80話 賢神の塔
エルナンド国は常識的に考えてありえないほどの僅かな時間で急速に復興した。
その光景はもはや修復ではなく新しい創造だ。かつて王宮があった王都は建物の配置はほとんどそのままに、増築と内装の改造を繰り返し国が亡びる前よりも強固かつ発展した。周囲に建造された衛星都市の数は十五。大きさは王都と同程度でありながら人口はそれぞれ開拓者が約一万人。この世界では小さい街は人口千人程度であることを思えば数だけならかなりのものだ。
魔物が住み着いていた都市の奪還。安全な拠点の作成。逃げ延びた王女の救助。アロス国から引き出した大量の食糧を始めとする援助物資の確保。
これだけでも十分に偉業と呼んで差し支えないが、しかしこれだけならばまだ常識の範囲内だ。レイは五大国の一つであるアロス国の全面的なバックアップを受けている。同じく五大国の一つであるララクマ帝国へも顔が利き邪魔されることがない。犬猿の仲だったララクマ帝国を警戒しなくていいという点はアロス国の歴史上で類を見ないほどに好条件だ。
この前例がないほどの好条件を整えたこともレイの功績の一つだが、その上で、ここまでなら常識の範囲内なのだ。ボールを投げるスタート地点が高いから飛距離も伸びた、それだけの話。
レイがエルナンド国の復興事業の先頭に立ったからこそ実現できた偉業はここからだ。
エルナンド国の王宮は既に完璧以上に修繕された。魔獣に破壊された箇所は修復し、かつてエルナンド国を象徴する紋章が飾ってあった場所にはアロス国の紋章を配置。内装もアロス国風に変え第一陣の飛行船に同乗していた使用人たちの手で王侯貴族が来ても失礼がない程度には整った。
これだけ改造すれば、もし突然アロス国の重鎮がやってきても不安を感じることはないだろう。
一方、エルナンド国の復興事業に参加している政務官や貴族たちは大勢いるが、実のところ彼らは具体的にどういった手順で、どういった目的で、どのような最終ビジョンを実現するのか知らなかった。レイが速さを重視し説明を後回しにしていたからだ。貴族家の当主や職場の上役からの指令に逆らず、もしくは出世の好機と捉え彼らはやってきた。
現地に到着した彼らは安堵し、内政面に高い評価を付けた。なぜなら、政務は全てアロス姫たちが担うことになったからだ。
「ローレンティア様、エルナンド国の復興は軌道に乗ってきました。当初の想定に反して王都は一瞬で修復され開拓民もレイ様が創造した衛星都市に住み、まだまだ余裕はあります。まだ形だけとはいえ、エルナンド国の復興、という目的ならば既に達成されていると言ってもいい。ここからの失敗はしようと思っても不可能です。ですのでそろそろ他の五大国からの融資も受けるべきではありませんか?レイ様はエルナンド国の北へ北へと大魔境を掘り進めていますが、この事業で間違いなく出る多大な利益を独占すると他の国々からよく思われません。取り分を渡すことを条件に協力を得る時期だと愚行します」
「まだ早いんじゃない?ララクマ帝国とは最近仲良いけど他は良くないし」
「私も姉さまと同じ考えです。今レイが住民全員分の魔力の波長を調べて戸籍を作っているから約一年は後。来年度の春を目安にすると通達してください」
「ローレンティア様。最近受け入れた冒険者ギルドについてですが、我々独自の銀行を作り、組み込むのはいかがでしょうか。もとより冒険者ギルドは本部以外では現地のルールが優先される。設立する今こそ最大の商機です」
「そうね……いえ、この際だから銀行は銀行で運営しましょう。エルナンド国の住民全員の戸籍と口座を紐付ける。そこから冒険者ギルドを含めたすべてのギルドの口座とも各自の裁量で紐付けていいわ」
「私も姉さまに賛同します。今は魔力の波長の個人差はレイたちの個人技能でしか判別できないけど、ユニリンがマジックアイテムに落とし込んでいるから完成次第本格的に導入しましょう。ノーナ、この話はあなたが主導して進めて頂戴」
「分かりました」
かつてエルナンド王が政務を行っていたた執務室はローレンティア姫とアンリム姫の縄張りだ。
アロス国の宮廷から連れてきた政務官やレイが募った出資者の手の者がひっきりなしにアロス姫たちを訪ねてきては、まだ十歳という事実が信じられないほど完璧に国を回している姿に驚愕していた。
「ローレンティア様、王都の住民たちからお酒が欲しいと陳情が……」
「お酒?んー、私たちもレイも好きじゃないからそういえば連れてこなかったわね。まあ大人はみんな好きらしいから許可しましょう。アイビー公爵領から職人を呼び寄せるわ」
「ありがとうございます!!!」
「ローレンティア様、衛星都市の住民たちから自分たちも術式契約を受けたいという声がかなり高まっておりますが、いかがいたしますか?」
「あー、あれは私もよく分からないのよね」
「レイがいうにはまだ職業軍人以外にはまだ普及させないとのことです。コンボロス公爵領から衛兵を派遣してもらうので、そのあと、だいたい一ヶ月を目安に考えてください。あとユニリンが作ったマジックアイテムの販売を許可します」
「かしこまりました」
目の前の光景はアロス姫たちの功績であり、同時にレイの功績でもある。
レイは学園の講義しかり家庭教師しかり、姫様たちとほとんど同じだけの教育を受けている。やろうと思えば先人たちの対応事例に従って同じように国を回すことも出来るだろう。
しかし、レイの取り得は政治力ではない。政治力も高いがそれ以上に個人の武勇と行動力に飛びぬけて秀でている。ならば大まかな方針を決めたら後は大国の姫であるアロス姫たちに丸投げして自分は現場で走り回り研修室に籠る現状は出しゃばらずよく役割分担出来ているだろう。
「ローレンティア様、衛星商業都市に商業ギルドを作るという話でしたが、アレブガ商会が主導的な立ち位置を確保したようです。あの家はレイ様に反抗的だったと記憶しています。何か対処しますか?」
「んー……もう服従の姿勢を見せているし、何もしなくていいと思うわ。アンリムはどう思う?」
「私も同じ考えだけど……念のためこの国の商業ギルドは私たちを頂点にして、その下の最高幹部を五人にしましょう。アレブガ商会はあくまで最高幹部の一席、内二席は私たちが指名する、そのように通達しておいて」
「ローレンティア様、エルナンド国の生き残りの王族がレイ様と対談を求めています。ナランナ殿のお兄様とのことです」
「ん……私が行くわ。ナランナは今どこに?」
「賢神の試練でしょう、お姉さま。今日の朝ごはんの時にレイがいってました」
「え!?……ああ、私がまだ寝てた時ね。じゃああなたは三日後にと伝えておいて」
「承知しました」
レイが誰もに追いつけないスピードで傍若無人に突っ走っているからこそ、貴族たちは反動のようにアロスの姫たちに纏まっていた。
衛星都市群の発展も見逃せない。
レイがエルナンド国の復興を始めてから約三か月。十五個ある衛星都市にも特徴が出始めた。
基本的に開拓村というものは出身地で分けられる。都市や街、村の人口許容量から溢れた半流民が集団で移住し形成するのが一般的だ。
しかし、レイはせっかく俺の意思で国政を左右できるのだからと、慣習を無視して個人の目標や職能で済む場所を分けた。
その結果、衛星都市群はそれぞれ特色が出始めた。ある都市では農業。ある都市では工業。ある都市では貿易。ある都市では魔法産業。
そしてまたある都市では、冒険者。
「なあなあ聞いたか!?俺たちもレイ様の加護を受けられるらしいぜ?」
「もちろん聞いたが……信じていい話なのか?簡単に魔法や武技が使えるようになるって詐欺の常套句だろ?いや今回は魔法だけだっけか?」
「何疑ってんだよ!、レイ様はこんな素晴らしい街を用意してくださったんだぞ?これほどの奇跡を起こせる方が俺たちを騙してどうしようってんだ」
「それは……まあ、俺も同じ考えだよ。信じるべきだな」
街を歩く青年が三人。彼らは冒険者である。ユニリンの開発した魔法が使えるようになる魔法、通称術式契約魔法の話を聞いて、神の加護の一種だと認識しているようだ。
通常、開拓村は何もない森や山などの場所に小屋を立て、開拓し、畑を作る。何年かすると税の免除もなくなり普通の村になる。その過程は非常に大変だ。魔物の襲撃や自然災害だけでなく、事前の調査が甘く、根本的に人里を作るのに適していなかったなどの理由でも失敗しうる。泣きながら生まれ故郷に戻るものも多いのだ。
しかしレイが用意したこのエルナンド国の衛星都市は違う。プレハブ小屋のように簡素だが雨風が全く入ってこない住居、魔物の侵入を防ぐ大壁、多種多様な移住者たちを同時に受け入れたことで街には店が並び、衛星都市単位では独自の産業が発達し活気にあふれている。開拓村という言葉からは想像できないくらい好条件だ。移住しただけで生活水準は大きく上がり未来への希望で溢れている。
これほど異常な、しかし喜ばしいことばかりならば、聞いたことのない薬や手術も受け入れるくらいにはレイに感謝していた。
レイもそこまで考えていたわけではなかったが都合がいいので容赦無く実験台にすることにした。
「待ち時間は長かったが契約はあっさり終わったな。早速試しに魔境に行くぞ!」
「待て待て、渡された腕輪を装備してなきゃダメらしいぞ?」
「重くないしいいか。この程度で金までをもらえるなら万々歳だ」
冒険者たちはユニリンがいる建物から出ると意気揚々と魔境に繰り出していった。
渡された腕輪は余剰経験値を吸収するマジックアイテムである。レイが聖眼を使っていろいろと調べた結果、どうやらレベルアップに必要な経験値とは倒した魔物から発生していることが分かった。
この世界にはレベルという概念が存在する。神話に曰く荒廃した世界で人類が生きていくために賢神が与えた加護の一種であり、試練を超えた時に経験値を獲得し、レベルがアップする。
しかしこの説明では説明しきれない事例があった。レイが研究を重ねたところ、どうやらこの世界では経験値は魔物から発生しているようなのだ。
前々からレイには疑問であった。なぜ人間を殺した時は魔物を殺した時より経験値が少ないのか。その答えは簡単で、そもそも経験値は魔物を……厳密には瘴気を変換したものだったのだ。
魔物を倒すと魔物の強さやお互いの実力差に応じて経験値が発生し、倒したものに吸収される。しかしこの際に約六割を無駄にしていることが分かった。腕輪はこの六割を吸収し、経験値ポーションに加工するためのものだ。
ララクマ帝国での博覧会で発表した時はデータと資料、実物が不足していたために机上の空論、賢神への侮辱と嘲笑された研究の成果だ。
眼にもの見せてくれる。ぎゃふんと呻き私が間違っていましたと頭を下げてくる権威しかない爺共の悔しそうな顔が目に浮かぶ。
具体的には魔物と戦わずに簡単にレベル10くらいにはなれる経験値ポーションを高値で売りつけてやる。
最大の障壁は、本当にそんなものがあるなら絶対に他国に売るなと何度も言ってくるアロス姫たちかもしれないが。
「失敗しちゃダメ失敗しちゃダメ……失敗したら捨てられちゃう……!」
「気負いすぎだよ、ミレイシャ。マスターはそんな人じゃない」
「イシュナちゃんそうは言うけどさぁ……!」
冒険者たちが衛星都市から出た頃、時を同じくして王都からも武装した少女たちが魔境に向かうところだった。
天族の少女、ミレイシャ。竜族の少女、イシュナ。どちらもレイが奴隷オークションで購入した奴隷だ。今はレイの手足となって活動している。今日は大魔境で魔物の間引きの仕事だ。
「そうだよ。別に失敗したからって捨てたりしないから」
「でもマスター、不安ですよ。私は怖がりなので、マスターに捨てられるんじゃないかと思うと夜も眠れません。ちらっ」
「……大丈夫、あんたは自分で思っているより図太いよ」
二人の傍にいたレイが答える。エルナンド国に来てからは初仕事だから緊張していないか心配だったが、大丈夫そうだ。
「ミルカも気を付けてね」
「……はい。マスターがいないのは怖いけど、行ってきます。今日はよろしくね、二人とも」
この二人はレイの奴隷の中でも特に強い。武力以外は特に取り得がないと正直に言ってもいいかもしれない。しかし強さは本物だ。天族と竜族はそもそも種族的に強いが、レイがみっちり鍛えたので大魔境でも負けないだろう。
見送るとレイも一度王宮に帰還して装備を身に着けはじめた。
笑顔を解いて心の中で悔やむ。
(ロベリアとシャインを連れてこられなかったのが痛いな。やっぱり纏め役が少なすぎる)
類は友を呼ぶというやつか、レイの友人たちはレイと同じように独断専行と個人行動を好む。アルト、アヤメ、ユニリン。みな思うがままに生きている。
仕方のないことではある。レイは天涯孤独の身。アルトも同様。アヤメはララクマ帝国に家族がいるが放任主義。ユニリンも家族は好きだが家には関心がほぼない。
そんな中でブルースター家の次期当主として日々勉学に励んでいるロベリアだけは責任を以て部下をしっかり率いてくれるタイプだ。レイも頼りにしている。
しかしだからこそ家を継ぐための勉強があるからと今回はついて着てくれなかったのだ。仕方のないことだ。レイのように学校をサボって国を作ろうなんて奴はそうはいない。
ただ残念だ。部下や奴隷の纏め役……軍隊で言う小隊長や部隊長がほとんどいない。これはレイが長らく抱え続けている問題だが、いまだに解決できていない。
それにシャインにも手伝ってほしかった。ララクマ帝国で知り合ったあの少女は魔法剣士タイプのレイやアルトと違って剣術しか使えないが、剣術だけに限ればレイたちよりも上だ。教えるのもうまいので講師役に呼びたかった。
しかし勇者カーネリアンと共に放浪しているため所在がつかめなかった。
講師は帝国の剣士を呼ぼう。月煌流の剣士から何人か借りられないだろうか。
陛下から借りた騎士や貴族もあまり真の意味では信用していない。仕事に誠実なので裏切ることはないが、実際に部下として使ってみるとレイの意図を十二分に汲んでくれるわけではなかったのだ。
レイは人手不足を嘆きながら合流場所に向かった。
エルナンド国の北東、大魔境を囲う山脈の向こう側に人工的な塔がある。
資源を探して山を削っていたら異様に固い場所を見つけ、詳しく調べると賢神の試練だったらしい。
「……開きます。皆様に賢人様の加護がありますように」
「下見だからすぐ戻るよ」
「行ってきます」
「ナランナちゃんまたね」
レイ、アルト、アヤメの三人は塔に入る。何もない純黒の廊下を歩く。確か賢神教において白は無知で黒は全知を示すという。
多分あっていると思う。レイがフアナを見た時も一つの額縁に千枚の絵が重なっているかのような圧倒的な情報量にまるで真っ黒にしか見えなかった。おそらく情報が多いと黒になるんだろう。
「レフロート聖王国にあるっていう賢神の試練と内装はさほど違いはなさそうだね」
「そうね。これならレイの監視以外心配事はなさそうね」
「アルト。あなたまだ怒ってるの?エルミナちゃんだっけ?レイとの仲を認めてあげればいいのに」
「人には積み重なった思い出が必要なの!ポット出の女なんて認めないわ!」
『――挑戦者、確認』
緊張感無く歩いていると、奥から音が聞こえてきた。音、というよりも声か。ざざざ、と、かすれた声のようだ。
三人は武器を構える。剣を、剣を、弓を。その動きは滑らかで完全にパフォーマンスを発揮している。
『魂の識別、完了。
レイ。アルト・コンチェルト。アヤメ・エンギル。
以上三名を挑戦者として認めます。ようこそ、試練の塔へ。
賢神から贈り物を欲する方は十階層までお進みください』
これも資料にあった通りだ。賢神の試練には人工知能のようなものが備わっていて内部の事を教えてくれるらしい。
「来るぞ」
再度、剣を確かめるように握りなおす。
突然だが、この世界の魔物と戦うものたちは強くなるために必ず魔境やダンジョンに入る。その理由はエンカウント率が圧倒的に違うからだ。
この世界では至る所に魔物がいる。彼らは通常の獣と同じように繁殖で数を増やす。生息域や生態も普通の獣に似ていて、人類を殺したいという本能があるだけで普通の獣も同然だ。
つまり森や山に入っても接触率が低いのだ。熟練の冒険者でも普通の場所では一時間に何体も遭遇しない。
しかし、魔境やダンジョンは話が違う。高濃度の瘴気は魔物にとって住み心地が非常によく、能力値だけでなく繁殖力も強化し尋常ではない数にまでも増える。伝説によると、超高濃度の瘴気が満ちる場所では空中から魔物が発生するとかなんとか。
そして賢神の試練はその最上位。出てくる魔物の数は随一。
扉を開けて部屋に入ると、少なく見て百匹の魔獣がいた。
「すごい数だな」
「見渡す限りとはこのことね」
「入れ食いね!」
臆することなく前に進む。
場に強化されているとはいえ所詮はレベル15程度。この程度、障害ではない。
「おおー!これらダンジョンカードってやつね!本当にポイントが入ってるわ!」
「魂で識別してるって本当なのかしら」
十層に到着し第一の試練をクリアした三人は報酬部屋にいた。通常のダンジョンと同じように一定階層にボスがいて倒すと宝箱をゲットできる。
しかし今いる部屋はそれとは関係のない部屋だ。次の階層につながる階段の手前にある部屋だ。通常のダンジョンには存在しない。しかり賢神の試練には必ずある特殊な部屋である。
レイは聖眼で反応を観察しながら幾何学的かつ機械的な謎のマジックアイテムを操作しカードを手に入れた。
(想定より操作が簡単だな、この機械。再現性が高い過ぎる)
賢神の試練では魔物を倒すと自動的にポイントが手に入る。この仕組みは賢神が作ったダンジョン、賢神の試練には必ずある。このポイント制があるかないかでこの世界の住民はそのダンジョンが賢神の試練かどうかを判断している。今何ポイント溜まっているか、今何階層まで攻略したかを確認できるのがダンジョンカードだ。
このポイントで特殊なアイテムと交換できるのだ。例えば今はレイのものになった飛行船はアストラ公爵家が二百年かけてポイントを貯めて買ったものらしい。
レイもこれからは賢神の試練で魔物を倒しまくってポイントを稼いで、希少なアイテムを入手するつもりだ。
「……すごいな。伝説は本当だったのか」
「改造できそう?」
「ああ」
しかし今はそんなことよりも喜ばしいことがある。
人類の歴史において、食料の確保は責務である。人類は木の実に山菜、狩猟で肉などを確保し食料にした。この食料をどれだけ入手し、保存できるかが原始的な社会においては力だった。
アロス国の西の公爵領、アイビー公爵領は非常に肥沃な土地だったため力を付けることが出来た。曰く健国王たちも元をたどればアイビー公爵領の生まれだったという伝説もある。
一方、千年前に賢神の試練を発見した、現在でいうレフロート聖王国は賢神の試練から食料を入手したという。
元はその賢神の試練は悪魔系や天使系の魔物が多数出現したらしい。強力であり経験値はおいしいが可食部がほぼ存在しない天魔の魔物を倒して十階層にたどり着いた初代聖国は、賢神の認められ、出現する魔物を獣系に変更。宝箱から獲れるアイテムも塩や果実に変更したという。
そう。賢神の試練を一定階層クリアすると、ダンジョンの内部をいじれるのだ。
「発生する魔物をゴーレムに、材質は希少金属に変更っと。ついでに俺も持て余している魔力も全部注ぎ込めばっ、と。
よし、これで飛行船の量産に入れる。アルト姉、アヤメ。降りて魔物を倒すぞ。出来るだけ綺麗にね!」
「えー私、そういうの不得意なのよ?」
「ゴーレムかぁ……所詮は魔物だし、聖魔法で倒した方がいいわね」
「倒したポイントで設計図も購入するの?」
「それは最終手段だな。それより俺は都市の設計図や魔導書が欲しい。あと料理本もあるらしいし。
俺の眼で構造は把握しているから、設計図は俺が書き起こす。性能と大きさは下がるけど量産は出来るよ」
「ふーん。私は新しい武器が欲しいわ。聖魔法は使えないから、聖属性の弓とか」
「ならこの聖属性の魔力を使えるようになる指輪とかがいいんじゃない?」
賢神の試練。衰退と滅亡を繰り返し原始的な生活をしていた人類に再び文明を与えた賢神からの贈り物。
本当にあるなら、五大国の六番目にもなれるという評価は正当である。




