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82話 建国宣言

 エルナンド国の復興を始めて約半年が経過。レイは城で政務……はアロスの姫たちに投げて、アルトたちと共に賢神の試練に挑んでいた。


 吹き荒れる風の魔法。視認できるほどに濃い緑色の魔力が鉄色の壁と地面をえぐり、奥に鎮座する人型のゴーレムに殺到する。

 全て直撃。アロス国が有する砦を更地に出来るほどの魔法。鉱物として性質が強いゴーレムとはいえこれで撃破できる、はずなのだが。


「無傷かよ!?本当に魔力を弾く性質を持っている鉱物で出来てるぞ、あれは!」

「神話的な誇張じゃなかったってわけか。じゃあ私でも無理ね。アヤメちゃん!」

「分かった!準備できてるよ!」


 賢神の試練では一定の階層ごとに守護者と呼ばれるボスがいる。通常の階層の魔物と異なり彼らは撃破しなければ次の階層には進めない。

 これは賢神から贈り物を受け取る資格があるのかを確かめているのではないかと学者たちは言っている。知識は扱いを間違えれば恵みではなく災いに転じるため人類の成熟具合を戦闘力によって診断しているのだとか。


 この定説になっている考えが正しいならが賢神は判別方法を間違えている。一握りの英雄は人間とはいいがたいほどにずば抜けて強いのだから。


 アヤメは腰のポーチから極めて頑丈な糸を取り出す。人間の胴体ほどの太さの糸だ。まるでつり橋を支えるワイヤーのよう、頑丈さもA級冒険者の前衛職でも千切れないほど。レイが呼び込んだ鍛冶師たちに大金をつぎ込んで作らせたとっておきだ。


 アヤメが右腕に闘気を集中させて弦を引く。バキバキとまるで金属が軋むような音がした。

 番える弓と矢も特注品だ。ララクマ帝国の皇帝が土産として持ってきた星の無い夜色の星鉄を使って製造された弓矢。これを巨人の一撃の如き剛力を以て打ち出す。


 【大地穿ち(だいちうがち)】。それはエンギル家の開祖が空から落ちる隕石が大地を割った光景を見て考案したという一撃。アヤメがギルメから教わった弓術の武技の中でも特に一点突破の技。弦の振動は大気を震わせ矢が放たれた衝撃波が壁まで届いた。

 レイとアルトを含めて魔力を用いない技の中では最大の威力だ。ゴーレムの胴体をぶち抜いて機能を停止させた。


『第五の試練クリア。挑戦者側の勝利。次の試練が解放されます』


 こうして五十層、第五の試練をクリアした三人は次の階層へ続く階段の手前にある報酬部屋に飛び込んだ。

 アヤメとアルトは早速ダンジョンカードを確認する。最近、一般の冒険者や騎士も挑戦させて気が付いたのだが、賢神の試練を攻略して貰えるポイントにはいろいろな条件で増えるらしい。その一つは最初に攻略すること。まだあまり使っていないがこれだけのポイントがあれば飛行船やマジックアイテムのような古代の文明で作られて道具はもちろんの事、武具も交換できる。二人は更新されたカタログを見ながら盛り上がっていた。


「よっしゃあ!期限に間に合った!」


 そんな二人を置いてレイは宝箱を片っ端から開け、目当ての元を見つけ飛び上がるほど喜んでいた。


「レイ、そんなに喜んでどうかしたの?」

「なになに!?珍しい武器でも…………ま、また設計図なのね」

「そう!これが欲しかったんだ!街の設計図!!!!!これで俺が作った急造のじゃなくて、もっと機能的な街が作れるぞ!

 じゃ俺はいったん帰るから!」

「はいはい。じゃあ私たちは次の階層を下見してるからね」

「ご褒美ちゃんと用意していなさいよね」


 なんだまた私たちの分からないものかと呆れた顔を二人を気にすることもなく、レイは急いでエルナンド国の王城に帰っていった。





 エルナンド国は未曾有の大好景気に突入している。

 一度は魔物の氾濫と隣国からの侵略行為によって滅ぼされた。民はほぼ全員が死に絶え王族も逃げ出した。しかしレイがこれは幸運だと大量の物資と希望者と奴隷になっていた王族を連れて再興、都市国家だったエルナンド国は衛星都市群に囲まれた領域国家になった。


 衛星都市群にはそれぞれ特徴がある。例えばこの都市は招いた奴隷都市サリオスの領主の意見を聞きながら巨大な商業都市として成長させた。都市全体が富裕層向けのサービスが多くやってきた貴族たちは王都かこの商業衛星都市のどちらかに宿泊している。

 何よりの目玉は、レイたちが開発した新商品を購入できるオークションだろう。


 オークション会場はサリオスにあったものを参考にしており音楽のコンサートホールに近い。正面奥の壁が商品を見せる舞台で、手前の半円が客席。床に椅子を並べた一般席、中くらいの高さにある席、一番高く一番舞台が見やすい貴族向けの席。もちろん設備の全てはレイがコネを使ってアロス国の職人たちに作ってもらったもので参加者から不満の声は今のところ聞こえてきていない。


「あれが五界の魔物か……強そうだ。確かレベルは最大で三十もあるのだとか」

「一般的に人間と魔物は同じレベルなら魔物の方が強いと言います。つまりあの召喚石を使って魔物と契約すれば、一流の騎士以上の戦力を得ることが出来るということ……これは、購入者に制限がかかるのも納得ですな」


「召喚魔法を実用化するとは、さすがレイ様ですね。どれほどの学者や魔導士を招けばこんなことが出来るのか」

「いやそれにしてもまだ半年は以上です。おそらく事前に研究していたのでしょう」

「【賢神の試練】の第四の試練をクリアした時に設計図を入手したと聞いていますが……それにしても偉業だ。これはいくらかかっても購入したいですな」

「そちらは王家への貢物を探しているのでしたかな?ならば他のものでもいいのでは?」

「まさか。これほど珍しいものはありません。この国は今は五大国すら注目しているのですからな」


 オークションに参加している豪商や貴族が舞台に召喚されたライオンのような魔物を見て盛り上がっている。

 今日の目玉はレイがユニリンと招いた召喚魔法の使い手と協力して作ったもの。五界から魔物を召喚して使役するマジックアイテム、通称、召喚石だ。


 魔法を構築する術式を人体にすら刻めるなら道具にも当然刻める。元は道具に刻む術式を人間にも刻めたらいいなという思いが始まりなのだから当然だ。

 召喚魔法は両者の同意があれば空間魔法の中で飛び抜けて難易度が低い。それでも実用化されていないのは空間魔法の使い手が少なすぎる点と、根本的に魔法とは門外不出の秘術だからだ。

 しかしレイには背負う家も宗派もないので、金で招いた魔法使いたちや学者たちから知識を買い取り秘術を手に入れることが出来た。


 元々召喚魔法のマジックアイテムは考えていなかった。しかし竜界に繋がる竜人と天界に繋がる天人、そして地獄界に繋がる吸血鬼(魔人族の一種)、幻獣界に繋がる猿人族の奴隷、そして精霊界に繋がるエルフが手元にいるのが運命の別れ目だった。

 遥か昔に賢神は世界を再構築したが、その際に人間が暮らす一つ目の世界と精霊や竜や天使が暮らす二つ目から六つ目の世界に分けた。一つ目の世界が全ての世界の中心にあるため二つ目から六つ目の世界を五界と呼称する。レイの目をもってすれば僅かな痕跡から五界への道筋を見つけ、門を開くことも不可能ではなかった。これいけんじゃね?という思いつきを実行してよかった。

 レイはこのやり方で十回に三回は上手くいっている。


 おかげでそれなりのコストはかかったがかなり早い段階で弱い魔物だが人間界に召喚することができた。賢神の試練で入手できる素材を組み合わせることで実質的なコストは無料だ。これをアロスの姫様たちに行ったら「休みの日でも働かれたら私たちも休めないんだけど」「自分の働きと知識をタダと考えるのはやめなさい」と怒られたが、中止にはされなかったので問題は後回しでいい。

 しかもそれぞれが五界に適応した魔物なので特殊能力を持っている。召喚石に服従の契約と魔力が切れた時に自動送還される形式を取ることで安全面もクリア。これは売れる。レイたちは確信した。


 加えて賢神の試練で入手した設計図も大量に手に入り飛行船の量産を始めたことも好循環に拍車をかけている。全てレイたちが自力で作ったものだが勝手に「たぶん賢神の試練で手に入れた知識なのだろう」と判断してくれた。

 五界からレベル1から30の魔物を召喚して使役できる召喚石。お値段はザザラザ商業連邦から招いた商人の意見を聞いてレベル30なら十億ジェリーからオークションがスタートだ。戦闘力としては一流の騎士が五人いれば倒されてしまう程度なので強気な値段だと思ったのだが、なんとこの一流というのは五大国の基準なのでレイの認識よりは遥かに水準が高かったのだ。


 加えて今最も注目の国が作った新商品で召喚される魔物たちも魔物というには精霊型や竜型、幻獣型と見た目もいいため飛ぶように売れ、資金源として非常に優秀だ。


「どの召喚石も一つに二十億出す。レベル1の魔物も育てれば強くなるのだろう?ならば買うとも」

「ならばこちらは二十五億だ。これほど珍しく実用性もあるマジックアイテムは全て我が国に持ち帰らせてもらう」


 何より金で力が手に入るという理由で多くの者が飛びついた。

 この世界ではステータスシステムという恩恵のおかげで鍛えれば鍛えるだけ強くなれるが、そうはいっても限界はあるし、何より誰もが命を落としかねない厳しい修行に打ち込めるわけではない。貴族に個人の武力が求められ、使命と言い張り厳しい修行に打ち込んでいるのはやりたがる人が少ないからだ。傭兵の数にも限りがあるし、何より傭兵は根本的に信用できない。

 ならばと多くの者が飛びつくのだった。





「見てくれこと獲物を!俺はこんなでかい魔物を倒したんだぜ!?風の魔法ってのは切れ味がいいんだ!」

「へっなんだい大きいだけじゃないか!それよりこの甲羅を見てみろよ!こんな硬い魔物を俺は倒したんだ!土の魔法ってのは強化魔法も沢山の種類があってな、俺は剣士だから相性が良かったんだ」

「なに!?じゃあそっちもやってみるか!ありがと!」

「へへっ、お礼ならレイ様に言うべきだろう」

「そうだな。今度賢神様の神殿にレイ様の像も作るらしいし、俺たちもボランティアで参加するか」


 衛星都市の中でも冒険者が多い都市では今日も祭りのようににぎわっていた。

 誰にでも魔法と武技が使える恩恵を授けてくれる神のような賢者たち。無限にも思えるほどの魔物溢れる大魔境。この二つの要因のおかげで冒険者にとっても最も熱い場所といってもいいほどに栄えている。


 この世界の平民たちは基本的に親と同じ仕事を継ぐ。冒険者たちは継げない三男以降、それでも、もしくはだからこそ頑張れば頑張るだけ上に行けるという環境が彼らのやる気を引き出し、毎日のように彼らは大魔境に潜っていた。

 それに誰にでも魔法と武技を授けてくれるといっても最低限だ。もっと貢献度を積めばより強力な魔法や武技を授けてくれるというのだから頑張らない理由がない。


 最近では独自のパーティやクランが発展し大魔境に独自の街を作り始めているらしい。何とかひも付きの冒険者を作り監視させたいものだとアロスの姫たちは考えている。


「……くそっ、無理をしすぎたか」

「……仕方ない、治療院に行くか」


 しかし全てがうまくいくわけではない。魔物から不意を突かれ腕を負傷した冒険者たちはシーの恩恵による応急処置を済ませると治療院に向かっていた。

 基本的に何かを破壊するよりも何かを創造・修復する方が難しい。回復魔法は非常に高度な技術なのだ。レイとシーが配った魔法と武技のおかげで全ての人が回復魔法を使えるようになったのだが、切り傷や打撲、擦り傷よりも上の傷、中身が見えるほど深い傷は治療院に行くのが常識になっていた。


「また来た。こっちに引っ越せば楽にお金が稼げると思ったのに話が違うじゃないのよー……」

「回復魔法の精霊武技?は難しいですからね。私たちの出番ですよ」

「でもでも、みんな軽い怪我は自分で治せるようになったせいで難しい治療が多いのよ?やってらんないと思わない?キリエちゃん」

「それだけ皆さんが失敗を恐れずに困難に挑んでいるということです。素晴らしいことではありませんか。アリーゼさん、以前のように手を抜くことは出来ませんよ、この後は吹き出しと薬膳料理の仕込みもあるんですから」

「うへー真面目なちびちゃんめ……」


 治療院の治療師たちも希望者とレイが引き抜いて来た精鋭がそろっている。治療師は金銭を対価に治療行為を提供する施設だが、レイは全ての人が前を向いて生きていける世界を目標に掲げ、そのために何度失敗してもやり直せる制度に力を入れているため、治療院への公金は非常に多く投入している。

 治療師たちへの給金と予算の多さはその表れだ。具体的には治療院の利用料は全て公金から負担される。治療師たちは空いた時間で健康に良い食事を作り吹き出しを行っている。おかげで治療院なのに半数は料理人だ。


 食材も生命魔法の使い手と水魔法の使い手、光に火に土に風に希少な時間魔法の使い手まで投入しかなり研究を重ねているためいくらかかっているのか考えるだけでも恐ろしい。

 ちなみに炊き出しの薬膳料理は正直に言えば味は良くない。しかしこっそりやってきた価値を見抜ける貴族たちは腰を抜かすほど驚いていた。


「これが全てアロス王の……ではなくレイ様の行いなのか。酔狂な」

「うーん、しかしこの国では庶民でさえレイ様とシー様のお陰で魔法と武技を誰でも使えるという絶大な恩恵を得ている。我々の祖国とは同じ物差しで測るべきではないのでしょう。

 ……いずれ破綻するのではないかと嫌な予感がしますが、まだ半年でこれほどの成果が出ているなら、ここは素直に讃えておきましょう」

「……それもそうですな。しかし不味いな」


 平民と貴族が同じ釜で作った汁物を飲んでいる。その光景は平和の一つだった。





 レイが賢神の塔第五十層をクリアした翌日、エルナンド国の王都の城の前にある貴人を中心にした一団がいた。

 門番たちは不審に思い近づくと、その貴人は大声で宣言した。


「我はエルナンド国の正当な王である!門を開き、レイ殿に合わせよ!!」


「驚いた。本当に今日来たのか」

「少々お待ちを、ちょうどレイ様がいらっしゃる」


 その宣言にすぐに理解した。小声で会話し下がった後、少しして門が開き、城に招かれた。


「失礼す――!?」


 部屋に入ると彼は思わず一歩引いてしまった。部屋の真ん中にレイがいるのはいい。他にも何名かいるのもいい。予想通りだ。

 しかし、その他の何名かの威圧感に圧倒されたのだ。田舎の小国の王子である彼には遭遇したことがない、歴戦の王の気配に。


「どうも、ゼナテナ・エルナンドさんですね。私はレイといいます。今は私がこの国のトップです」

「……そ、そうだ。私はゼナテナ・エルナンド。この国王家の生き残りだ。エルナンド国の生き残った民たちと祖霊のために活動している。我々の要求は一つ、この国の玉座を返していただきたい」


 ゼナテナはまっすぐにレイの眼を見据えて要求を突きつける。田舎の小国で生まれた王子、まだ三十歳程度の王としても若者。しかし国が滅び、嘆く民たちとの放浪生活という苦境の中で彼は成長していた。


 そんな彼にその他の何名かこと、ガロリアス・ララクマ皇帝がおかしそうに嗤う。


「国を守ることもできず、逃げた負け犬の王にしては吠えるな」

「なっ……ぐぅ」


 背後に控えていたエルナンド国の昔の重鎮、そして彼らを助けていた国の使者が力なく呻く。

 『弱い』という罪を知っているからだ。しかしゼナテナだけは変わらず引かずに見つめ返す。


「いいですよ」

「――えっ、今何と?」

「ですから、いいですよ、と」


 レイの言葉にあっけにとられる。彼らの常識に照らし合わせれば絶対にありえない言葉だからだ。


 王とは国の所有者にして国の守護者。『負けた』という事実は絶対的に汚点であり、先に生き残りの王族を連れてきて復興を行っているレイの正当性を崩す力はないと自覚してたからだ。

 それでも彼らがここに来たのは、自分たちの支持基盤でもある民からの不満の声と、エルナンド国が既に復興しつつあるという事実によって支援国からすら見限られつつあるからだ。


 今のレイは絶対的に正当だ。それは王族を連れてきたからではない。国を守り、発展させるという絶対の条件を満たしているからだ。

 それに異を唱える彼らはこの場で首を斬られても非難するものは少なく、そして弱いだろう。


 しかし、レイにとってはこの国の所有権はどうでもいいことだ。


「もとより譲れないのは賢神の試練だけです。ナランナにも迷惑を掛けましたし、お返ししましょう」


 ゼナテナの反応を無視してレイは広げていた地図を指差す。

 これはグレイアス大陸の描いた大まかな地図だ。北部に五大国を含めた人間の領域、南部に中小国家が乱立する南部、そして間の中部に広がる大魔境。これまで使用されていた通りの地形だ。


 今は大魔境の中央を上下に貫くように線が引かれている。レイたちが計画している大運河だ。その中央、運河の傍に城のミニチュアを置いた。


「この国の復興はあくまで練習に過ぎません。この国で得られたデータをもとに、運河の中継地に国を新しく作ります。都市の設計図も手に入りましたからね」

「手伝うから後で俺たちにも見せてくれよ、賢神の試練で手に入れたっていう賢神の知識の数々。そのために来たんだからな」

「もちろんかまいませんよ。当然の返礼です、ガロリアス陛下。俺はまた運河のために削岩したり海水を引いたりと忙しいので姫様たちにその辺はやってもらいますが。

 というわけで、グレイアス大陸の中央に運河を引いて、その真ん中に交易国家レグディを建国します。手伝ってくれた国や人には賢神の試練で手に入れた知識と俺たちが作ったマジックアイテムを渡します。皆さんの意見はいかがですか?」


「開拓した魔境は開拓者のものになるのがこの世界の基本的なルールだ。レフロート聖王国無限光第一翼、【純白】のキアナスとこの聖王様からの書状を以て、もちろん承認しよう。そして私個人としても、人の世の拡大と人類の成長に祝福を」

「こちらも同じ考えだ。ザザラザ商業連邦裏帳簿の一枚目、【黒い墨汁】のマーキッドと一銭家の当主からの書状だ。ただ金儲けに関しては私たちの方が優れていると考えている。マジックアイテムは後日買うから不要だ。その代わり意見を聞いてもらいたい」

「同じく、美しい人。同じ芸術を愛するものとしてあなたを賛美しましょう。私、連立回廊一座【虹】のリュアレッタとフライテンの王家の書状を以て承認する」


「知っているわ、こういうのはちゃんと手順を踏んで紙に残すが大切なのよね。アロス国国王ゲオルグ・アロスの名代として、ローレンティア・アロスが承認します」

「同じく、アロス国国王ゲオルグ・アロスの名代、アンリム・アロスが承認します。おめでとう、レイ」


「皆さん、ありがとうございます。私はこれからも夢と理想の世界のために邁進します。しかし、まだまだ私も若輩者なので無理だと感じたら微調整しましょう。遠慮く言ってくださいね」


 ガロリアスのように部屋のいた面々が当然のような顔で返答した。無知を示す自戒の白色の鎧を着た者、全知を示す傲慢な黒色の戦衣で全身を包む者、既存の色が象徴する意味を放棄しカラフルな色で自分を染めた者。全員が今のレイより強い五大国の猛者たちだ。

 これを以て、グレイアス大陸の北部と南部を繋ぐ運河を運営する交易国家レグディの建国が正式に承認された。


(……これは、大人しく逃げるべきだったかな。それともナランナに頭を下げに行くべきか)


 五大国の重鎮たちが一堂に会し新国家の建国を承認する。その中心にいるのはまだ十歳の少年だ。その異常な光景に、来る日を間違えたなとゼナテナは帰りたくなっていた。

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