第17話「歪む王都──勇者の影と裏切り者クロード」
虚魔王の崩壊から数分──
玉座の間に静けさが戻った。
黒い霧は消え、
虚魔の脈動は止まり、
王都全体を覆っていた重苦しい気配も薄れていく。
だが。
それは“終わり”ではなく、
新たな混乱の始まりに過ぎなかった。
◆精霊王と王妃の魂、最後の言葉
黒い蔦に囚われていた精霊王と王妃の身体は、
完全に動きを失っていた。
エルフィリアは泣きながら父母に触れようとするが──
震える手は途中で止まり、
胸元に落ちる。
「……お父さま……お母さま……
ありがとう……でも……
どうして……どうしてわたしを残して……」
俺は彼女の肩を抱いた。
『主。
精霊王と王妃の魂は……
“最後の意思”だけを残し、完全に消えました』
(あの二人の声……
本当に……最後の一言だったのか)
エルフィリアは涙を止められない。
「リオ……
わたし、どうしたら……」
「大丈夫だ。
この国を取り戻す。
君の父さんと母さんが守ろうとしたものを、
俺たちで守るんだ」
エルフィリアは頷いた。
だがその瞳には、
深い不安が色濃く残っていた。
──裏切り者“クロード・ルミナス”。
その名は、まだ彼女の心を切り裂き続けていた。
◆虚魔王討伐の余波──王国側へ“揺れ”が走る
場面は王国側へ移る。
王都の観測塔。
魔術士たちが慌ただしく動いていた。
「魔力反応が急消失!!」
「エルダリアの虚魔の核が……全部消えた!?」
「何者が……!?
これは軍事級の奇跡だぞ!!」
その情報は王城へ即座に伝わる。
ライオネル団長は汗を拭いながら報告する。
「陛下……
虚魔王の反応も……完全に途絶えました」
国王は驚愕しつつも、
表情は固く引き締まっていた。
「……犯人は、間違いなく“黒髪の少年”だ」
側近たちがざわめく。
「姫を連れ去り、
王国の許可なく“虚魔王”を討った……?
そんな真似、普通は……!」
「これは、もはや王国への反乱では……?」
「勇者カインを至急向かわせよ。
姫と少年の“拘束”を最優先とする!」
国王の声が響く。
(この国……完全に誤解してる……!)
こうして、
王国はリオを“危険因子”と断定し、
勇者パーティの出動が決まった。
◆勇者パーティ──カインの“歪み”
その頃。
王都郊外、精鋭騎士団の駐屯地。
勇者カインは剣を手に、苛立ちを隠せずにいた。
「くそっ……!
また“黒髪の少年”の噂か……!!」
アイナが近づく。
「カイン様……落ち着いてください」
「落ち着いてられるか!!
虚魔王を倒したのが“少年”って……
どう考えてもリオのことじゃねぇか!!」
グラッドがぼそりと呟く。
「いや……
リオなら……なんかやりそうだよな……」
「お前まで何言ってんだ!!」
カインの怒号が響く。
ラミアが恐る恐る言う。
「でも……リオはもともと優しかったし……
姫を助けたって話も……
なんか、リオらしい……というか……」
カインの表情に“焼け付くような怒り”が宿る。
「……全部……
俺たちの“追放”が間違ってた……
そう言いたいのか?」
アイナは静かに、
「……そう、かもしれません」
と言った。
その一言で──
カインの心が、
完全に“歪んだ”。
(……リオ……
許さない……!
お前が俺より強いなんて……
そんなの……絶対に許さない!!)
◆エルダリア王都──クロードの影
場面はリオたちへ戻る。
虚魔王の残滓は消えたが、
宮殿の奥は静まり返っている。
その静寂を裂くように──
エリュシオンが鋭く告げた。
『主、気をつけてください。
黒い魔力の“残滓”が……まだ漂っています』
「虚魔王の残りか?」
『いいえ……これは“人の魔力”です。
強く、歪み、よじれている……』
エルフィリアが息を呑む。
「……まさか……
クロード……?」
その時だった。
玉座の間の奥にある通路の入り口から──
“誰かがこちらを見つめている”気配がした。
暗がりの中。
細長い影。
人のようで、人ではない揺らぎ。
その影は、
消える直前、確かに“言った”。
「──エルフィリア。」
エルフィリアの全身が震えた。
「……クロード……っ!?」
影はすぐに霧となり、消えた。
だが間違いない。
裏切り者は──
クロード・ルミナス。
精霊姫エルフィリアの“幼馴染で側近”。
エルフィリアは唇を噛み、涙を落とす。
「どうして……
クロード……
どうしてわたしを……お父さまを……裏切ったの……」
俺は彼女の肩に手を置く。
「追おう。
真相は……絶対に確かめる」
エルフィリアは震えた声で、
「リオ……
一緒に……来てくれる……?」
「当然だ」
強く、はっきりと答えた。
この瞬間、
俺たちの次の目標は決まった。
──裏切り者を追う。
クロード・ルミナスの真意を暴く。──
しかしその頃、
王国軍と勇者パーティは
急速にこの地へ迫っていた。
大きな衝突は、
すぐそこまで来ている。
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