第8話「王国騎士団との衝突──覚醒する精霊王の血」
騎士たちが一斉に動いた。
金属の光が森の木漏れ日に反射し、
鋭い剣先が俺へと向けられる。
(くっ……いきなり殺意のある目してるじゃねぇか!)
「リオ!!」
エルフィリアが俺の背中に隠れる。
その小さな手が震えていた。
「大丈夫。……俺が守るよ」
短く言い、剣を構える。
エリュシオンが低く言った。
『主、手加減は必要ですが──
殺されるほど弱くありませんよ』
(お前が一番怖いこと言うんだよ!)
◆◇
「かかれぇ!!」
騎士たちが一斉に襲い掛かる。
前衛二人が左右から斬り込んでくる。
「ずりゃっ!」
一歩踏み込んだ瞬間、
世界の“色”が変わったように見えた。
(……なんだ、今の感覚)
“彼らの剣筋”が、
まるでスローモーションのように見える。
『主の身体能力は、既に人間の領域を超えています』
(超えてるの!? 俺もう人間じゃないの!?)
『安心してください、人間ですよ』
(そういう問題じゃねぇ!)
だが今は考えている暇もない。
迫りくる騎士の刃を見極め、
俺は剣を横に払う。
キィィィィンッ!!
鮮やかな風圧が走り、
二人の騎士が横に吹っ飛んだ。
「なっ……!?
一撃で、この距離まで!?」
「ば、馬鹿な……なんだあの風の衝撃は……!」
驚く暇もなく、後ろから槍が突き込まれる。
「くっ……!」
反射的に剣を後ろへ回す。
キィンッ!
槍は弾かれ、
騎士の体勢が崩れた。
俺は剣を振るつもりはなかったが、
エリュシオンが勝手に“風の追撃”を放つ。
ぼんっ!!
「ぐはっ!?」
槍兵が吹き飛んだ。
『ふむ。主、もう少し意識を集中させれば
“加減”もできますよ』
(いやそっちが加減しろよ!?)
戦場は一瞬で静まり返る。
騎士たちの表情が一気に強ばった。
「な、なんだこの少年……
勇者カイン様以上の……」
「まさか、精霊族の守護者……?」
動揺の声が広がる。
◆◇
その時。
「……やめてっ!!」
エルフィリアの叫びが響いた。
同時に──
空気が、一変した。
(……え?)
エルフィリアの身体が淡く光り始める。
銀色の髪が揺れ、
目が薄く輝く青色から、“蒼白の精霊光”へと変化した。
『主、離れてください──“精霊王の血”が反応しています』
(精霊王の血……!?)
エルフィリアの周囲に、小さな風の粒子が舞い始めた。
そして彼女の胸元の紋章に刻まれた
“虚魔紋章”がピリッと震える。
「……いや……来ないで……!
もう、傷つけないで……!」
叫びと同時に──
透明な風の障壁が一気に広がった。
村を守った時の風とは、まるで別物。
もっと“重くて、鋭くて、王族の力”だった。
◆◇
「うっ……!? なんだこれ……!」
「身体が……動か……ない……!」
騎士たちが次々に膝をつく。
風が身体を押し、
力を吸い取られるような感覚に襲われているらしい。
俺はただ呆然とした。
(エルフィリア……これ、君の力なのか……)
彼女自身も驚いた顔をしていた。
「な、なんで……?
わたし……魔法なんて、もう使えないはずなのに……」
『それが“精霊王の血”です。
窮地に反応し、持ち主を守る。
紋章の呪いに封じられていても……本能は消えません』
(精霊王家って……こんなすごい力あるのか……)
風の障壁は、
騎士たちを傷つけずに“拘束だけ”していた。
(優しい力だ……)
◆◇
風の渦が徐々に弱まり、
やがて森に静けさが戻る。
騎士たちは完全に戦意を失っていた。
「う……うそだろ……
精霊姫が、紋章の呪いに侵されているはずなのに……」
「それでも、この力……精霊王の娘……本物……!」
その時、エルフィリアが俺に寄り添うようにして言った。
「……行こう、リオ。
わたしたち、時間がない」
その手は震えていたが、
決意の強さが宿っていた。
俺はうなずいた。
「行こう。エルダリアを救いに」
『主……騎士たちはもう追ってきません。
ですが、これはほんの始まりです』
(始まり……?)
『王国、そして“勇者”たちも動きます』
不穏な気配が森に漂う。
これが、
精霊王国奪還へ向けた
“本当の旅の序章”だった。
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