第16話「決着──世界樹の子と虚魔王/裏切り者の名」
蒼紫と翡翠色の光が入り混じる。
虚魔王の黒い霧と、
俺の《世界樹感応・完全解放》がぶつかり合い、
玉座の間全体が震えていた。
「世界樹の子……
ここまでの力を……!」
虚魔王の三つの瞳が、
初めて“驚愕”の色を見せた。
体の奥に光る二つの“核”が、
鮮明に見える。
(あれを……同時に貫ければ……!
勝てる!!)
◆虚魔王、逆襲
虚魔王が叫ぶ。
「調子に乗るなぁぁ!!」
空間が歪む。
触手が数十本、地面や壁から出現し、
俺めがけて襲いかかってきた。
(速い……! でも……見える!!)
一本一本の“動きの手前”の魔力が読める。
俺は最短距離で触手を抜け、
虚魔王の胸元へ迫る。
「そこだぁぁぁぁ!!」
剣に緑の光が宿り、
一直線に振り下ろす。
虚魔王も本気だ。
黒い翼で衝撃波を放ち、
俺の身体が後ろに弾かれる。
ゴッ!!
(ぐっ……!!
視界が……揺れる……!)
『主!! 踏ん張って!!
姫が持ちません!!』
エルフィリアを見ると──
彼女は胸元の紋章を押さえながら、
なお俺のために“風の防壁”を張り続けていた。
(……エルフィリア……!!
守らなきゃ……!!)
俺は歯を食いしばり立ち上がる。
虚魔王が冷酷に笑う。
「世界樹の子よ。
その光は確かに美しい。
だが──
お前の心が折れれば、即座に闇に堕ちる」
「折れねぇよ!!」
俺は叫ぶ。
「守りたい奴がいる限り、絶対に折れねぇ!!」
虚魔王の身体が一瞬止まった。
「……“守りたい”だと……?」
その声は、どこか歪んでいる。
(……今、揺れた!?)
『主!! 虚魔王の精神に“ひび”が入りました!
今が……本当のチャンスです!!』
(行くしかない……!!)
◆精霊王の魂、覚醒
その時だった。
黒い蔦に囚われたままの
精霊王と王妃の胸元が淡く輝いた。
「……あ……?」
エルフィリアが振り返る。
そして──
微かな声が、
広い玉座の間に響いた。
「……エル……フィ……リア……」
「っ!! お、お父さま……!?
お母さま……!?」
精霊王の魂が一瞬だけ“外に出た”のだ。
エルフィリアは両手で口を押さえ、涙を流す。
虚魔王が激しく叫ぶ。
「やめろ!!
貴様らはもう私の“器”だ!!
今さら魂が覚醒してたまるか!!」
だが精霊王の魂は、
弱々しいながらも二人で声を合わせた。
「……娘を……頼む……」
エルフィリアは崩れ落ちた。
「お父さま……お母さま……!!
やだ……行かないで……!!
もっと……話したい……!!」
虚魔王が吠える。
「黙れぇぇぇ!!
器が……勝手に……動くな!!」
怒りで虚魔王の魔力が乱れた。
その瞬間──
“二つの核”が一斉に弱点を晒した。
『主!!
今です!!』
(わかってる!!)
◆決着の刃
俺は全力で地面を蹴った。
視界が緑の光で満ちる。
虚魔王が腕を広げ、
黒い嵐を撒き散らす。
それでも──
俺は止まらなかった。
エルフィリアの涙が視界に浮かぶ。
精霊王と王妃の最後の願いが響く。
俺は叫んだ。
「二人を返せぇぇぇぇぇ!!!」
剣が光を帯び、
まっすぐ二つの核に向かった。
──ザシュッ!!
緑の光が弾けた。
核が砕け、
虚魔王の身体が崩れ落ちる。
「……ま、さか……この私が……
世界樹の子に……!」
虚魔王は笑った。
「しかし──
まだ終わらない。
“裏切り者”が生きている限りな」
(!?)
俺は叫ぶ。
「誰だ!!
誰が裏切った!!」
虚魔王は、最後の力で顔を上げる。
三つの瞳が、エルフィリアを見つめ──
口元が、ゆっくりと歪んだ。
「“お前の側にいた者”だよ……
エルフィリア……」
「やめて……言わないで……!」
「裏切り者は──
お前が最も信じていた者。」
エルフィリアが小さく震える。
そして虚魔王は……
最後の言葉を落とした。
「──“クロード・ルミナス”。」
エルフィリアの顔が、
一瞬で蒼白になった。
「……う……そ……
クロード……が……?
そんな……はず……ない……!!」
虚魔王の身体が霧となって崩れ落ちる。
闇は散り、
玉座の間に静寂だけが残った。
エルフィリアは膝から崩れ落ちた。
「やだ……信じたくない……
クロードは……幼い頃から……
いつもわたしの隣にいて……
助けてくれて……
そんな人が……裏切るなんて……」
俺は彼女の肩に手を置き、抱き寄せる。
「大丈夫だ。
真実は……俺たちで確かめよう」
エルフィリアは震える声で、
「リオ……お願い……
一人じゃ……耐えられない……」
そう言って、
俺の胸に顔を埋めた。
(クロード……
エルフィリアの“側近”であり、幼馴染……
そいつが裏切り者……!?)
世界は大きく動いた。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をいただけると励みになります。
これからもどうぞよろしくお願いします!




