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31話 褒章会

 レイが大事件を起こす少し前、アロス国の西部、アイビー公爵領都の一番大きな屋敷で穏やかな時間が流れていた。


「本当によろしいのですか?陛下にあの少年のことを聞きに行かずとも。公爵が相手でしたら陛下も無下にはなさらないでしょう」

「不要だ。私に言うことがあるなら陛下から通達が来る。それまでは何も聞かないのも良き臣下というものだよ」


 アイビー公爵家当主、ヘラルド・アイビー。彼は陰謀渦巻く四つの公爵家の中でも間違いなく王家に心からの忠誠を誓っていると言われている唯一の公爵家だ。

 会議の時は必ず王家の意見に異を唱えるアストラ公爵家と違い、武力とタカ派的な思考で王家とそりが合わないコンボロス公爵家とも違い、五年以上王都に顔を出さない没交渉のオーレリユ公爵家とも違い、間違いなく王家の味方といってもいい唯一の存在なのである。


「それは理解しておりますが……あのレイとかいう少年の扱いは今までで前例がありません。陛下も王妃様を失われてから少々錯乱しておられるようにも見えます」

「心配性だな。陛下は歴代で最も優れた王だぞ。確かに陛下は学園にいたころから堅物で女遊びには不慣れだった。唯一心を許した王妃様が病死されたときの衝撃は大きいだろう。

 しかしそのうえで、何の心配もない。どのような精神状態であろうとも陛下は打つ手を誤らない。あの少年のことは確かに少し奇妙だが……まだ六つなのだろう?ならば事が起きるのまだ先だよ」


 アイビー公爵は優雅に茶を傾け、その味と香りに頬を緩ませる。無音でコップを置くと、いい歳してまだ不安そうにしている心配性な息子、セグレウスに言葉を重ねた。


「そも、あの少年は大したことをなさないと、私は考えているよ」

「?そうなのですか?しかし既に姫様たちをお救いするという功績を立てていますが……」

「確かに、それはすごいことだ。誘拐された王女をその身一つで助け出す。王都の警備兵たちの誰にもできなかったことだ。学院の成績もテストで一番だったらしいな。素晴らしい。早いうちから家庭教師をつけていた貴族の子弟たちも見習ってほしいものだ。戦場では帝国の姫をさらったらしいな。恐るべき才能と行動力だ。今はコンボロス公爵への使節団に加わったらしいな。大したものだ、名声もすでに高いだろう。

 だがよく考えてみろ。この程度、一つ一つには前例がないわけでもないだろう」


 アイビー公爵はレイを称えながら、特に表情を変えることなく淡々と告げた。

 現時点での経歴を見れば確かに前例はない。

 しかし一つ一つを見ればあの年で同じことをしている者はいるし、それが偶然重なっているだけだと。


「これは歴史を紐解くまでもなく、私の四十年の人生で見た人たちの話だ。数多くいた神童を呼ばる幼子たちは、十を超えると秀才と呼ばれ、十五になればただの人になった。確かにレイという少年はその中でも最も優れているが、まだ驚くことはあっても戸惑うほどのことは起きていない。

 セグレウス。お前もいずれこの家を継ぐ身だ。常に冷静な判断と思考を手放してはならないよ」

「肝に銘じておきます」


 ヘラルド・アイビー。彼は肥沃かつ歴史のある領土を持ち、どのような時でも王家の味方をすることで安定した利益を手に入れる、常識的で有能な政治家だった。 


 微笑むアイビー公爵の部屋に執事長が突然転がり込んできた。


「たっ、大変です旦那様!!!!」

「どうした?お前がそこまで慌てるとは珍しいな」

「アストラ公爵があの少年に暗殺されました!」

「は?」


 そんな彼にも、常識が通用しない問題が衝突してきた。





「何を考えているんだあの小僧ぶっ殺してやるぞ!!!!!!!」

「今殺すべきではないと分からないのか!!??まだ後継者が育っていないのだぞ!?」

「間違いなく配下の貴族たちが反乱を起こすぞ!帝国だってこの隙を見逃さないだろう!」

「アストラ公爵は王家に反意を持つ反乱分子たちを受け止める役割もあったのだぞ!?なぜ殺した!?王家にも不利益が大きすぎると分からなかったのか!?」

「陛下が見出した以上は逸材だと思っていたが、事を起こすのが速すぎるだろ!せめてあと十年は先だろう!!」


 超緊急事態と招集を受けて急遽開かれたアイビー公爵の屋敷で、アイビー公爵派の貴族たちが怒髪天を突き殺意にも似た気迫をぶつけ合っていた。大きな屋敷の大きな会議室に高名な貴族たちが集まり怒りの形相で書類と情報を飛ばしあう。まるで戦場だ。


「この話はどこまで本当なんだ?まだ六つに少年がレベル七十の魔物を倒せるはずがない。【木の葉】の誰かが裏でサポートしたのではないか?」

「まて、おそらくはステータスが定着する前だから出来たことだろう。レベルの差が大きいと攻撃が通じにくいが、人なりの儀式を終える前ならこれが当てはまらない可能性があると以前魔術師の研究にあった」

「馬鹿を言うなステータスが定着していないならジョブ補正もレベル補正も受けられないのだぞ。そんな一般人と変わらない身で魔物と戦えるはずがない!」

「しかし木の葉も王礎十五柱の一切動きがなかったのだぞ!?我らが一切気が付かないなどそれこそありえない!」


「あの……質問をよろしいでしょうか」


 そんな中でレイと同じくらい幼い少女が声を上げた。


「ん?君は……ああ、アレブガ男爵家の」

「はっ!ノーナと申します。まだ病床に臥せっている父に代わり出席させていただいております!」

「そうだったな。それでなにか気が付いたところがあったかい?」

「ええと……気が付いたと申しますか。その、私としては今回の暗殺事件は陛下が主導したものだと思いました。しかし聞いているとまだ六つの少年が主犯のように聞こえ、よく分からないと言いますか……」


 尻すぼみになったが、言いたいことは伝わったからか、司会をしていたアイビー公爵は音頭を取る。


「ふむ……よし、いったん休憩を挟もう。少々議論が白熱しすぎている。その間に状況の整理だ」


 使用人たちが後ろから冷たい飲み物と軽食を提供し、冷房のマジックアイテムを強化した。貴族たちも白熱しすぎたことに気が付いたのか冷静になろうと椅子に座りなおす。


「ノーナ嬢、君は今回の発端を聞いているかい?」

「はい。今回の事の発端は王家よりコンボロス公に派遣された視察団です。最近は陛下も王権の拡大に精力的なため、敵対的なコンボロス公を懐柔するのが目的。この使節団は陛下の右腕のレグルス殿がリーダーですが、勉学を兼ねて姫様たちも参加。……そしてあの少年は姫様たちの護衛兼使用人、そして治療師として参加した……と、認識しています」


 ノーナは事前に調べた情報を述べる。貴族の跡取りとはいえ、一番下の男爵家と一番上の公爵家では身分さが極め大きく非常に緊張した様子だ。


「ああ、その認識で合っている。賢いな。では続きを」

「はい……実際は使節団はダミーで、不治の病に罹患したコンボロス公の長女の治療が目的だった。にわかには信じがたいですが……すでにあの少年の治療師として腕は第八階梯の回復魔法を使えるほどだと聞いています。初代コンボロス公爵が残した魔装を扱えるアルル嬢の治療と引き換えに王家派に引き込むつもりだった」


 ちらり、とアイビー公爵を見ると、無言で頷いた。

 大体はあっているのだろう。一安心だ。


「……しかし、これすらもフェイク。三人目の後継者も不慮の事故で失ったアストラ公爵の四男をコンボロス公爵領に誘導し、同じ不治の病に罹患している長女を治療させ、このことをネタにアストラ公爵をコンボロス公爵領に誘導。同時に王家の手のものを使って岩投げを起こして戦力を引きはがし、あの少年が暗殺を実行した……と、思っています」

「うむ。まあ大体は合っている。この短時間では我々は資料を作れなかったが、自分で調べたのか?大したものだ」

「恐縮です」


 ノーナは頭を下げながら誇らしげに笑う。やはり、自分の推測は正しいのだ、と。


「それで、君はこの全てを陛下が仕組んだと思うのかね」

「はい」

「聞き方を変えよう。長年に渡り表と裏で手を組んでいる我々に一切頼らず、気づかれることもなく、仕組めると思うのかね」

「………………え、あ、あ~……で、でも、今の陛下は歴代でもっとも優秀と聞きますし……ん~……」


 重ねられた質問にノーナの顔が自信を失ったように顔をもにょらせた。

 そんな少女にアイビー公爵は孫の相手をするように穏やかに返す。


「確かに、陛下は優秀だ。しかしこの優秀さとは周囲の力をうまく使えることにある。適切な場所に適切な部下を送り、分からないことや手に負えないことは解決できる部下に任せる。本人の武力や知略も極めて高いが、それ以上に王家の権威を使いこなし周囲を動かす力こそ陛下の本領だ。

 そして我らアイビー公爵家は建国当時より王家を注視し観察してきたのだ。この傾向は二百年前に強まり、現在では王家の秘密部隊の動きもある程度は把握している。公爵を暗殺するほどの大事を一切察知できないというのは、考えづらい」

「そ、それでも、陛下は社交界にもほとんど出ませんし、秘密も多いです。力量を隠していた、というのは考えられませんか?」

「難しい話だな。君の言葉が正しければ、この十年、いや、王子だったころから数えて、三十年ほどか?それだけの間、我らに手の内を隠し続けることができるとすれば、全ての資料の信憑性から検証しなければならない。ゆえに我らの経験から陛下の力量はそこまでではないと言っていいだろう。

 以上の根拠から、陛下から大まかな命令を受けたあの小僧がアドリブで暗殺したと考えるのが最もあり得る話なのだ」

「むぅ……」

「ふふ、あの小僧が万年に一人の天才で。千年に一度の幸運を乗りこなした、という無茶な推測が最も確からしいなど、とんだお笑い事だがな。そういう怪物は稀に生まれてくるのだ」


 経験則というまだ幼女であるノーナが言い返せない点を突かれて不満そうだが、不満を飲み込める程度には大人のようだ。


「しかし実のところ、黒幕などどうでもいいのだよ」

「へっ?そうなのですか?」

「ああ、問題は、陛下がこの問題をどう扱うか、だ」


 アイビー公爵の言葉に貴族たちも難しそうに顔をしかませる。


「あの小僧、レイは身分はただの平民だが、姫様たちの使用人で学院の生徒、そして治療師見習い。つまりは陛下の部下だ。今回の使節団も陛下の命で行った以上、起きたことの責任も陛下にある。当然今回の暗殺事件もな。

 じき我々にも召集がかかり、王都で多くの耳目がある中で今回の事を話すだろう。そのとき、あの少年に対して、勝手なことをしたと怒るのか。それともよくやったと褒めるのか。前者ならばよい。無理があるが、陛下は穏便に事を済ませたいということだ。我らも話を合わせよう。しかし後者なら……陛下は公爵家の権力を王権に取り込むつもり、ということだ」

「えええええ!!!!」


 気が付いていなかったのかノーナが大きなリアクションをしている。無理もない話だ。長らくこの国は王家と四つの公爵家の合計五つの派閥がバランスを取っていた。それを一つにまとめるなどどれほどの混乱と軋轢が生まれるのか分かったものではない。


「これは私の私見だが、陛下はあの小僧は自分の代理人にしたいのかもしれない。この国では女性であっても玉座に着けるが、多くの貴族は慣習として男児を後継者に選んできた。王妃様の後妻を取るつもりがないならば子供は姫様たち二人だけ。ならば理想の孫が生まれるまで待たなければならない。あの小僧は自分の代弁者として国中の貴族を抑えるために使う。そう考えれば納得がいく」


「それは……まあ、確かに法律上は可能ですが女性が王位についたことはありませんしな」

「ん?たしか初代は……いや、あれは伝説でしたか」

「馬や鳥を飛ばすよりも、一流の戦士を走らせたほうが速いと聞きます。あの少年はすでにララクマ帝国との国境まで日が暮れる前には着くほどの走力を持つと聞く」

「陛下もあまり自由の身ではありませんからな。周りの人間の多くは我らとも繋がっているから信用しにくい。ならば王都から動けない自分の代わりに、間違いなく誰のひも付きでもない拾った少年を使うのは、まあ可能であるならば理想的ですが……少々不可解だ、そんなに焦ることがありましたかな」

「なんにせよ。二百年も良い中の我らに共有してほしい話ですな」


 落ち着いた貴族たちをよそに、アイビー公爵は内心でまだ頭を抱え訝しんでいた。


(仮にこの考えがおおよそ合っているとして、一番の問題はいつ、どうしてこのような考えを持つに至ったか、だな。あの無欲で冷徹な男は勢力の均衡を保つことしかしてこなかった。予言の神器でも使ったのか?

 我らは王家に寄り添うことで安寧を手にし、深入りしないことで危険を避けてきたが、そろそろこちらから探りを入れた方が良さそうだな)


 こうして会議は終わったが、レイが国王の意向に一切関係なく私情で暗殺したことは誰も気が付かなかった。




 時は流れ褒賞会が開かれた。

 王城の玉座の間、以前レイが連れてこられた思い出の場所だ。


 貴族たちが固唾を飲んで見守っている中、アロス国国王、ゲオルグ・アロスは気負うことなく口を開く。


「よくやった、レイ。褒めて遣わす」


 その言葉に貴族たちは平静な顔を保ちながら頭の中で悲鳴を上げる。誰もが皆、戦乱を予感したからだ。


「アストラ公は王家に反意を持つものたちを束ね、反乱を計画していた。お前には話しておいたな。我の意を汲み奴の守りを抜き首を刎ねた手腕、行動力、忠誠心を讃えよう」

「ありがたき幸せにございます」


 頭を下げたままレイは答える。

 事前には聞いていなかったし反乱の気配も無かったはずだが、そういうことにするというメッセージだろう。


「コンボロス公、貴殿も大義である。今までのことは許そう。これからも国のために励むが良い」

「……無論です。及び腰になっているのではないかと疑った我が心を恥じましょう。これほどに力を振る家に忠誠を誓うことに躊躇いはありませぬ」


 言外に王家を軽んじる発言に、先ほどとは違う意味で周囲の家族たちに緊張が走る。

 しかし国王は気にすることなく話を進める。


「レイ。本来ならば言葉と共に褒賞を与えるが、今回は無しだ。指示を仰ぐことなく独断で行動したことは咎めなければならない。コンボロス公の長女の治療という我が命じた本来の任に注力すべきだった。結果として上手くいったが、功績と相殺する」

「はっ」

「だが、お前の忠誠心と行動力を我は評価しよう。いま我直属の新しい騎士団の設立を計画しているところだ。実現すればお前に重要な役職を与えよう。まだお前は幼いが、十分に我の期待に応えてくれると確信している」

「ありがたき幸せにございます」


 国王直属の新しい騎士団の設立と、その重要な役職に国王直属の部下を配置する。

 その言葉を意味に貴族たちに緊張が走る。大きな争うが起きるという懸念は、これでほぼ確実になった。王家につくべきか。公爵家に忠義を貫くべきか。そもそもどこまでやるつもりなのか、近いものたちと密かに言葉を交わす。


「静粛に!静粛に!」


 近衛兵が声を上げる。


(やる気が出ない。早く終わらないかな)


 そんな中でレイはぼんやりとどうでも良さそうな顔をしていた。身分差の関係で顔を上げなくていいのは僥倖だろう。

 生涯をかけて仇を取ろうと思っていた相手を一年半で殺せてしまい、燃え尽き症候群だった。


「失礼します!!」


 突如として扉が勢いよく開かれる。


「何者だ!今が……」

「帝国が国境を超え攻めてきました!」


 剣に手をかけ叱咤する兵士に伝来兵は叫ぶ。

 その一言の重大さに誰もが硬直し、一瞬遅れて破裂した。


「もう攻めてきたのか!?」

「数は!?将軍は何人いる!?武門十七衆はいるか!?」


「侵入経路はアストラ領!国境警備の第二騎士団が交戦、半日で撤退を選択しました!敵軍の詳細は不明!」


 伝達兵の言葉に一気に貴族たちも顔を引き締める。国王の理解不能な行動に動揺していたが、言い換えれば国の未来を思う国士たちだ。そこに自分たちの利益も求めているが、敵国を前にしても争うことはない。


「アストラ領民たちを動員できないか?このような事態でも、故郷が蹂躙されるのは避けたいだろう」

「しかし不審感が高まっている。団結力を高めて反乱と独立の起点になってしまわないか?」

「陛下!一刻も早く帝国軍を止めるべきです!アストラ領は資源は乏しいですが拠点作られると落としにくい!この際アストラ領の民たちは見捨ててでも止めるべきです!」


 貴族たちが対応を考える中で、少年が声を上げる。


「陛下、意見を述べて宜しいでしょうか」

「許す」

「はっ。最悪の事態は帝国軍とアストラ領の民たちが手を組んでしまうことだと愚考します」

「だろうな」

「この件を私に一任していただきたい。皇女の身柄を餌に撤退させて見せます」


 レイの言葉に貴族たちが絶句する。


「ま、まさか!あの時からこの絵を描いていたのか!?」

「なんと行く戦術眼」!


 ゲオルグはレイを見る。


「レイ、お前はこの事態を見据えて皇女を攫ったのか?」

「はっ!その通りであります!」


 嘘である。

 アストラ公爵があの時のこのことやってきたのが偶然なように、皇女を攫った時はここまで見据えてなどいない。


 しかし、レイの虚像が肥大化し混乱している相手なら言い負かせるはずだ。


(ここはハッタリで乗り切る!全部計算済くですって顔をするんだ!たぶん曖昧に笑っていればいける!)


 笑みを浮かべながら国王を見ていると、頷いてくれた。


「よかろう。対帝国軍の指揮は、レイ、お前に全権を預ける」

「お待ちください陛下!!!!!」

「事は一手間違えただけでこの国の存亡を左右するほどの一大事!流石に我らも了承しかねます!」


 陛下は見渡し、頷く。


「皆の言葉も最もだ」

「「「陛下……っ!」」」

「もう一つ臨時総指揮官にコンボロス公を任ずる。レイ、我の名代として、コンボロス公を使え」

「「「なっ……!!!」」」


 周囲の貴族たちが絶句する。

 これは明確な格付けだ。王家が上でそれ以外が下。王家の部下は公爵家の当主より上。建前としてはその通りだが、ここまではっきりとした扱いをするのは初めてのことだ。


 ここにいる全員が、何か大きなものが変わろうとしていることを、いや、すでに何かが変わったことを肌で感じていた。


「謹んでお受けいたします、陛下」

「王家を支えることこそ公爵に代々続く使命、断る理由はありません。了承いたします」


 レイとコンボロス公は並んで言葉を返す。


(まさか臆病者の陛下がこれほど大胆な手を打つとは。面白いな、俺も久々に戦場で暴れたくなってきた)


 コンボロス公爵は内心で歓喜と闘志を剥き出しにする。コンボロス公爵家は武断の家。同意出来る方針ならばより上位の家の傘下に入ることを吝かではない。

 ……その結果指揮ではなく自分が戦場で暴れたがるから馬鹿と亡きアストラ公に陰口を叩かれていたことを、彼は気づけていないが。


(……やはり、陛下はあの少年を自分の名代にするつもりか。たしかにスラムの小僧なら誰の紐付きでもないだろうが……それは我らを蔑ろにする行為だ。我らは信用されていないのか?それはいいが、ここまで大っぴらに行動するとは大胆な。

 思ったよりもかけられる時間はなさそうだな。この後陛下に直談判しなければ。もし断られれば、オーレリユ家と接触も検討しよう)


 客席の中でアイビー公は頭を抱える。


(これで一つ身軽になるな。連れてきちゃったアヤメもなんとか返そう)


 そしてレイは身辺整理の予定を組んでいた。

これにて三章完結です

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