勇者召喚されたけど、違ったらしく城から追い出された。
「ノブユキ君。このクエスト追加で貼っておいて」
「ノブユキ。この魔石にいくらになる」
「ノブユキさん。今度、転職しようと思うんですけど、何がいいですかね」
「ヘンタイ。いつも来るエルフの姉ちゃんと黒髪の姉ちゃん紹介してくれ」
「ノブユキ。お前の探している二人に似た人間族をみたやつがいたぞ」
【ギルド】って仕事を紹介するところじゃありませんでしたっけ?
「ノブユキ」
「申し上げます。勇者召喚成功したとのこと。今回は金の髪の青年のようです」
侍従長のグラスゴーが狼狽した様子でバース王に告げた。
「そうか。宰相ベルファストに勇者様の応対するよう。エレナに婚約者が現れたと伝えよ」
侍従達は、急ぎベルファストとエレナ姫のもとに向かった。
「本当に勇者を召喚できたのでしょうか」
「珍しく、いつも意見が合わぬベルファストと同じ事をいう」
「勇者召喚は召喚術の中でも、最上位。しかも三年間の間に2度も」
「だからこそ今回は召喚の加護を持つそなたの進言を取り入れて、魔導書【ナコト写本】を使用したのではないか」
「確かに、そうなのですが」
「もうよい。ベルファストは加護の鏡を使うはずだ。それより、皆を集めよ。勇者のお披露目を行う」
「御意」
グラスゴーは謁見の間を離れ呟いた。
「ラプラス様はどこに」
「失礼します。宰相様。勇者召喚成功しました。つきましては王より勇者様の対応をせよと」
「勇者召喚が?そんなはずは…」
知的な顔立ちのエルフが一瞬困惑の表情をみせた。
「いかがなさいました」
「いや何でもない。勇者様のもとへ向かおう」
「もし。異世界からこられた方」
ノブユキは聞きなれない声で目を覚ました。傍らには一冊の本があった。
「異世界?ここは図書館ではないですよね。それにさっきまで誰かと話していたような」
「あなたも図書館というところから来たのですか。申し遅れました。ブリストル王国宰相ベルファストと申します。異世界より突然、勇者召喚したご無礼お許しください」
「ノブユキです。ん?あなたもってことは以前にも?勇者召喚?」
すがるような声で叫んだ。
「はい。3年前にアオイ様とシオリ様が勇者召喚されました」
「三枝先輩と詩織が…3年前に?先輩と詩織は今どこに」
「それが…」
ベルファストの表情はすぐれなかった。
そして、語ってくれた。三枝先輩と詩織が勇者召喚された後の事を。
神殿からの神託がもたらされた。
「魔王が二年後に復活をする」
ブリストル王国は伝承に従い、勇者召喚を行い無事成功。アオイが召喚された。シオリは勇者では無く、聖女の加護がついていた。
女王が二人に託したのは【魔王封印か討伐】の使命であった。
しかしレベル(経験値)が低く、使用できるスキルも魔法も少ない。まだ「勇者の卵」「聖女の卵」のような状態であった。
その為、ギルドで冒険者となりパーティーを組みダンジョン攻略や魔物狩りを行い経験を積ませた。
国民の不安を煽らない為に、魔王と勇者召喚の件は一部の者にのみ伝えられた。王族、宰相、軍部総司令、神殿、ギルドグランドマスター、王都ウェルスのギルドマスター。
アオイとシオリの成長は目覚ましく、一年後にはA級冒険者になっていた。
そんなある日、二人のパーティーメンバーの一人がギルドに駆け込んできた。見たことの無い魔物に
襲われ、アオイとシオリは自分達を逃がし、交戦中だと。
ギルドマスターは緊急招集をかけ王都にいる冒険者に魔物討伐のクエストを発令した。現場に到達した冒険者達が目にしたのは、人の大量の血痕と切り落とされた魔物の腕だけであった。
王国近衛兵、ギルドでアオイ達の捜索を行ったが、見つからなかった。
「私は二人はは生きていると思います」
うなだれるノブユキにベルファストは発した。
「遺体が見つかっていません。それに魔王も復活しませんでした。」
「魔王が復活していない?」
「はい。私はアオイ様とシオリ様が魔王誕生を防いだと思っています」
「なるほど。筋は通っている。ん?では、なぜ勇者召喚を」
「神託です。神殿は二人がいなくなった数か月後に、魔王の気配が消失したとと伝えてきました。それから2年後。1年以内に魔王が復活する。と再び伝えてきたのです。」
ノブユキは決意をした。
「ベル、ベルファスト様。二人をを探しにいきます」
「わかりました。ただ、ノブユキ様も経験値が不足かと、クエストをこなしつつ捜索するべきかと」
「そう…ですよね。わかりました」
「ではギルドに行く前に、加護と魔力測定。女王と王と王女達の謁見をお願いします。後、今後はベルとおよび下さい。シオリ様もそう呼んでましたし」
「宰相様をベルと呼ぶのは恐れ多いですが、詩織が呼んでいたのであれば」
実はちょっと名前が嚙みそうでいいずらかったとは言えない。
加護
女神から与えられた力。力が強いや複数魔法詠唱いったものからあらゆる物を武器にできたり、動物を操れるといったものまで様々。特殊なものとしては、勇者や聖女。この名称だけでいくつもの加護が紐づいている。
加護と結びつく職業を選ぶ事によって従来の何倍もの能力を発揮できるのである。
魔力
属性と魔力量。光、闇、火、水、風、土。魔力量が多ければ、強力な魔法が使用可能かつ中級魔法であれば数も打てる。
基本属性は一人一つであるが、稀に複数の属性を持つものもいる。
「まず、加護を調べます。こちらの鏡に手をかざして下さい」
「はい」
鏡は最初は普通の鏡だったが、手をかざすと鏡面が白い霧に覆われた状態になった。
「えっと。このまま待っていればいいのですか?」
「はい。本来ならばすぐにでるのですが、やはり…」
「やはり?」
「いえ。少し時間がかかっているのかもしれません。先に魔力測定といきましょう。今度をこの水晶に触れて下さい」
水晶に触れると、緑色に発光した後、二つに割れる位のヒビが入った。
「風属性?通常、勇者は光属性のはず。それに…」
ベルはノブユキが右手に持っている物に気付いた
「その本は…魔導書?」
「転生?転移の際に一緒に」
「その本を置いて再度、水晶に触れて下さい」
新しい水晶が運びこまれノブユキは手をかざした。
何も起きなかった。
【属性無】
と、思った瞬間。
「ピキッ」
先程の比では無いが水晶の半分位までヒビが入った。
「これは、どの様な結果といえるのですか」
「無属性では無いと思います。水晶にヒビが入った事を考えると複数の属性を所持か、この世界には無い属性か」
二人の間に沈黙が流れた。
ベルは一連の出来事から一つの結論に行き着いた。そして言葉を発しようとした時。
鏡の変化に気づいた。
「鏡に文字らしきものが浮き出ていますが、私が知る限り見たことの無いものです」
ノブユキも鏡をのぞき込むとそこに書かれていたのは日本語であった。
「ベルさんここに書かれているのは僕のいた世界の言語です。いくつかが入れ替わり浮いて出てきます。狐の手下…ハローワーク…勇者になれなかった人……最後に出てきたの??????バグ?」
「ノブユキ様。今の文字に心当たりはありますか?」
「はい。」
勿論、大有りだ。
【狐の手下】は実家の長野でお稲荷様を祀っている事だろう。手下はよくわからないが。
【ハローワーク】(職業安定所)はバイト先。部活の部長神山さんに紹介してもらった。
【勇者になれなかった人】 最近なれなかったのは警察だ。かなり強引な気がする。
「そうですか。ノブユキ様。私は一つの仮説を立てました。これが正しいとすると、あなた様にとって、最悪の話と最高の話になりますが、聞いていただけますか」
「聞かせて下さい。ベルさんが僕に会ってから時々見せる困惑の正体を」
ベルはノブユキに自分の心を見透かされていると感じた。が、悪い気分ではなかった。
「まず仮説です。二人は生きています。生きているから勇者召喚できなかったのです。勇者は亡くなるか、他の世界に行かない限り現れません。一人のみです」
この国の勇者召喚の伝承の中に「勇者失いし時は再び召喚せよ」と一文がある。「失う」と「亡くなる」を同一と捉えるかは難しいところであるが、ベルはそう認識していた。
ノブユキが勇者であれば、加護の鏡には【勇者】と刻まれ。魔法の水晶には【光】の属性が輝くはずである。
しかし、結果は勇者になれなかった人で属性無。加護は??????
「そうか。勇者は二人存在しない。だから生きている」
ノブユキは勇者でなっかった事の無念さより、二人にまた会える喜びがこみ上げてきた。
「そうです。図書館から来たノブユキ様に女神は加護を与えようとしましたが、【勇者】はすでにいるため他の祝福を贈ろうとしました。それが【??????】なのだと思います」
「ベルさんは??????は名称が無いだけで、何らかの加護は与えられていると思いますか」
「はい。おそらく、これも、この世界に無い加護なのだと思います。ですから名前がつけられないのではと」
再び二人の間に沈黙が流れてた。
「さっきまでの話が最高とすると。最悪な方は」
「王様による暗殺です」
「誰を」
「あなたを」
「勇者召喚の失敗は国を揺るがす一大事です。今や王都では魔王の復活は皆が知るところとなっています。召喚そのものをなかった事にする為、動くはず」
「では、逃げろと」
「いいえ。城からの脱出は困難です。ですから、ノブユキ様は勇者を名乗って下さい」
「ニセ勇者か」
ノブユキはここがターニングポイントだと感じた。
「王様に真実を伝えて下さい。僕は勇者になれなかった人です。多分、ボロがでます。それに二人に嘘はつきたくない」
おそらくこの人は何を言っても意見を変えないだろう。ベルも決心をした。
「わかりました。これから王様のもとへまいります。ただ、一つだけ小さな嘘をついてもらえますか」
「小さな嘘」
「ノブユキ様の髪の色はもともとは黒で間違いないですか」
「はい。今は金に染めているだけです」
「黒髪は邪悪と考える者がいます。以前の王様は髪の色や容姿で人を判断する人ではありませんでした」
「今は違う。と」
「二年前。アオイ様達の行方がわからなくなった少し後。事件が起きました。女王が庭園で倒れたのです。その時、黒髪の男が近くにいた。という噂がながれました。その後、体調は回復せず。ベッドから起き上がることもできない程に。そのころからです」
「そんな事が。わかりました。その嘘ならあの二人から「似合っていない」と突っ込まれるだけですから。後、僕から質問なんですが、いいですか」
「はい。私が知りえることであれば」
「この王国の主権は本来女王にあるのでは。それと王女達って。先程仰っていましたが」
「おっしゃる通りです。現在は女王に代わり王様が執務を。王女は二人。王位継承権一位ニーナ様と二位のエレナ様です。ちなみに王様はエレナ様を勇者と結婚させようと考えてましたが」
勇者になれなかった人。だった。
「では、王様に報告に行ってまいります。この部屋でお待ち下さい。最後に侍従長のグラスゴーには気をつけて下さい。あの者も二年前から変わってしまった一人です。」
「わかりました」
二年前からこの王国で何かが起き、それはまだ続いている。
少し休むことにした。部屋には誰もいない。
「おーいもう出てもいいか」
部屋の中には誰もいない。
「誰ですか」
「記憶喪失か。さっき会っただろう。儂と女神とバレンタインとラプラスに」
【女神】は転生、転移によくあるあれか。
【バレンタイン】はバレンタインデーの由来になった聖人かな。
【ラプラス】はゲームやマンガでは魔人、悪魔、邪神であったり、ラプラスの悪魔という理論もあったような。
【儂】はまったくわからない。
「まったくわからない。じゃない。そこの魔導書。【ナコト写本】を開き。その文字を読め」
何か言おうと思ったが、【儂】には逆らわない方がいいと本能がつげていた。
「その本能。大事にしろ。きっとこれからもお前を助けるぞ」
「読みます」
ここまで読んで頂いた読者の皆さん。ありがとうございます。エルフのあんなシーンや獣人とのこんなシーンや魔物や魔族との戦闘はもう少し待って頂ければ幸いです。お決まりの奴隷商での出会いや仲間の裏切りもきっとあるはず。
第2話からは【ギルド】編。異世界行ってもハローワーク予定です。お気に入り登録よろしくお願いいたします。
「これは誰に」
と思ったが、いろいろ面倒なのでやめた。
「次は魔導書に手をかざし目をつむれ。記憶を修復するぞ」
魔導書【ナコト写本】に触れた瞬間。頭の中が真っ白になった。
世田谷区経堂にあるバイト先の職業安定所(通称ハローワーク)を後にして、在学しているN大学の図書館に向かった。
「また、あそこですか」
声をかけてきたのは部活(文芸部)の後輩秋山望(N大2年)
「ああ、二人のの手がかりはあそこにあると思っているからな。それに…」
今日は行方不明になって1年。
「そんなに、先輩のチョコが欲しかったんですか?」
秋山に悪気は無い。むしろ慰めてくれていると感じた。
「そうだな。くれるって言っていたし」
「それ前にも聞きましたしたけど、本当ですか?二人とも大学の中でもベスト5に入る美人ですよ」(秋山調べ)
「言った。手作りのをって」
「その金髪。似合って無いです。警視庁落ちたからって」
秋山は話題を変えてきた。
「警視庁に入れば、手がかりが…と思ったけど。逆に金髪になって目立てば見つけてくれるかな。なんてね」
「三枝先輩と高坂先輩は鳥ですか?ドローンですか?」
「秋山ありがとな」
「何がですか?」
「いい突っ込み」
二人は同時に笑った。
「そろそろ行くよ。あ、そういえば俺にチョコは?」
「文芸部も大学も引退(卒業)間近で部室にもたまにしか来ない人にあげるチョコはありません」
「残念。でも、みんなにバレンタインデーでなくてもチョコは受付中って言っておいて」
「わかりました。元幹事」
中村は右手に持っていたチョコをそっとバックにしまった。
同じ日、同じ時間に行けばあそこで何か起こる気がする。
一年前の2月14日 18時頃 三枝葵と高坂詩織は行方不明になった。
最後に葵の姿を見たのは同じ研究室の学生で、図書館3Fに向かうところを目撃されていた。
二人の図書館入館のゲートの図書IDのタッチ記録は17時50分前後。退館記録は無し。
図書館3階の本は貸し出し禁止や閲覧制限が設けられている。
「ここだな」
青柳信之(N大4年)三枝葵と同じ研究室の後輩。高坂詩織とは同学年。高校時代からの腐れ縁
部活は文芸部 元幹事(ちなみに大学の部活で顧問は部長。学生の長は幹事になる)
昨年警視庁の試験を受けるが、不合格。
長野県S村出身 村の一部地域ではお稲荷様を祀っており犬を飼う事が禁止されている。
戦国時代に青柳城という城があり、時代が時代であれば殿様だったっと祖父は会う度にいう。
青柳一族の中には稀に特殊な能力を持つものが生まれるという逸話がある。お稲荷様を祀っているのがこの一族であるのが関係しているとかいないとか。
図書館3F 閲覧制限区域
といっても大学の学生、職員、OBは申請すれば入れる場所である。
二人がいなくなったその日、閲覧権限区域に二冊の本が落ちていた。
一冊は「ネクロノミコン」
のレプリカ
怪奇作家ラヴクラフトの作品に登場する架空の魔導書の一つ。他にも【ナコト写本】などもある。(こちらは近年ゲームなどやマンガで話題になった)
ネクロノミコンはラヴクラフトの死後。友人やファンが完成させ、販売も行われた。勿論、魔導書としてではないが。
もう一冊は「今からでも間に合う。ロシアンルーレットチョコ。バレンタイン編」
自身でフライパン制作も手がける料理研究家アミー監修の本。口癖は「愛情がスパイス」
ツッコミどころは満載だ。
事件後、警察に一度回収され指紋や本の中にメッセージがないかなど確認したが、関係性は薄いとされ【ネクロノミコン】はもどってきた。
信之はその本を見るため、図書館に足を運んだが禁書扱いにされており学生では借りる事ができなかった。
今回は所属する研究室の教授と部長の神山に許可書のサインをもらい、貸し出しを願いでた。受付時に司書は困惑しているように見えた。事件現場にあった本だからだろうか。
閲覧制限区域の近くの席に座り。ネクロノミコンを開いた。司書の困惑の理由がわかった。
「本の中身は白紙だった」
もともとがどうであったかわからない為、司書は禁書にしたのでだろう。
17時55分
机の上に事件当時と同じ本を用意した。チョコの本は警察からもどってきていない為、本屋で手に入れた。そして、いつも右手にしているお稲荷様のお守りの数珠も置いた。
神頼みもあったが、以前に同じものを詩織にせがまれたあげく奪われ、その後は右手にいつも身に着けているのを思い出したからである。
2月14日 18時
ネクロノミコンが光だした。閉じてあった魔導書は勝手に開かれた。
信之は咄嗟にチョコの本と数珠を回収し、魔導書に触れ願った。
「あの二人のもとに行かせてください。神様でも、女神でも、誰でもいい。お願いします」
魔導書「ネクロノミコン」だけが図書館に残った。
そして、白紙であった部分に文字が刻まれた。
【第一章 勇者召喚】
信之は目をあけると真っ白な空間であった。
異世界転生でよくある女神との対話を想像した。
「残念だったな、女神様でなくて」
小さなかわいい狐が直立歩行で話しかけてきた。
「誰が狐だ。お稲荷様。神様の眷属だ。あぁ時間が持ったいない。早く名前をつけろ五秒だ5、4、3」
「え、じゃあフォックス様」
「ひねりが無い。けど尺が無いからそれで。様はつけなくいいぞ。後の三人さん自己紹介を」
フォックスの後ろから三体。姿を現した。
「これからあなたがむかう世界の女神ヘスティアです」
美しい。何がでは無い。すべて美しいと信之は思った。
「美しい。じゃない。信之。ここにいる4体は神か悪魔の類や。すべて筒抜けだぞ」
「それでも嬉しいですよ信之さん」
「次は私が。元人間で司教していた、バレンタインです。日本の男性の方には嫌われているのは存じています」
いや。嫌ってはいません。僕のようにチョコを貰えない男達がバレンタインデーを作ったお菓子業界に憤り。廃止を考えているだけです。やっぱり嫌っている?
バレンタインの目から涙がこぼれた。
「最後は俺だな。ラプラスだ。悪魔で魔王候補だ」
「お前馬鹿だろう。今、いっては不味い事いったぞ」
「どうせ、俺の思っている事もわかるのだろう。だったら隠してもしょうがない」
「いや。信之は人間だからな。お前の考えている事などわからん」
「え?」
「いやー。でも良かった。ラプラスが馬鹿で。危うくここで、3対1の聖魔決戦するところだったけど、
その必要性は無さそうで」
とフォックスが言い終えると、信之に近づき、ラプラスと距離をとった後ささやいた。
「おのれ。皆ここで、消滅させ…」
ラプラスが発している途中。光を帯びた鎖のようなものが巻き付き拘束。バレンタインは詠唱し光魔法を放った。フォックスは蹴りを入れた。
「いいチームプレイだったな」
フォックスは信之に「女神がラプラスを拘束、その後、攻撃。を頭に浮かべろ」とささやき。それを感じとった二人が行動に移した。
「さてラプラスは放っておくとして、ヘスティアさん。この後はどうする」
「そうですね。通常は加護を与え転移させるのですが、異物が」
「そうか。酢豚にパイナップルが。誰が異物じゃ。で、信之には勇者の加護を与えてくれるんだよな」
「残念ながら転移先の国には勇者を召喚済みです。2人目はできません。代わりの加護を与えようかと。
後、この刀も。数百年前。平某という方が下さったものです」
「信之。3人でちょっと話あってくる。ラプラス見張っておいてくれ。後、この刀。女神様から」
といって投げてよこした。
拘束されているとはいえ悪魔だし。
「お前、高校まで剣道やっていっただろ。何かあったら切り捨てろ。ちなみにその刀。草薙剣ね。人間が三種の神器って呼んでたやつだ」
違った意味で怖くなった。
3人の話し合いは時間がかかりそうだった。時々笑い声も聞こえてきた。
目の前には悪魔
「ノブユキっていったけ。俺と契約しないか。悪いようにはしない。あの二人を探すのであれば絶対役にたつ」
「勇者になれないのであれば。ん?あの二人?」
「そう。あの二人」
「やっぱり残念悪魔だね。僕は確かに二人に会いたい。けど、この空間にきてから君の近くで二人の事を思い浮かべていない。こんなカオスな状態ではね。何を知っているラプラス」
信之は草薙剣を上段に構えた。
「そこまでだ。信之。時間がなくなった。転移するぞ」
「ノブユキさん。勇者アオイと聖者シオリの事頼みます」
やっぱり女神様は美しい。詩織が聖女?
「ヘスティア様もお元気で」
「私もここまでのようです。私の事は嫌いなってもチョコレートのことは」
「バレンタイン様もお元気で」
加護と魔法の間
「記憶はもどったか信之」
「はい。フォックスさん。で、ラプラスを一刀両断にしたいのですが」
「フォックスでいいぞ。後、ラプラスは情報をもっている。利用価値がある。今はまだ消せない」
「わかりました」
「お前に与えられた加護を説明したいが、何かが近づいている。2つスキルを伝える。頭の中でステータスと唱えよ。後、精神干渉障壁。ようは考えている事を読まれないようにした」
コンコン
「ノブユキ様。侍従長のグラスゴーと申します。」
「どうぞ」
早速スキル「ステータス」を使った。
目の前にRPGのゲームのようなステータスが表示された。
種族 人間族
加護 召喚術
職業 侍従
レベル 48
他いろいろ。
気になったのは最後の特記事項に「呪い」の文字が。
「お初にお目にかかります。グラスゴーと申します。この後、謁見の間で王様に拝謁していただきますが、幾つかお聞きしたいのですが」
「はい」
「あなたは勇者なのですか」
「いいえ」
「やはりそうですか」
ノブユキは勇者ではなかった事。加護も無かった事。属性も無かった事。だけを伝えた。
「最後にラプラスという言葉に心当たりは」
でた残念悪魔。侍従長とどういう関係か。
「はい。ラプラスの悪魔」
「悪魔ですか」
グラスゴーは困惑していた。勇者ではなかった。ラプラスがノブユキに受肉している様子もなかった。しかしラプラスの事を知っている。
ここで始末すべきか。
「いいえ。ラプラスの悪魔という理論です。僕には難しすぎて内容はわかりませんが」
「そうですか。では、そろそろ謁見の間に移動しましょうか」
少し様子を見るか
「すいません。その前にお手洗い。いいですか」
「わかりました。扉の外に侍従がいますので、場所を聞いてください」
部屋にはグラスゴーだけになった。
「グラスゴー。俺だ」
「誰だ」
「ラプラスだ」
魔導書【ナコト写本】が光っていた。
「ラプラス様。これはどうなっているのですか。なぜ魔導書の中に」
「その事は後だ。俺を召喚できるか試してみてくれ」
「はい」
グラスゴーは召喚魔法を詠唱した。
【ナコト写本】の上に魔法陣が現れた。がその後すぐに消失した。
「失敗です。なにか強力な封印のようなものが」
「グラスゴー。ノブユキは殺すな。俺はあいつに受肉し魔王になる。この事は他に漏らすな。【ナコト写本】はそいつに渡せ」
「御意」
「後、王にノブユキは……だと伝えよ」
ノブユキはお手洗いの後。迷っていた。
そして、明らかに違う豪華な扉の部屋の前で足を止めた。
気になる。
「失礼します」
「どなたですか」
女性の声である。
「この度、別世界から召喚されたノブユキと申します」
「では、勇者様」
「いいえ。三枝先輩と詩織とは同じ大学ですが」
「そうですか。申し遅れました。私はエトワール。この国の女王です。といっても今はベットから出ることもできませんが」
ステータス
所属 ハーフエルフ
加護 正義と秩序
職業 女王
レベル 58
特記事項 呪い、毒
「僭越ながら、エトワール様。私と握手をしてもらえませんか」
「握手とは?」
「こう手をつないでいただければ」
「わかりました」
ノブユキはエトワールの体調が改善するよう祈りながら握手をした。
エトワールの体が一瞬緑色に光って消えた。
「ノブユキ様は治癒魔法が使えるのですか。楽になった気がします」
確かに先程と比べれば顔色も良くなった。しかし、ステータスの呪い、毒は消えなかった。
駄目か。治癒魔法が使えるかは賭けだった。
「もう少し、お美しいエトワール女王の手を握っていたいのですが、王様に呼ばれているのを忘れていました。それに、こんな場面を見られたら私の命はないかと。これで失礼します」
「また来てくださいね」
エトワールが微笑んでいた。
絶対またきます。
「ノブユキ様。謁見の間へ案内するようにグラスゴー様より承っております。こちらへ」
「すいません。宮中が広くて迷ってしまいました。よろしくお願いいたします。」
侍従に案内され謁見の間の扉の前まできた。
いよいよ王様と対面か。何かあったら草薙剣と魔導書でラファエル召喚で……。
両方ともない。
「ノブユキ様参られました」
扉が開いた。もう後には引けない。
中央に王様。その左に宰相ベルファスト。右には王女。少し下がったところに左に6人(人間族)右に6人(エルフ ドアーフ 獣人など)並んでいる。大臣と軍部か。
後で分かった事だが、左が王様派。右が女王派である。
見ためとスキル「ステータス」でわかるのはこれくらいか。王様の特記事項に…?
「ノブユキとやら勇者をやらぬか」
バース王の言葉には怒りがこもっていた。
「宰相様には申し上げましたが、私は加護無しの属性も無しのただの異世界人です。それに、あの二人に嘘はつきたくありません」
「不吉の黒髪の勇者と暴力聖女か。では、この場で消えてもらうしかないな」
「お待ちください。王様。この者に二人を探させてはいかがでしょう。同じ世界から来たものであれば見つけることができるやもしれません。それに勇者召喚が失敗したという事は、生存している。とみてよいと思います」
「宰相。生きているとして。なぜ見つからない。それに魔族の手に落ちている可能性もあるだとう」
王様派の大臣が野次を入れてきた。
「仮に魔族の手に落ちたとして、奴らになんの得がある。伝承によれば魔王を倒せるのは勇者だけ。消滅させる以外ない」
女王派の大臣が応戦した。
「ではなぜ姿を現わさない」
「何か事情があるのだ」
「静かにせよ」
バース王は言葉を続けた。
「ベルファストの言葉は一理ある。ただの無能な異世界人であるならば、二人を探す許可を出し、協力もしただろう。しかし黒髪の異世界人は別だ」
「黒髪の…」
女王派も動揺を隠せない。
「決まったな。ノブユキを処刑する」
「お待ちを。王様」
「グラスゴー。どうした」
後方に控えていたグラスゴーが王に進言した。
「無能な異世界人ではあれば、城から追い出し、魔物でも見れば「勇者にして下さい」と言ってくるでしょう。勇者召喚が失敗し、魔王復活が近づいている今、王国に偽物であっても勇者は必要です」
信頼をおく宰相ベルファストと侍従長グラスゴーの意見は違うが理由は一致している。
「ベルファスト グラスゴー こちらに」
バース王は二人を呼び密談をしだした。
数分後、二人は元の立ち位置にもどった。
宰相ベルファストが言葉を発した。
「異世界人ノブユキに申しわたす。勇者召喚の事は他言無用。従属の魔法を付与した後、城より追放。王国以外の移動の禁止と冒険者登録の禁止を申しつける」
召喚の間
「これから、従属の魔法を付与する。その魔法陣から動くな」
グラスゴーが詠唱を行うと魔法陣が輝き、ノブユキの首に黒い模様があらわれた。と思ったら消えた。
「魔法耐性?呪術無効?なぜだ」
バース王からはいつでも殺せるような呪術を付与せよ。といわれている。当然、ベルファストは反対していた。
どうする。ラプラス様に魔導書【ナコト写本】を持たせろ。といわれている。どこにいるかは、何とかなるだろう。
グラスゴーは幾つかの魔法を詠唱した後に、ノブユキの首に先程とは違う黒い模様があらわれた。
「城から出よ。後、そこの魔導書はくれてやる。もう役にはたつまい」
ノブユキは魔導書を開いた。白紙だった。いや、一行だけ言葉があった。
【第一章 勇者召喚】
ノブユキは城から追い出された。
さて、どうするか。冒険者になって二人を探したいけど、禁止されている。おそらくギルドへも連絡がいっているはず。
王都ウェルスで迷子になっているノブユキに顔をエルフが声をかけてきた。
「ノブユキ様ですね。宰相ベルファスト様より言づてと装備品と路銀を預かっています」
「ベルさん…。ありがとう」
追放される前、ノブユキの服装はこちらでは目立つ為と衣装だけは用意してくれた。一般人の服を
「こんな事になってしまって申し訳ない。王様の説得は続けるので、しばらくの辛抱を。後、ギルドに行きギルドマスターにこの手紙を渡してくれ。とお兄様が」
「いえいえ。僕は危うく殺されるところを助けて頂きました。感謝しかありません。あ、そういえば、
ベルさんにお伝えしたい事があったのですがお願いできますか」
「はい」
ノブユキは周りを警戒しつつ、エルフの耳元でささやくように話した。
「キャ!」
エルフが叫んだがノブユキは話を続けた。変態である。
「王女様に会いました。毒と呪いという文字が見えました。後、王様と侍従長には呪いの文字が」
エルフは目を大きくした。
「ノブユキ様は鑑定スキルをお持ちですか」
「こちらの世界ではそう呼ぶのかもしれませんが、人の能力が見えるのです」
「そうですか。ではお兄様の言われる通り、ギルドが一番あっているかもしれません」
「ギルドが」
「先程、ささやいた事は絶対に他には言わないで下さい。かなり危険な内容です。私もすぐにお兄様のもとへ戻ります。では」
エルは走り去っていった。
ベルさんの妹さんでいいんだよね。お名前は?
【ギルド】到着
「さぁこれから仕切り直しだ。二人を早く見つけるぞ」
第二話に続く
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