第6話「精霊姫の大人気と、王都からの不気味な噂」
ルシェ村で魔物を追い払った翌日。
俺とエルフィリアは、村の広場にいた。
……正確には、囲まれていた。
「精霊姫様って本当に存在したのか……!」
「なんとお美しい……!」
「昨日倒れたのに、もう元気に……」
「若いの(リオ)! お前、どこでこんな可愛いお嬢さん拾ってきたんだ!」
(拾ってない拾ってない!!)
村人たちの好奇心と尊敬の視線が刺さる中、
エルフィリアはというと――
「ふふ……リオと一緒なら安心だよ」
と、俺の袖をぎゅうっと握ったまま離れない。
(もうこれ完全に“専属つき精霊姫”じゃん……!)
村のおばちゃんが、ニヤニヤしながら言った。
「まあまあ、姫様? リオのどこがそんなに良いんだい?」
エルフィリアは少し考えて――
嬉しそうに微笑んだ。
「リオはね……
世界樹の香りがして、あったかくて……
わたしの命を……救ってくれたの」
「んまぁぁぁ!! 尊い!!」
「こんなん結婚案件じゃないか!!」
「リオぉ!! 今すぐ式場つくるぞ!!」
「やめろぉぉ!!」
顔を真っ赤にしながら叫ぶ俺。
エルフィリアはというと。
「……結婚ってなに?」
「やめろおぉぉぉ! その質問もっと危ない!!」
村人たちの笑い声が響く。
◆◇
村の外れでは、子どもたちが精霊姫に群がっていた。
「姫さま、魔法見せてー!」
「おねえちゃん光ってるー!」
エルフィリアは困ったように首をかしげる。
「魔法は……まだ、できないの。
紋章のせいで、魔力を使うと体に負担が来ちゃう……」
(あっ、そっか……)
子どもは少し残念そうにする。
その時、俺が前に出た。
「その代わり、俺がちょっとだけ魔法を見せてやるよ」
「ほんと!? お兄ちゃん魔法使えるの!?」
「えーっと、まあ……最近覚えたばかりだけど」
俺はエリュシオンを軽く振る。
ぼんっ!
淡い緑の光が輪になって弾け、
子どもたちが歓声を上げた。
「すげええええ!!」
「お兄ちゃん勇者!? 勇者なの!?」
「いや勇者じゃないよ!? 追放されたんだよ俺!!」
子どもに事実を言っていく男、リオ。
エルフィリアは微笑みながら見ていた。
「……リオは、優しいね」
「そ、そんなことないよ」
「あるよ。
わたし、精霊族の国でも……
こんな風に笑ったの、久しぶり」
(……そっか)
胸の奥が少し暖かくなる。
◆◇
その頃――王都。
勇者パーティは王城の作戦室にいた。
だが、いつものような余裕はなかった。
「なあ……聞いたか?
精霊族の王女が行方不明らしい」
戦士グラッドが不安げに呟く。
「そのせいで、魔物の活動が活発になってるとか……
どっかの村が襲われたって噂も……」
僧侶ラミアが顔色を悪くする。
勇者カインは眉間に皺を寄せていた。
「…………チッ。
なんでこんな時に精霊族がいなくなるんだよ」
魔法使いアイナが言った。
「しかもさ……
“魔物の群れを一撃で吹き飛ばした青年がいる”
って噂まで流れてるらしいよ」
「へぇ……そんな奴いるんだ」
「勇者カイン様より強いんじゃ……?」
「バカ言うな! この世で俺より強い奴なんて――」
そこまで言って、カインが動きを止めた。
僧侶ラミアが、重い口を開く。
「……ねぇカイン。
まさかだけど……リオってこと……ないよね?」
一瞬。
カインの顔が、引きつった。
「…………あるわけ、ないだろ。
あいつは無能だ。役立たずだ。
そんな力……あるわけない……」
だが――
その言葉は、自分に言い聞かせるような声だった。
◆◇
村では、夕焼けが差し込む頃。
エルフィリアが俺の横に立ち、そっと言った。
「ねぇリオ。
明日、わたし……国に戻りたい」
「え?」
エルフィリアは、まっすぐな瞳で俺を見つめる。
「家族を助けたい。
……でも、一人じゃ怖い。
だから……一緒に来てほしい」
「……俺で良ければ」
言葉にするより早く、
エルフィリアは俺の手を取った。
「ありがとう……!」
村の灯りがひとつ、またひとつと灯り始める中。
この時の俺たちはまだ知らなかった。
この旅が――
王都と勇者パーティの運命を大きく揺るがすことになるということを。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をいただけると励みになります。
これからもどうぞよろしくお願いします!




