第11話「王都騒然──暴走する勇者カイン」
◆王都を揺らす“異変”
精霊王国エルダリアの奥で、
リオが虚魔を浄化したその瞬間──
王都の空に、“緑の閃光”が走った。
街の人々は未曾有の光景に足を止め、
城の高塔にいる魔術師たちは慌てて観測値を読み上げる。
「魔力値、急上昇!!」
「これは……あの地方の“魔力汚染”が浄化されている!?」
「そんな馬鹿な……!
あれは王国軍でも不可能なレベルの浄化だぞ!!」
魔術師団長は、顔面蒼白で叫んだ。
「精霊王国の虚魔の反応が……“消えた”!?
一体誰が……!」
その報告は、すぐに王城へ伝えられる。
◆国王と騎士団長
「虚魔の反応が……消えただと?」
国王は玉座で身を乗り出した。
騎士団長ライオネルが頭を下げながら報告する。
「はい。
観測地点より、“浄化の光”が発生したとのこと。
あれは……おそらく、精霊王家の力……
もしくは──」
ライオネルは言葉を区切り、苦々しげに続けた。
「“我々が森で遭遇した少年”の仕業と思われます」
国王が驚愕する。
「少年……?」
側近が震える声で付け足した。
「その者は騎士団を数名まとめて吹き飛ばした強者。
黒髪の少年で、姫と行動を共にしていると……」
国王の目が鋭く光る。
「姫を誘拐し、王国の許可なく行動している者……
その少年は危険だ」
ライオネルは言った。
「ですが……姫は彼を信頼しておりました。
敵とは断定できません」
国王は数秒黙り、
やがて重い声で命じた。
「……勇者カインを呼べ。
彼には“黒髪の少年”を保護させよ」
(※保護 ≒ 実質的な拘束命令)
この決断が──
王国とリオの距離をさらに悪化させていく。
◆勇者パーティの崩れ始め
その頃。
勇者カインは、訓練場で剣を振り回していた。
「ぜぇ……っ、ぜぇ……っ!!
お、俺より強いやつなんているわけ……ない……!」
カインの呼吸は荒く、目は血走っている。
そこへ王城の伝令が駆け込んだ。
「勇者カイン様!
王よりの指令です!!」
カインは剣を振るのを止めずに返事する。
「なんだ……」
「“黒髪の少年の保護”を至急命じるとのこと!
もしかすると、姫を連れ去った者かもしれない、と!!」
ピタッ。
カインの剣が止まった。
「黒髪の……少年……?」
アイナ、ラミア、グラッドも集まってくる。
グラッドが恐る恐る言う。
「その少年って……やっぱり……」
「リオじゃねぇのか?」
沈黙。
アイナが言った。
「もしそうなら……
王国はリオを“危険人物”として扱ってるってことよ?」
ラミアは震えた。
「……でも……どうして……!?
リオはそんなことする子じゃ……」
カインは、怒りで顔を歪める。
「ふざけるな……!!」
訓練場の空気が凍りつく。
「俺より弱いはずのやつが……
姫を守り、虚魔を浄化して……
強者扱いされて……
それで俺が“追いつけ”とか……!!」
(追いつけ、じゃなくて“保護”なんだけど……)
誰も突っ込めない。
カインは叫んだ。
「リオォォォ!!
お前……何者になったぁぁぁ!!」
嫉妬、焦燥、劣等感、プライドが
全て暴れ回っている。
アイナは小声で呟く。
「ねぇ……カイン様、最近……
ちょっと様子がおかしくない?」
ラミアが頷いた。
「リオの噂が流れ始めた頃から……
ずっと苛立っていて……
自分を責めているような……」
伝令が指令を強調する。
「勇者カイン様!
王は“黒髪の少年の確保”を最優先と命じています!
姫の保護と共に、急ぎ森へ向かってください!」
カインは目を細め、つぶやく。
「……分かった。
俺が……行く」
「“無能だったリオ”なんかじゃない。
俺が勇者で……俺が最強だ!!」
剣を握る手は震えていた。
それは“怒り”ではなく──
恐怖だった。
◆エルダリア深部──虚魔の巣へ
一方リオとエルフィリアは──
枯れ果てた森を進んでいた。
風はなく、
音もなく、
ただ灰の霧だけが漂っている。
エルフィリアは俺の袖を握り、怯えながら言う。
「リオ……
ここ、昔は“風の広場”だったの。
緑がいっぱいで、精霊たちが踊ってて……
みんな笑ってて……」
そして今は。
灰。
亀裂。
黒い霧。
すべてが死んでいる。
『主。これが虚魔の力です。
この奥に“核”があるはず』
(核……!)
俺は剣を握り直す。
「行こう。終わらせるために」
エルフィリアは強く頷いた。
「うん……!
わたし……もう逃げない……!」
二人は、
虚魔が待ち受ける“王都の中心部”へと向かった。
知らぬ間に──
王国の追手と“勇者”もまた、
同じ方向へ向かっているとは知らずに。
大きな衝突は、もうすぐそこまで迫っていた。
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