第1話「追放された少年、世界樹に選ばれる」
「リオ。お前をパーティから追放する。」
その言葉は、あまりにも唐突だった。
王城の訓練場で、勇者カインは剣を肩に担ぎながら、あたかもゴミを捨てるかのような軽さで告げた。
「……え? なんで、俺が?」
「はっ? 逆に聞きたいんだけど。なんで自分が役に立ってると思ってんの?」
隣で魔法使いのアイナが鼻で笑う。
「リオくん、あなた攻撃も回復もできないでしょ? むしろ足手まといっていうか~」
僧侶のラミアまでもが、残念そうな顔を作って言う。
「ごめんなさいね……でも、勇者パーティには“華”が必要なのよ?」
「……俺、観賞用で入ってたの?」
「そこは気にするところじゃない!」
最後はなぜか全員で怒鳴られた。
もう訳が分からない。
けれど、決定は覆らなかった。
◆◇
こうして俺は、勇者パーティから追放された。
城門を出た帰り道、少しだけ胸がチクッとする。
(……俺って、なんだったんだろうな)
でも、不思議と涙は出ない。
むしろ――
肩の荷が下りたような爽快感すらあった。
「まあいいや……どこかで静かに暮らそ」
そう思いながら、適当に森を歩き続けていると。
風が止まった。
森のざわめきが、ぴたりと止まる。
「……え?」
次の瞬間、森全体がうっすらと光を帯びた。
木々の間に“細い一筋の光”が伸びている。
吸い込まれるように歩いていくと――
そこは、ぽっかりと空いた大きな空洞だった。
中央の石台に、“一本の剣”が刺さっている。
柄には、世界樹の紋章。
(なんか……すっごい、選ばれし者っぽい剣がある。)
近づいた瞬間、剣が淡く脈打った。
「うわ、なんか起動した!」
『ようやく来ましたね……』
どこからともなく、柔らかな声が響く。
『ずっと、あなたを待っていました。
“我が主”となる者よ』
「……え、俺?」
『そうです、あなたです。名前はリオですね?』
「名乗ってないんだけど!?」
『知っていますよ。あなたのことはすべて。
私は“真聖剣エリュシオン”。
本来、勇者に選ばれるはずだった存在です』
「勇者……あ、カインの?」
『いえ。あなたの、です』
「…………は?」
『あなた以外に誰がいますか?』
気づけば、剣はひとりでに抜けて――
光の尾を引きながら、俺の手へ飛び込んできた。
同時に、身体の内側で“何か”が爆発するような感覚が走る。
(うおおお!?)
光が全身を駆け巡り、俺は思わず叫んだ。
『これであなたは、“世界最強の素質”を解放しました』
「ちょ、ちょっと待って! 一体何が――!」
『追放されたのは、運命。
ここからがあなたの物語です、リオ』
光がゆっくりと収まり、呼吸が戻る。
握った剣は、温かかった。
信じられないが――
胸の奥から、不思議な力が湧いてくる。
「……なんだ、これ。すごい……」
『大丈夫。あなたは選ばれし者なのですから』
俺の人生の歯車が、音を立てて動き始めた瞬間だった。




