レオと虹の根元
小さな女の子が向こうの道を一人で歩いていた。
街の中心部から外に向かって歩いているが、どう見ても一人。
方向的にもしかしたら行き先は一緒かもしれないと思って声をかけてみるとやっぱりその通りだった。
女の子はアリスというらしい。
自分も名乗ってからお互いに自己紹介をしたけれど、年齢を聞いて驚いた。
アリス、六歳なのか……。
僕の近所の六歳の男の子はもっとこう、元気いっぱいの子ども、という感じだが、アリスは雰囲気が大人びている。
名乗りあって握手を求める六歳児がいたことに僕は軽く衝撃を受けていた。
とは言え、六歳は六歳。
体力が無限にあるわけではないだろう。
とりあえず、森までは体力を温存するべきだと僕は主張した。
僕よりも十近く小さな子が森まで歩くのは大変だろう。
会いたい人に会えても体力を使い果たしてしまっていたら寝てしまって会えないかもしれないし、帰りの道だってある。
遠慮するアリスをなんとか説得して、僕が連れてきた馬に一緒に乗ることになった。
「……実はちょっとだけ疲れて脚が痛いなって思ったところだったの。ありがとう」
アリスが前、僕が後ろから支えるようにして馬に乗り、お互いの顔が見えなくなったところでアリスがそう言った。
ちゃんとお礼の言える良い子だなと思った。
誰かと一緒に馬に乗るのは慣れていないので馬は走らせず、危なくない速さで歩いてもらう。
「馬に乗ると景色が違うのね。高くて見晴らしが良いわ」
少しだけ興奮したようなアリスの言葉が、自分の過去の記憶と重なる。
僕も同じようなことを言ったな、と懐かしいような寂しいような気持ちになってしまったので声が思ったよりも沈んでしまった。
「……そう、だね」
「レオ? 元気ないの? 大丈夫?」
僕の方を見ようとしてか、後ろを振り返ろうとするアリス。
「ありがとう。アリス。大丈夫」
バランスを崩すと危ないから、急に振り返らないでね、と付け加える。
でも、と言うアリスに伝える。
「ちょっと昔のことを思い出しちゃったんだ。僕の会いたい人との思い出をね」
「そう……レオの会いたい人って誰なのか聞いても良い? 良かったら思い出も聞かせて?」
アリスに言われて少し悩んだけれど、じゃあ聞いてもらおうかな、と僕は話し始めた。