ミカはアミカナの心を攪乱してくれ。できるか?」

「任せて。彼女は私のコピーだもの。ツボは心得てる」

「よし。彼女の戦意を喪失させれば、志音など敵じゃない。我々にも勝機はある」

「了解!」

 ミカが離れると、覆面Xは志音を睨んだ。

「シフプルごときがメコリを超えられないことを教えてやる……」


<実況>

「なお、札を読み上げるのは、本編第18話に登場した『球体の中に響く自動音声』さんになります。これは……人ではありませんよね。本当に登場人物が少ないんですね、技官さん?」

「そうなんです、ご主人。ここにいる6名と自動音声以外、本編で声を発している人はいません。あ、いや、ミカ選手も怪しいですね。彼女がしゃべるのは番外編だけのような……」

「あ、ミカ選手が口の前で人差し指を立ててますよ。言うなってことでしょうか、技官さん?」

「そうですね。あまり厳密に判定すると、誰も参加できなくなりますからね」

「なるほど。では、大会、スタートです!」


<会場>

『論より…』

「はいっ!」

 青白い稲妻のように、アミカナの手刀が札を弾いた。風圧で周囲の札が飛び散る。

「は、速い?!」

 唖然とする覆面Xに、アミカナは余裕の笑みを見せた。彼女の着物の襟や袖から、湯気が立ち昇る。

「どう? 最初からリミッターは外してあるの」

 光を孕んだ青い瞳に、覆面Xはたじろいだ。

 遠慮がちに、志音がアミカナの袖を引っ張る。

「何よ?!」

「……他の札を飛ばさないで。場所が分からなくなる……」

 志音に耳打ちされて、アミカナは肩をすくめた。

『年寄りの…』

「なら、これはどう?!」

 腕を振り上げると、彼女は目当ての札に人差し指と中指を突き当てた。そのまま畳に突き刺す。周囲の札は完全に浮き上がったが、そのまま畳へと着地した。指が突き刺さった畳からは、うっすらと煙が上がる。

「オッケーオッケー」

「……やり過ぎだよ……」

 満足げなアミカナの後ろで、志音は頭を抱えた。

 危うく手を貫かれそうになっていた覆面Xは、ミカへと目配せした。小さく頷くと、ミカの、こちらも青い瞳が光った。

「……調子に乗るなよ、コピー風情が……」

 低い声で、ゆっくりと話す。

「……え……」

 驚いて、アミカナはミカを見た。

「……あんたは、自信喪失して、シャワールームでのたうち回っていればいいのよ……」

「……ど……どうしてそれを……しかも、それ、本編では書いてない……」

 全く意表を突いた指摘に、アミカナはみるみる青ざめた。

「え、何、どうしたの? 何の話?」

 志音が会話に入り込んできて、アミカナは慌てた。

「違うの志音! あいつの言葉に惑わされないで!」

 ミカは冷酷に微笑む。

「畳に穴を開けるほどの力を持っていても、この女はね、あなたの部屋で……」

「違う! やめてやめて!」

 アミカナは頭を抱えて激しく振った。肩を震わせる。

 ミカは微かに眉根を寄せた。……ごめんね、アミカナ。でも、私も勝ちたいの。勝って……もっとフィーチャーされたい。この苦しみ、主役のあなたには分からないわよね……

「……アミカナの心が弱いのは知ってるよ……」

 くず折れそうな彼女の肩に手を置くと、志音は優しく微笑んだ。ハッとしたアミカナはゆっくりと顔を上げた。彼は、彼女の頬についた細い後れ毛をそっと払う。

「そういうのも全部込みで、僕は君に惹かれたんだ……」

「……志音……」

 見つめ合う二人の前で、Xは呟いた。

「……俺は一体、何を見せられているんだ……」


<実況>

「さあ、シフプルチームの圧倒的優位で前半戦が終了しました。ここまでの流れをどう見ますか、技官さん?」

「そうですね、ご主人。ミカ選手のヒール覚悟の精神攻撃が功を奏しませんでした」

「はあ」

「実は、メコリチームにとって、志音選手の存在は両刃の剣となっています。彼に弱さを見せたくないアミカナ選手は、彼が近くにいる時に本心を暴露されることを極端に嫌う訳ですが、同時に、彼の存在が精神安定剤的役割も果たしますので、ダメージを急速に回復できる可能性があります。アミカナ選手への精神攻撃は、非常に高度な技術が要求されます」

「そうですか。では、後半戦もメコリチームの劣勢が続くと、技官さん?」

「はい、その通りです、ご主人」


<会場>

 待機席に腰を下ろして、志音はしきりに対戦陣営を気にしていた。

「ねえ、いいのかな? ミカさん、めっちゃ睨んでるけど……」

「いいも何も、勝負だから!」

 アミカナはペットボトルの蓋を開けた。

「……だいたい、任務で死ぬのはこっちなのに、コピー、コピーうるさいのよ……」

 一気に飲み干すと、彼女の中で警報が鳴った。

『不純物あり! 不純物あり!』

「……何これ? 水じゃない!」

 アミカナは思わず胸に手を当てた。焼け付く感覚があった。思わず膝をつく。息が乱れる。指先が震え出した。

 彼女の様子の急変に、反対側の待機席で、ミカは高らかに笑った。

「かかったわね! そのボトルの中身は、私がおとそに変えておいたのよ!」

「……くそっ……やられた……」

 歯ぎしりしながら、アミカナは床に倒れた。慌てて志音が駆け寄る。

「アミ?! しっかりして!!」

 顔を赤くして、彼女は荒い息をついていた。

「志音……私、もうダメ……後は、あなたが頑張って……」

 気持ちよさそうに微笑むと、アミカナはがっくりと首を落とした。

「アミ!!」

 取り乱した彼が揺さぶると、やがて、アミカナからはいびきが聞こえてきた。

「……え?……」

 ミカは憐れむように微笑んだ。

「……感謝しなさい。ようやく眠れたんだから。これでもう、『だから、夜は嫌い』なんてセリフ、吐かなくて済むわ……」


<実況>

「さて、後半戦ですが……おや! シフプルチームは志音選手が前に出ますね。アミカナ選手は志音選手に引きずられているようですが、倒れたまま動きません。これはどういうことでしょう、技官さん?」

「そうですね、ご主人。先程休憩中に、ミカ選手が大声で不正を暴露していましたが、アミカナ選手は、おとそを飲んで機能不全を起こしたようです」

「おやおや。アミカナ選手はお酒に弱いんですかね」

「いえ、ご主人。アミカナ選手は水を燃料とするアンドロイドなので、燃料に不純物が混じるのは致命的です。これは分からなくなってきました」

「と言いますと?」

「アミカナ選手不在の今、志音選手一人で、覆面X選手に太刀打ちできるのか、ということです」


<会場>

 かるたの前に座った志音に、覆面Xは嘲笑を投げかけた。

「来たな、志音。だが、お前など、俺に敵うものか!」

 志音は黙って睨み返した。冷や汗が流れる。

「……だが、念には念だ。ミカ!」

「了解!」

 ミカは、手にしたラジカセを再生した。突然、歌が流れ出す。

「こ……これは?!……」

 志音の顔色が変わった。


<実況>

「おや、メコリチーム陣営から歌が聞こえてきましたが、技官さん?」

「ん! これはいけませんね」

「どういうことですか?」

「ご主人。このヘブライ語の歌は、通称「メシア讃歌」。本編において、志音選手に体調不良を引き起こす歌なんです」

「ああ! 確かに、志音選手が苦しそうにしています、技官さん!」

「これはまずいですね。ただでさえ力の差があるところに、彼の特殊能力が封じられてしまうと……」

「しまうと?」

「……シフプルチームに勝ち目はありません」


<会場>

 ♪プロメテウスが与えし理~♪(分かりやすくするため、日本語で表示しています)

 ……う、耳鳴りがする!……

『知らぬが……』

「オラッ!」

 風のような速さで、覆面Xは札を取った。

 ♪その数百年の理を以て、タロスの如き器を手にし~♪

 ……ダメだ。速さでは覆面Xには敵わない。僕にできることは、札の配置を完璧に覚えることだ……

『鬼に……』

「オラッ!」

 ♪世界を真実の方向に導く彼の再来を讃えよ~♪

 ……う、頭痛が!……吐き気が!……

『念には……』

「オラッ!」

 ♪もはや、彼の行く手を阻むものはない~♪

 ……クソ、ダメだ……

『楽あれば……』

「オラッ!」

 志音は堪らずに肘をついた。

「……もう、覚えられない……」


<実況>

「さあ、メコリチームの驚異的な挽回により、現在両チーム同点となっております。そして、残るは札一枚のみ。どうですか、技官さん?」

「はい。ご主人。札は残り一枚ですので、もはや探す必要はありません。純粋に、速さだけの勝負となります。これは志音選手、厳しいですね」


<会場>

「志音、潔く負けを認めろ。お前では俺に勝てない」

 腕を組んだ覆面Xは、肩で息をつく志音に向かって、静かに語りかけた。

 脂汗を滲ませながら、志音は覆面Xを睨んだ。

「……まだ、勝負はついていない!」

 覆面Xは息をついた。

「そこまでして主役の座が欲しいのか?!」

「違う。僕は……」

「聞け! 志音。お前は一応主人公扱いになっているが、所詮は狂言回しだ。誰もお前に興味なんかない。そこで酒かっ食らってぶっ倒れていびきこいてる女にしか、興味がないんだ!」

 覆面Xに言われて、志音はアミカナを振り返った。

「……わかった……クラシコだ……」

 何やら寝言を言いながら、彼女は気持ちよさそうに眠っている。

「志音!」

 覆面Xの声に、志音は向き直った。覆面Xは彼へと手を伸ばしていた。

「志音、俺と共に来い!」

「……何?……」

「お前なら、俺の言う意味が分かるはずだ」

 志音は僅かに身を引いた。覆面Xは片膝を立てて身を乗り出す。

「志音! お前も男なら、自らの手で、物語の歯車を回してみたいとは思わないのか?!」

「……物語の歯車……」

 志音は目を閉じて天を仰いだ。覆面Xは静かに頷いた。

 次に志音が目を開いた時、その瞳には不屈の光が宿っていた。覆面Xを睨むと不敵に笑う。

「……さすが令和時代。考え方が古いね……」

「何だと?」

「……僕はただ……」

 そう言って一度目を伏せた志音は、揺るがぬ意志を持って顔を上げた。

「輝くべき人に、輝いてもらいたいだけだ!」

 その宣言に、覆面Xは思わず後ずさった。

「……おのれ、志音。ミカ! 音量最大だ!」

「は、はい!」

「ぐわぁぁ!」

 大音量の歌に、志音は両耳を押さえてうずくまった。もはや、彼が札など取れる状況にないことは、誰の目にも明らかだった。

 ほくそ笑む覆面Xの後ろで、ミカは立ち竦んでいた。

 ……志音君……あなた、そうまでしてアミカナのことを……

 彼の後ろで寝ているアミカナに目をやる。

 ……私にできること……

 ……同じ精神の器なら、意識を繋げることもできるはず!……

 ミカは目を閉じた。

 ……アミカナ……アミカナ……


<……アミカナ……アミカナ……起きて……>

 暗闇の中で声がする。

 ……誰? 誰が話しかけているの?……

<……志音が、あなたのために戦っている。このままでは負けてしまうわ……>

 ……姿が……よく見えない……

<……起きて、アミカナ!……あなたは志音と二人で一つなんでしょ!……>

 ……あれは、私?……


 うずくまる志音の背後に、アミカナはゆらりと立ち上がっていた。体から何かが立ち昇っているようだった。突然の出来事に、覆面Xはたじろいだ。

「ば、バカな?! お前は確かに眠ったはず?!」

「……悪い奴……」

 覆面Xを見下ろす青い瞳が光る。

「何?」

「志音をいじめる、悪い奴だ!」

「ハッ! 抜かせ!」

 アミカナは身構えた。

「最後の一枚は私が取る!」

『負けるは……』

「バカめ! 間合いが遠いわ!」

「なら近づけるだけよ!」

 言い終わる前に、彼女は畳の縁を思い切り踏みつけていた。シフプル陣営に向かって、勢いよく畳が立ち上がる。それは、覆面Xには壁となって立ち塞がった。振りかぶったアミカナは、舞い上がった最後の札に狙いを定める。

「チェストォ!!」

 音速を超える彼女の指が、札ごと畳を貫いた。衝撃波が畳の裏側に突き抜ける。まるで爆発したかのように、イ草の繊維が榴弾となって覆面Xを襲った。

「バ~カ~な~?!」

 イ草まみれとなった覆面Xは、場外へと吹き飛ばされた。


「やったぁ! 勝ったぁ!」

 飛び跳ねたアミカナは、うずくまる志音の肩へと手をかけた。

「志音、大丈夫?」

「……ああ、大丈夫……」

 彼はゆっくりと立ち上がった。

「勝ったよ、私達!」

「……ああ、よかったね……」

 満面の笑みの彼女に、志音は微笑み返した。

 ……あなたは志音と二人で一つなんでしょ!……

 不意に声が蘇って、真顔になった彼女は志音の顔を見つめた。

「……どうした?」

 志音が聞く。

「……ううん。何でもない」

 彼女は微笑んだ。

「そうだ! アミ! ちょっと来て」

 彼らしくない強い力で、志音はアミカナを引っ張った。

「ミカさん!」

 一人退場しようとしていたミカに声を掛けて、足早に近寄る。ミカは振り返った。

「志音君……」

 腕を取って、志音はアミカナを彼女の前へと導いた。アミカナは、気まずそうに目を伏せた。睫毛を震わす。

「ありがとうございます」

 志音は頭を下げた。ミカは眉を顰めた。

「アミを起こしてくれたんですよね、僕らのために」

 ミカは一瞬目を見開いたが、微笑みながら首を傾げた。

「何のこと?」

 アミカナはハッとして顔を上げた。

「あれ、ミカだったの?!」

 ミカは思わず目を逸らしていた。志音は微笑んだ。二人の間にぶら下がった臍の緒ケーブルを手にする。

「このケーブルで繋がっていたので、アミの内面が僕にも見えました」

「え?!」

 驚いたミカは志音を見た。アミカナも慌てた。

「志音! それ、言っちゃダメなやつ!」

「あ?!」

 お互いにケーブルを掴んで、アミカナと志音は恐る恐るミカを見た。

 二人の顔を交互に見たミカは、優しく微笑んだ。

「二人とも、優勝おめでとう……」

「アミカナ選手! 志音選手! 勝利者インタビューがありますので、こっちに来て下さい」

 突然、旅館の主人が乱入してきた。二人の腕を引っ張る。

「待って!」

 彼の腕を振り払って、アミカナはミカに向き直った。

「ミカ……」

 一度目を伏せてから、ミカの顔を見つめる。

「ありがとう」

「……ううん。私の方こそ、傷付くこと言って、ごめんね」

 二人は微笑み合った。

「さあ、早く!」

 主人に急かされて、二人はインタビュー場所へと向かった。途中、振り返った志音が、ミカに向かって会釈をする。

「……何だか妬けちゃうなぁ……」

 二人の後ろ姿を見ながら、ミカは嬉しさと寂しさが入り交じったような顔で呟いた。

「お疲れ様でした、ミカ君」

 突然の声に、驚いてミカは振り返った。彼女の背後には、後ろ手に組んだ技官が立っていた。

「技官! 技官こそ、解説お疲れ様でした」

 微笑んで頭を下げる。

「いい勝負でしたよ」

 見上げるようにして話す技官に対し、苦笑したミカは俯いた。

「……どうだか……」

 技官は短く息をついた。

「どうです? 遥か未来の者同士、これから飲みに行きますか?」

 ミカは驚いて顔を上げたが、やがて笑顔を作った。

「いいですよ。技官のおごりなら」

「もちろんです」

 技官は頷いた。


「アミカナ選手、優勝おめでとうございます」

「ありがとうございます!」

「え~、次回の番外編の主役の座を勝ち取った訳ですが、ファンの皆様に一言」

「そうですね……本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます!」


挿絵(By みてみん)

お読み頂きましてありがとうございます。思いのほか長編になってしまいました。アミカナ&志音チームが優勝しましたので、彼らを主役にした番外編を近日中に公開したいと思います。ここまでお付き合い頂きまして、本当にありがとうございました。

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