第14話「死闘──虚魔王第一形態」
玉座の間に満ちる黒い霧が、
生き物のように蠢きながら俺たちを包囲していく。
(……呼吸が重い。
気を抜いたら一瞬で飲まれる……!)
エルフィリアは後ろで震えながらも、
必死に立っていた。
「リオ……気をつけて……
あの人……わたしの国を……全部……!」
俺は剣を軽く回し、
目の前の“虚魔王”を見据える。
虚魔王カテドラルは、
まるで王のように静かに立ち──
一歩、こちらへ歩き出した。
「世界樹の子よ。
まずは“軽く”試させてもらおう」
その瞬間──
◆虚魔王の第一撃
空気が、歪んだ。
目の前にいた虚魔王の姿が“かき消え”、
次の瞬間──
黒い影が真横から斬りつけてきた。
「っ……!!」
無意識に剣を構えた。
キィィィン!!
全身が痺れるほどの衝撃が走る。
(やべぇ……!
一撃、重すぎる!!)
『主! 虚魔王は“空間ずらし”を使っています!
見える位置と実際の位置が違います!!』
(チートやん!!)
虚魔王は愉悦に満ちた声で言う。
「反応したか。
だが、この程度で満足してはいけないぞ?」
次の瞬間──
黒い触手が地面から噴き出した。
「下か!? くっ!」
俺は飛び退くが、
触手は地面を蠢き、俺の足を狙って迫る。
『主、右! 下から四本!』
(見えてる……!)
第三の力《世界樹感応》が発動している。
虚魔王の魔力の流れが“色”として見える。
“触手の動きの予兆”まで読める。
俺は足を一歩前に踏み込み、
触手の“死角”へ滑り込んだ。
「らぁっ!!」
剣を振り払う。
青白い光が走り、触手がまとめて消し飛んだ。
虚魔王が目を細める。
「ふむ。
本当に興味深い……
世界樹の加護は、やはりただの伝承ではなかったか」
◆◇
◆虚魔王の本気が始まる
虚魔王は手をかざす。
空間がぐにゃりと捻れ──
俺たちの周囲に“十数個”の黒い球体が現れた。
エルフィリアが小さく叫ぶ。
「虚魔の……“圧縮霧弾”……!」
『主、被弾すれば即死級です!!』
(やっぱ即死じゃねぇか!!)
虚魔王は不気味に手を開いた。
「さあ、死ぬがよい──」
瞬間。
黒い球体が一斉に“爆ぜた”。
◆リオの世界が止まる
爆発の寸前──
(……来い!!)
胸の紋章が強く脈打ち、
世界がスローモーションに変わる。
球体の爆風の流れ、
衝撃波の角度、
破片が飛ぶ軌道──
全部、視える。
(避けるんじゃない。
“間を通る”んだ……!)
俺は一歩前に出て、
連続的に立ち位置を変える。
爆風と破壊の流れの“隙間”を縫うように進む。
『主……! 完璧です!』
(やってやったぜ!!)
爆風を抜け、虚魔王の目の前へ飛び込む。
虚魔王の瞳が輝く。
「ほう……」
(やっと届いた──!)
剣を振り下ろす。
「おおおおおおおっ!!」
刃が虚魔王に迫る──
だが。
キィィィィィン!!
何かに阻まれた。
虚魔王の背中の触手が、盾のように形を変えていた。
「悪くない。
だが──まだ届かぬ」
そして、虚魔王の手が“俺の胸元”に触れた。
(まずい──!)
『主!! 離脱を!!』
しかし遅かった。
虚魔王の指先から黒い光が流れ込む。
ぐっ……!!
身体が……重い!
──魔力を吸われている!!?
「やめ……ろ……!」
虚魔王は嬉しそうに呟いた。
「お前の魔力……実に美しい。
世界樹の色……澄み渡る緑……
飲み干したくなる」
(飲み干すな!!)
しかし、その時だった。
──パンッ!!
虚魔王の手を弾く“風”が吹きつけた。
「リオを離れろぉぉぉぉ!!」
エルフィリアの叫び。
彼女の胸元の“虚魔紋章”が輝き、
風が暴れ狂った。
その風は、虚魔王を一瞬だけ押し返す。
虚魔王の動きが止まった。
「……ほう……
虚魔紋章が……反逆の風を生むとは」
エルフィリアは震えながらリオの前に立つ。
「リ、リオは……わたしが守る……!」
虚魔王は静かに笑った。
「恐怖に震えながらも、愛する者を守ろうとするか。
精霊王の娘らしい。
だが──」
虚魔王の“瞳の色”が変わる。
「そろそろ幕間といこう」
空気が、割れた。
◆◇
◆虚魔王の“本気”の始まり
虚魔王の身体が黒い霧に包まれ、
その奥に巨大な影が現れる。
「第一形態──終了」
(嘘だろ……!?)
『主……来ます!!
虚魔王“第二形態”!!』
虚魔王は黒い翼を広げ、
宮殿全体が揺れ始めた。
「さあ……
ここからが、真の地獄だ、世界樹の子よ」
エルフィリアの肩は震えていた。
だが、俺の手を握る力は強かった。
(……負けられねぇ!)
俺は剣を握り直し、叫んだ。
「第二形態だろうが関係ない!
絶対に倒す!!」
闇と光が、激突した。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をいただけると励みになります。
これからもどうぞよろしくお願いします!




