第20話 「暴走する世界樹の姫──心の契約」
三つ巴の怒号が響き渡る広間。
クロードの黒い霧。
カインの聖剣の光。
そして俺の世界樹の加護。
それらが衝突し、火花が散っていた。
だが──
その中心で震えているのは、
たった一人の少女。
エルフィリア。
胸元の紋章が脈打ち、
光が漏れる。
『主、まずいです!!』
エリュシオンの声が刺さる。
『精霊姫の精神は限界です!
“世界樹の心核”が彼女の感情に反応し──
暴走の兆候が出ています!!』
(世界樹の心核……?)
彼女の体から溢れだした光が、
広間を飲み込むように満ちていく。
エルフィリアは叫んだ。
「みんな……やめて……
喧嘩しないで……
これ以上……誰も傷つけたくない……!!」
その叫びに応じるように──
広間が砕けた。
◆迷宮崩壊
轟音。
空間が裂ける。
“虚霧迷宮”を支えていた魔力が、
一気に暴走し始めた。
エリュシオンが緊急警告。
『主!!
この迷宮、崩落します!!
ここにいたら全員……押し潰されます!!』
クロードはふらつきながらも立ち上がる。
「エル……フィリア……!!
逃がさない……僕と一緒に……!!」
カインも吠える。
「姫は俺が守るんだ!!
リオォ!! お前を倒して!!」
(なんで同時に敵増えるんだよ!!!)
だが今は、
どちらとも戦ってる場合じゃない。
俺はエルフィリアの肩を掴んだ。
「聞けエルフィリア!
今お前が逃げなきゃ、全員死ぬ!!」
「わたし……
どうすれば……」
答える。
「俺を信じろ!!」
エルフィリアの瞳が揺れる。
涙が一粒、宙を舞った。
その瞬間──
胸元の紋章が光を放った。
◆心の契約
エリュシオンが息を呑むように言う。
『……主、これは……!
“心核リンク”……!
世界樹の姫と契約する儀式です!!』
「契約……?」
『互いの心を通わせ、
世界樹の力を共有する──
最高位の加護です!!』
(どうやるんだ!?)
『簡単です!!
彼女の手を、強く握ってください!!』
(なんかもっと儀式っぽいの期待した!!)
だけど迷ってる時間はない。
俺はエルフィリアの手を、
自分の胸の前で強く握った。
「俺は……お前を守る。
必ずだ。
絶対に誰にも傷つけさせない」
エルフィリアが震える声で応えた。
「わたしも……
リオを信じる……
わたしの全部を……預ける……」
──契約成立。
ふたりの間に、
金緑の光が弾けた。
『心核リンク、完全接続!!
主、エルフィリアの世界樹治癒魔法が使えます!!』
体が軽くなる。
力が溢れる。
(これが……二人の力……!)
◆暴走、鎮静──そして決意
契約の光が迷宮全体に広がり、
暴走していた魔力が静まっていく。
砕けた空間が再構築され始めた。
(助かった……!)
だが、
カインとクロードは違う意味で固まっていた。
「な……
なんだ今の……?
契約……?
姫と……リオが……!?」
カインの嫉妬が、笑えるほど燃え上がっている。
クロードは膝をつき、
苦悶の声を漏らす。
「……どこまで……
僕から奪えば……気が済むんだ……リオォ……」
(いや違うって……!
こっちも必死なんだよ!!!)
でも今は、
彼らを説得してる時間はない。
エリュシオンが指し示す。
『主、出口は“上”です!!
この広間の天井が崩落していません!
そこから脱出を!!』
俺はエルフィリアを抱え、跳躍した。
舞い散る光の中を、
まっすぐに。
背後では、崩れた広間に
カインやクロードが埋もれていく。
(死にはしない。
二人とも……まだ決着は、先だ)
外気が肺に流れ込む。
暗い宮殿から、
夜の空へ飛び出した。
大きく深呼吸して、
空を見上げる。
エルフィリアが小さく呟いた。
「リオ……ありがとう……」
俺は微笑む。
「これでやっと──
君を奪還する旅が始まる」
そう宣言した瞬間──
遠くで、王国の軍旗がはためく音がした。
第二章最大の戦いが、
静かに幕を開けた。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をいただけると励みになります。
これからもどうぞよろしくお願いします!




