アリスと虹の根元
短編で一つにまとめようか悩みましたがわけてみます。
長くならずに完結しますのでもし良ければ読んで頂けたら嬉しいです。
「一人で過ごす夜ってこんなに寂しいものだったのね」
星のきれいな夜。窓から外を眺めて一人、声に出す。
ずいぶんと暖かくなってきたはずなのに何となく寒い気がして、布団の上で小さく座り、毛布をすっぽりとかぶって頭だけ出しているのは六歳のアリス。
アリスの家族は一週間前から父だけだ。
その父も今日は夜勤の仕事に行っていて留守。
だからアリスは今、一人でお留守番中だ。
「明日こそは虹が出るといいな」
虹が出たらきっと会える。
学校もしばらく休暇でちょうど良い。
アリスが一人過ごした夜からさらに数日後、ようやく念願の虹が出た。
大きくて立派な虹だ。
「この虹は……ちゃんと森に根元がある!」
窓からしっかり確認したアリスは、念のため外に出てもう一度確認する。
うん、やっぱりちゃんと森から出た虹だわ、とつぶやくと、急いで家に引き返す。
父は今日は昼間の仕事で留守だ。
「にじのねもとにいってきます ありす」
覚えたての字でなんとか手紙を完成させると食卓の父の席に手紙を置いておく。
万が一、父が少し早く帰ってきて心配したら大騒ぎになるので困る。
もともと心配性だった父は、母が亡くなってからさらにうるさい。
行き先も書いたから大丈夫かな、とアリスは準備していたリュックを背負って出発した。
小さな足で頑張って歩き続け、町の中心部を抜ける。
中心部を抜けて閑散としてきたあたりで別の方の道から馬を連れた若い男が来た。
一人でいるアリスに目をとめるときょとんとした顔をする。
「こんにちは。お嬢さん。あなたは一人でどこに行くの?」
「虹の根元に行くのよ」
若い男は、あぁ、と言った。
「誰か、会いたい人がいるんだね」
「ええ。お母さんに会いに行くの」
それを聞くと男は泣きそうな顔をした。
「……そうか。僕も虹の根元で会いたい人がいるんだ。一緒に行ってもいいかな?」
若い男の申し出にアリスは少し考える。
怪しそうな人ではない。アリスの勘はよく当たるってお父さんもお母さんも言っていたのでそれは問題ない。
何よりこの人も行き先が一緒なのだ。馬もいる。
そう考えるとすぐに頷いた。別に、馬に乗ってみたかったわけじゃない。疲れてるわけでもないわ、とアリスは心の中で言い訳をしながら応える。
「いいわよ。私はアリス。よろしくね、お兄さん」
アリスは手を差し出す。
小さいながらも大人のような雰囲気のあるアリスに男は笑いながら握手に応じた。
「ありがとうアリス。ぼくはレオ。よろしくね」