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【三章/開幕】アーカイヴ・レコーダー ◆-反逆の記録-◇  作者: しゃいんますかっと
第三章 記録者《アーカイヴァー》編

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86話 『魔法使い』

夜空を切り裂く二つの閃光。


石造りの集落を戦場として、銃声が辺り一面に鳴り響いていた。


ーーガンッ……!! ガンッ……!!!


シュン……ッ!!!


岩が欠け、土が局所的に舞い上がる。


お互いの弾丸は命中しない。


それは決して"当てられない"事だけが理由ではない。


カナンと銀髪の青年は、共に同じ思考をしていた。


(こいつ……)


(こちらを殺す気は無いのか……。)


敵意はあれど、殺気は無い。


だが、それを理解したところで、降伏を認める理由とはならない。


カナンは岩陰から銃口を向け、弾丸を撃ち出す。


反射させ、死角から足を狙う。


無力化としては、一発でも命中すれば十分だった。


相対する青年も、こちらと同じタイミングで銃口を向ける。


同じ片手銃。


けれど、放たれた"弾丸"はーー


ーーシュン……ッ!!!


光の矢のような"光線"だった。


「……ッ!!!」


それは、カナンの撃ち出した弾丸を微塵と化しながらこちらへと一直線に伸び、頬を掠めた。


「なんだ……。

なんなんだ! こいつの弾丸は……ッ!」


彼の使う銃はカナンの理応変換機構レベリアンと違い、リロードを必要とせず、即着速弾する。


早撃ち勝負のようなこの場面においては、この上ないほど厄介な能力だった。


「見たことない力を使ってきやがる……。


ーー"理層能力"か……。」


カナンは物陰に隠れながら、背後で砕け散った石の残骸を見つめた。


(クソッ……! 落下の痛みがまだ引かない……!


戦闘が長引けば、こちらが追い詰められるだけだ……。)


隠れ続ける反逆者の行動から優勢を察したのか、青年は落ち着いた声で通告した。


「ーー降伏するなら、怪我をすることはない。


……大人しく、銃を捨てろ……。」



…………。



銃声と閃光が止み、戦場へと一瞬の静寂が降り立つ。



…………。



だがその沈黙は、一つの銃声によって破られた。



ーードンッ……!



その臨戦状態を破った不意の一撃。



それはカナンによって放たれた

弾倉に残る、"最後の一発"だった。




「ーーこれで、満足かな……?」



けれど青年は、首を軽く倒しただけで、それを容易く躱してみせる。




「ーーチッ……!」



舌打ちと共に、反逆者は物陰から姿を表した。


木の影に隠れたカナン。


彼を月光は照らさない。


勝者と敗者を決定づけるスポットライトのように、月は銀髪の青年だけに光を落としていた。



カナンは腰にある"ホルスター"へ、手にしていたものを戻す。


そして、静かに両手を上げる。



服の袖口が僅かに揺れた。



「……懸命な判断だ。」



ーーザッ……、ザッ……!



青年は、銃口をこちらに突きつけたまま、ゆっくりと歩み寄ってくる。


「ーーそのまま背後へ振り返り、両手を頭の後ろに回せ。」


低い声が闇夜に響いた。


カナンは言われた通りに、がら空きの両手を後頭部に回す。


ーーザッ……、ザッ……!!


土を踏み鳴らす音が更に近づいてくる。


背後で命の気配を強く感じた。


「…………。」


反逆者はゆっくりと瞳を閉じる。


武器を手放し、微動だにせず、更には視覚まで塞いだ。


彼の行動は、劣勢な盤面を合わせると、誰が見ようとも"降参の意思表明"そのものだった。


打つ手はない。


逆転の糸口など存在しない。


勝利などとは程遠く、敗北が間近に迫る

ーー"絶望的な戦場"。


一見するとそれは、ただの降伏のような行動だった。


けれど彼は、簡単に敗北を受け入れるような男ではない。


何故ならカナン。


この男は……


ーー"反逆者"なのだから。




***



ザッ……! ザッ……!!


地面から鳴り響く足音。


迫り来るその音に、カナンの心臓が強く脈打つ。


青年の一歩一歩が、地ならしのように重たく感じられた。


(ーーまだだ……まだ早い。


もっと引きつけろ……!)


だが、沈黙の戦場で、反逆者は冷静に思考を巡らせていた。


(やつが真後ろに迫る、その時まで……。)


彼の狙いはただ一つ……


(気配を、逃すな……!)


上空で反射を続けるその、"弾丸"


ヒュン…ッ! ヒュン……ッ!!


この場を打開する"逆転の一手"を……


ーー確実に成立させることだった。



カナンが最後に撃ち出した銃弾。


不発に終わったかのように見えた一発は、未だに夜空で、星座を描き続けている。


幸か不幸か、今までの弾丸は全て青年の"不思議な力"によって消滅させられていた。


だがそれにより、反射する銃弾は今

相対する彼とって……


ーー"初見の能力"となっている。


わざと武器を手放し、相手を油断させた所で

宙から銃弾をぶち当てる。


(近づけないのなら、向こうから近寄らせればいいだけだ……!)


それが……反逆者カナンが計画した。


"逆転の一手"だった。



ーーザッ…。


足音が近づく。


(狙撃する場所は手元。)


カナンは深く息をする。


(威力は最小限。


目的はあくまで、やつの無力化だ……。)


額に冷や汗が滲む。


(ーー殺しじゃない……!)



ザッ……!!!


真後ろに気配が迫り、青年の輪郭が鮮明になる。


その瞬間ーー


……ゴーン、ゴーン。


"鐘の音"が鳴り響いた。


「……ッ!!!」


カナンにとって"それ"が、何の意味を持つものなのかはわからない。


けれど、そんな事はどうでもよかった。


青年の注意を逸らした。


不気味な重低音がもたらした事実。


ただそれだけが……


ーー欲しかったのだ……。



ビュウ…ッッ!!!



宙より舞い落ちる一撃。



一直線に落下するその弾丸に合わせ、カナンは名を告げた。



「撃ち砕け! レベリアン!!」



夜空を裂いた銃撃が、一雫の雨のように落ちる。



操弾と共に背後を振り返る反逆者は、青年の足を確認し、確信を掴む。


(気配は……ズレていない……!



ーー当たる……!!)




ーージュ…ッ!!!!



そう思った、刹那。



落下してきた弾丸は、青年の手元へと届く前に……


ーー"光"に溶かされ、霧散した。


「……ッ!」


背後に立つ青年。


一歩踏み込めば、間合いの届く距離。


その場に立つ彼は……


ーー銃口を、上へと向けていた。


「これが、君の"魔法"か。」


淡々とした声が響き渡る。


「そちらが、何かを仕掛けてくることは分かっていた。」


青年の声も瞳も、とても鋭く、とても冷たかった。


「銃弾を反射する魔法、不意打ちにはもってこいの能力だ。」



青年の口から告げられた一つの単語は、確かにカナンの耳へと届いた。


(魔法……!)


それは、反逆者にとって聞き慣れない言葉だった。


「……ッ!」


だが、"逆転の一手"を防がれた彼に、その謎を言及する余裕などはない。


ダッ……!!!


カナンは歯を食いしばりながら、青年へ向かい踏み込んだ。


「クソッ!!!!!」



しかし、銃撃など間に合うわけがない。


自身の策によって武器を手放した反逆者。


彼がホルスターから銃を取り、攻撃まで行う速度など知れていた。


あがくように左手を上げ、襲い来るカナンを見つめ青年は切り捨てるように呟く。


「抵抗をやめないのなら……


大人しくしてもらおう。」



彼は銃口を反逆者へと向けーー



「悪いけど……僕の勝ちだ。」



ーーシュン!!!



光の"魔法"を、撃ち出した。



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