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【三章/開幕】アーカイヴ・レコーダー ◆-反逆の記録-◇  作者: しゃいんますかっと
第二章 享楽者《ヘドニスター》編

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25話 『ノード・ルーク』


ノード・ルーク――

そこは〈スティーラー〉の物資を一手に集め、各地へ振り分ける“補給拠点”


倉庫群と鉄道のように繋がる輸送路。

資材や鉱石、食料、兵装までもが山のように積まれ、昼夜を問わず運搬人の足音が絶えない。


ノード・キングが“頭脳”であるなら、

ここは全身に血を巡らせる“血管”のような場所。


一度止まれば、戦線そのものが干上がる。

だからこそ厳重な警備が施され、外部には決して知られぬ影の要塞と化していた。


城のような高い塀と、大きな扉を前にカナンたちは止まる。


「……ルークって名の通り、まるで城だな。」

リオンが小さく息を呑む。


セラはフードの奥から、冷ややかに視線を投げる。

「……ここを落とされれば、前線は干上がる。

だからこそ――守りも固い。」


イヴは高い塀を見上げ、微かに肩を震わせる。

「……まるで、街ごと閉ざしてるみたい。」


その時――重厚な鉄扉がきしみを上げ、ゆっくりと開いた。

内部から吹き出した冷たい空気は、鉄錆と薬品の匂いを微かに帯びている。


扉の影から現れたのは、一人の少女だった。

前髪が長く垂れ、右目をすっかり覆い隠している。

残された左の瞳だけが鋭く輝き、闇の中で淡く光を帯びていた。


髪は白から黒へ綺麗なグラデーションで溶けていく。

その色合いは、まるで闇と光の境界を曖昧にするような自然さだった。

整った顔立ちに表情はなく、空気を支配する静けさだけが広がる。


少女は足を止め、姿勢を正すと、小柄な体に似合わぬ威厳を漂わせ、無駄のない所作で一礼した。


「――ようこそ。

お待ちしておりました、ウォーレンス様。」


澄んだ声は凛としていて、年齢に似合わぬ落ち着きを帯びている。


「……久しいな、ルシェ。」

それだけを告げ、互いに余計な言葉は交わさない。


「そちらもお元気そうで、何よりです。」

ルシェは小さく微笑んだ。


そのまま歩み寄りかけて、ふと背後に控える影へ視線を移す。


ルシェの瞳はカナンに留まった。

探るような光を宿していたが、何も問うことはなかった。


ただ静かに身を翻すと、裾を揺らしながら礼を添える。

「……ご案内いたします。兄様がお待ちです。」


その声音は柔らかく、けれど揺るぎのないものだった。

少女は一歩先を行き、城門の奥へと歩み始める。



城壁の奥、広い石畳を進むと、やがて正面に重厚な扉が現れた。

扉の上部には金属板が掲げられている。


――〈ルークセプター〉。


磨かれた文字は威圧感と同時に、この部屋がただの倉庫ではないことを告げていた。


ルシェは立ち止まり、扉の前で一礼すると、軽やかにノックした。


「兄様。お客人が来られました。」


髪に隠された右目の奥から、冷ややかで澄んだ声が響く。

やがて、扉の向こうから低い返事が返ってきた。


「――来たか。」


ルシェは一歩下がり、扉を開け放つ。

その仕草には、双子の兄に対する敬意と、客人を迎えるための礼儀が同居していた。


扉の先には、作戦室のような広間が広がっていた。

壁際には兵站を示す帳簿や物資の目録が整然と並び、ランプの灯りが書類を照らしている。

中央には重厚な机。その上には、襲撃対象とされる研究所の地形マップが広げられていた。

赤い印と無数の矢印が書き込まれ、次の作戦の輪郭を物語っている。


その奥。地図を背にするように、椅子に腰掛けた小さな人影があった。

ランプの光に揺れる影は、しかしその存在感だけで部屋全体を支配していた。


「……遅かったな、王子。」


その声は、意外なほど幼い。

澄んだ子供のような響きが、広い作戦室に落ちる。


奥に立つ影は、左目が髪で覆われており、残る右目で鋭くこちらを見据えていた。

妹と同じく、白と黒が混ざるグラデーションの髪は、星空を彷彿とさせるように、煌めく暗闇を演出するかのように綺麗だった。


その隣へとルシェが立つ。

双子はまるで、ドッペルゲンガーのように同じ外見をしている。

唯一違うのは、片目を隠す髪の流れのみ。

それが無ければ、見た目だけでは判別がつかないだろう。


ウォーレンスは小さく鼻を鳴らし、腕を組んだまま歩み出る。

「……招集の呼び掛けは昨日だ、むしろ早い到着だと思うがな。」


「こちらは昨日から、待っていたのだ。

愚痴の一つぐらいは、聞け。」

子供のような声で、彼は皮肉たらしく告げる。


小さくも威厳のある、堂々とした姿を、カナンたちは黙して見つめていた。

左右対称の双子は、不気味な静けさを漂わせながらも揺るぎない存在感を放っている。


そんな反逆者たちの視線を受けて、ウォーレンスは低く言葉を落とした。


「――彼らはルドとルシェ。

補給拠点〈ノード・ルーク〉を統制する、双子の管理者だ。」


名を呼ばれた二人は表情ひとつ変えず、ただ同じ動きでゆっくりと頷いた。

兄妹であることを示すように、右目と左目をそれぞれ髪で覆った姿。

まるで鏡写しのような二人は、重なり合う影のようだった。


カナンは思わず口の端を吊り上げる。

「……ちっちゃいのに偉そうだな。」


その言葉に、ルシェは怒りを踏み鳴らすように、無言で一歩前に出る。

しかしルドが小さな手を軽く上げ、制するように動き、質問を投げる。


「……おい、ウォーレンス。こいつらはなんだ?」


その声音は年相応の幼さを帯びながらも、問いかけというより、値踏みする鋭さを宿していた。


ウォーレンスは腕を組んだまま、面倒くさそうに返す。

「セラが連れてきた仲間だ。

拳銃野郎以外は信頼していいぞ。」


「はぁ!?なんだと脳筋王子!」

即座に食ってかかるカナンの声が響く。


彼らの言い合いは、次第に熱を帯びていった。


「――過去を持たぬものに、信念はない。

あったとしても、そんな薄っぺらい意志など、信用できるか。」

ウォーレンスの低い声が、重く響く。


カナンはすかさず噛みつく。

「信念なんざ関係ねぇ!

背負ってようが背負ってまいが、今ここで生き抜いてりゃ十分だろうが!」


机越しに睨み合う二人。

火花が散りそうなその空気を――鋭い声が切り裂いた。


「そこまでにしておけ。」


小さな影、ルドの声だった。

子供のような容姿からは想像できない、凛とした威厳が響く。


ルドは椅子から立ち上がり、真っ直ぐウォーレンスを見据えた。

「ウォーレンス、お前の実力は確かだ。だが――判断基準がやや極端すぎる。」


わずかに場が静まり返る。

ルドの声は落ち着いているが、その言葉には重みがあった。


「君のように、過去を背負って戦う者は確かに強い。

だが、それが“過去を持たぬ者が弱い”理由にはならない。


――何かを持たぬものだからこそ、何かを背負える可能性だってある。」


ウォーレンスの眉がわずかに動く。

カナンも思わず口を閉ざし、ルドの言葉を見据えた。


「……お前も、もう少し大人になるといい。」

静かにそう告げるルドの声は、年齢を超えた重みを帯びていた。


「……クソジジイが。」

ウォーレンスが低く呟いた。


その言葉に、ルシェの表情がわずかに歪む。

その背から立ち上がる気配は、冷たい殺気そのものだった。

彼女の片目の奥が鋭く光り、今にも腰のレイビアを抜きかねない緊張感が場を包む。


しかし、その殺気を前にしても、ルドは動じることなく片手を軽く上げる。

「よい、ルシェ。

今のは彼なりの愛情だ。」


「……愛情……なのかな……?」

リオンが思わず呟く。


ウォーレンスは腕を組み、そっぽを向いた。

「フン、そう思うなら好きに解釈してろ。」


ルドはわずかに口元を緩め、再び机の地図へと視線を戻した。

「――さて、本題に入ろうか。」


ルドが手を叩くと、ルシェがスクリーンを映し出し、話を始める。


ルドが手を叩くと、部屋の灯りが落ち、壁面に設置されたスクリーンが静かに映し出された。

その操作をしたのはルシェであり、彼女は無駄のない所作で端末に指を走らせる。


ルシェは一礼し、澄んだ声で告げた。

「――今回、襲撃対象とするのは〈エデン東側〉の外縁部、E-7地区に位置する建屋となります。」


スクリーンに浮かぶのは、古びた工業施設の外観。

その映像の上に、緻密な解析データが重ねられていく。


「研究所は事前に行った周波情報の解析により、

地下一階・地上一階・二階の三層構造であると推測されます。

生体反応は微小……小動物の類と思われましたが――」


ルシェは一瞬、目を伏せ、そして冷ややかに続けた。

「ミネ様から頂いた情報を照合した結果……その多くは生命を持たない“デブリ”である可能性が高いと判断されます。」


リオンが眉をひそめる。

「……つまり、死人が徘徊しているのか……。」


ルドが頷き、淡々と引き継ぐ。

「享楽者の研究所である以上、本体の出現は十分に考えられる。

加えて、凶暴化した個体、肉体改造を施された特殊デブリが投入される可能性も、否定できない。」


スクリーンには、靄が漂う通路の内部図が示される。

「また、内部には紫の霧が点在していることも確認されている。

快楽に呑まれぬ限り、洗脳の危険は少ないが――不用意に接触すれば命は保証されない。」


ルシェは画面に“吸引装置”の設計図を表示し、解説する。

「霧は専用の装置で回収を行います。

突撃部隊の皆様は、安全を第一に進行してください。」


続きまして、部隊の編成について。

まず――“霧の回収班”。

こちらは専用の吸引装備を用い、〈エクスタシア〉の回収を主目的とします。

指揮はセラ様、お願い致します。」


「……了解した。」

セラは短く頷き、藍の瞳をスクリーンに向けた。


「次に、先導隊。こちらは研究所へと先行し、地下区画の制圧を行う部隊です。

指揮は、ウォーレンス様、お願い致します。」


鋼のような眼差しの男が前へ出る。

「……任せろ。敵は全て殲滅する。


ーーだが、その図によると、地下はかなり狭いそうだな。

人員が多すぎれば、動きが鈍る。

逆奪者から二名、そして……リオン

俺の部隊は、四人だけで十分だ。」


唐突に指名されたリオンは、思わず顔を上げた。

「俺が……?」


ウォーレンスは視線を逸らさず、低く告げる。

「お前には“背負う覚悟”がある。

――俺と共に来い。」


静かな空気が場を支配した。


ルドが口を開きかけたその時、ウォーレンスが更なる指名を挟み、言葉を遮った。

「……カナン。」


鋭い眼光が、迷いなく彼を射抜く。

「お前は前衛部隊Aに配置する。」


「はぁ?俺が……?」

カナンは不満げに眉をひそめる。


ウォーレンスは腕を組み、苛立ちを隠そうともしない声で続けた。

「紛い物――口だけではなく、その身で証明してみろ。

お前に“信念”があるというのなら――その正しさを……!」


カナンは歯を食いしばり、言葉を返せずに拳を握る。

「……ッ!」


悔しさを押し殺すように、横目でリオンに近寄り、ぼそりと呟いた。


「リオン……もし隙があったら、あいつに一発入れてやっていいからな。」


即座にウォーレンスの声が飛ぶ。

「――聞こえてるぞ!紛い物!!」



ルドが軽く手を叩き、場を収めるように言葉を挟む。

「では――地下制圧はウォーレンス含む先導隊。 霧の回収はセラ隊。

前衛部隊A、B、Cは先導隊に続け。

残りの者たちは後方待機、突発的な増援や外部要員の応戦を担ってもらう。」


ルシェは小さく頷き、最後に言葉を結ぶ。

「以上が、作戦概要となります。」


ルドは椅子から立ち上がり、片手で机を叩く。

その左目を髪で隠したまま、静かに言葉を落とした。


「異論があるやつは言ってみろ。」


一拍の間を置いて、唇の端を吊り上げる。

「……直接、論破してやる。」


作戦室の空気が一瞬張りつめる。

挑発にも似た言葉だが、その声音には揺るぎない自信と覚悟が滲んでいた。




夜明け前、霧の立ち込める荒野に、黒鉄の杭と布を組み合わせた即席の要塞が築かれていた。



ノード・ナイト――大型作戦時にのみ建てられる臨時司令塔。


石造りの恒常拠点とは違い、その壁は薄く、木材や鉄板で無理やり補強されているだけだった。

だが、掲げられた旗と、出入りする兵士の数が、ここが戦場の「心臓」であることを示していた。


カナンは肩に銃を担ぎながら、入口の鉄扉をくぐる。


中では既に、イヴが作戦用の地図を眺めており、その隣に立つ二つの影――

右目を長い前髪で覆った少女〈ルシェ〉と

左目を隠した少年〈ルド〉。

彼らの指揮の下、作戦は緻密に練られた。


慌ただしい雰囲気の室内を眺めながら、カナンは呟いた。

「……ここが、ノード・ナイトか。」


そんな彼へ、ルドが顎を引いて応じた。

「仮設とはいえ、ここで全てを統制する。

敗ければ、この要塞もろとも潰えると思え。」


プレッシャーをかけてくるルド

苦い表情をするカナンに、ルシェが近寄り、淡々と告げた。

「ようこそ。カナン様

作戦開始まで、あと一刻です。

準備のお忘れがなきよう、ご注意を」



「……問題無い。」

カナンはそう言いながら、祈るように目を閉じるイヴを見つめる。



ーー彼女の声は淡々と響く。


「……断片が見える。

階段の先には狭い通路、その奥に複数の“影”……命は感じられない。

おそらく……デブリ。」


スクリーンに光の線が伸び、イヴの言葉に合わせて研究所の地図が形を成していく。


「さらに深層……霧が充満している区域……

ここから濃度が急激に上がってる。

進むのは危険……。」


淡々と告げるイヴの言葉に、場の空気が重くなる。


ルドが頷き、口角を上げる。

「……十分だ。

お前の情報があれば、突入時の犠牲は最小限にできる。」


ルドが、マントの裾を翻す。

「……イヴの解析で地図は十分に揃った。

残るはイレギュラーの対応のみ。」


彼はカナンの肩を軽く叩き、鋭い視線を向ける。

「前衛部隊Aは突入部隊の先鋒だ。

お前の役割は、地下から一階フロアの殲滅、及び安全確保。

ウォーレンス達の元へと、絶対に敵を抜けさせるな。


ルシェは振り返らず、淡々と声を投げた。

「戦況の把握と作戦統制は、私たちが行います。どうぞご気をつけて。」


イヴは一瞬だけカナンの横顔を見て、小さく微笑む。

「あなたなら出来る。

……私が導いた道を、信じて。」


ルドが顎をしゃくり、分厚い扉の向こうを示す。

「……さぁ行くぞ、カナン。

彼らはもう、待っている。」


重たい扉が開き、鉄と油の匂いが混じった空気が流れ込む。

そこにはすでに、武装した逆奪者たちが集結していた――。


ルドが鋭い声で名を呼ぶ。

「……トルヴァ。」


呼ばれた青年は、集団の中からすぐに振り向き、駆け足でこちらへ近づいてきた。

鍛え上げられた体つきに、迷いのない足取り。

長く尖った大槍を背負う彼は、呼び掛けに返答し、一礼した。


「ルドさん、いらしてたんですね! 何かご用命でしょうか……?」


ルドは小さく頷き、隣のカナンを顎で示す。

「硬い口調はよい、トルヴァ、

カナン、こいつを君のチームで使ってやってくれ。」


青年は口調を崩さず、返事する。

「わかりました。お任せ下さい。」


トルヴァは指さされたカナンへと目を向けた。

その眼差しには敵意も猜疑もなく、ただ仲間として受け入れる意思がある。


「初めましてカナン。

僕は前衛部隊のトルヴァ。

よろしく頼むよ。」

流れるように手が差し出される。


「……」


少しの沈黙の後、カナンはその手を強く握った。

そして泣いた。

「俺を受けいれてくれるなんて、お前良い奴だな……」


トルヴァは一瞬言葉を失い、困ったように笑う。

「は、はは……任務前に泣く隊員は初めて見たよ。」


周囲が少しざわめく。笑いがこぼれる。

だが、その場の緊張が少しだけ和らいだのも事実だった。


「では、カナン……ここは任せた。」


ルドは踵を返し、背を向けながら最後に、言葉を投げる。


「……あの脳筋王子に、お前の“正しさ”というのを、見せてやれ。」


重厚な扉が閉まる音が響く。

その瞬間、前衛部隊の空気は、笑いから一転して戦場のそれに変わっていた。


カナンの瞳はもう濡れてはいない。

ただ鋭く、これから始まる戦いの先を見据えていた――。



「――分かりやすく言うと、戦士のグループかな。」

前衛部隊Aに合流したカナンは、所定の位置で待機しながら、部隊について、トルヴァに問いかけていた。


「俺たちは四、五人ほどでグループを組んで、普段は偵察や巡回をしてる。

その中でも、大規模作戦で“先陣の次”を切るのが前衛部隊だ。

一応……僕がこのA部隊を任せてもらってる。」


「つまり、部隊長ってことか。」


「その言い方はちょっと恥ずかしいな。

僕には、ウォーレンスさんみたいな実力は、ないんだけどね。」


トルヴァが照れ笑いすると、周りの仲間たちが一斉に首を横に振る。


「何言ってるんだ」


「お前がいるから俺たちは戦えるんだろ」


その暖かな否定が、彼を自然に包み込んでいる。


「……ありがとう。君たちのためにも、もっと強くならなきゃな。」

トルヴァの声には、仲間への誓いが宿っていた。


カナンは小さく呟く。

「お前は……十分、強いよ。」


「……え?」

トルヴァが一瞬きょとんとし、すぐに照れ隠しのように笑った。

「なんだい、それ……励ましかい? ありがたく受け取っておくよ。」


仲間たちの笑い声が、緊張を和らげるように広がった。



ジジ、ジジジ……。

その時、渡された無線機から、澄んだルシェの声が響いた。


『――通達します。

全隊の配置完了を確認。

まもなく、作戦を開始します。』


短い沈黙を挟んで、今度は低く鋭いルドの声に切り替わる。


『目標は――享楽の霧〈エクスタシア〉のサンプル回収だ。

ウォーレンス部隊を先頭に、A班から順に突撃せよ。

無理な戦闘は避け、異常発生時は即座に報告しろ。』


一拍置き、さらに強く言い放つ。

『これは命令だ。――決して死ぬな。』


沈黙を切り裂くように、ルドの声が全域に響き渡った。


『享楽の霧〈エクスタシア〉回収作戦――


開始!!』


夜の闇を突き破るように、号令の合図が鳴り、各部隊が一斉に動き出す。

鉄の匂いに混じって、武器の金属音が作戦の始まりを告げた――。


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