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第14話 鉱山にゴブリンが出たり、婚約者とイチャついたり

「お、スキルレベルが100になった。やったぜ」


 ステータスを確認し、俺は喜びの声を上げる。

 ここはウォーリヴァー領の鉱山地帯。

 鉱山夫たちがトンネルを掘って、資源を掘り出している場所だ。


 今日は領主代行として視察に来てたんだが、鉱山夫たちと打ち合わせを始めたところで、なんとゴブリンの群が出現。みんなには後方に下がってもらって、俺が群の相手をしていた。


 で、倒した。『エナジー・ドレイン』で魔力を吸いまくれば、なんてことない。結構な数がいたから塵も積もればなんとやらでレベルも上がったようだ。



――――――――――

〇リオルード・ウォーリヴァー

  体力:21000

  魔力:60000

  攻撃:55000

  防御:32500

  敏捷:30000

  スキル

   ・神冠の剥奪(クラウン・テイカー)――Lv2

   ・エナジー・ドレイン――Lv100

         エンチャント:ゴーレム・クリエイト

――――――――――



 んー、エンチャントはとくに増えてないな。

 ゴブリンは数こそいるが低級のD級モンスターなので、さすがにゴールドゴーレムの時のようにはいかないらしい。


 だが魔力を吸ったおかげで、基礎数値はまた上がっていた。

 魔力なんて6000もある。

 王都の聖騎士のざっと60倍だ。

 ゴブリンの群と戦ってみてわかったが、やっぱり俺、とんでもなく強くなってるらしい。なんか王都の騎士団が攻めてきても一人で撃退できちゃいそうだな。


「リオ……大丈夫!? 怪我はない!?」


 戦闘が終了したことを確認したらしく、後方からフィオレが駆けてきた。最近、彼女は俺がどこにいくにも同行し、今日も一緒にこの鉱山まできていた。


「あー、平気平気。問題ない。むしろ思ってたより楽勝だっ……た!?」

「あまり心配をかけないで!」

「ちょ、フィオレ? フィオレさん!?」


 思わず『さん』付けになってしまった。

 駆けてきた勢いのまま、彼女が胸に飛び込んできたからだ。


 うわ、どうしよう。

 これ抱き締めていいのか?

 状況的には優しく抱き締めるべきだよな?


 でもなんか香水のいい匂いするし、ドレスの体は柔らかそうだし、抱き締めたらなんか不埒な気分になっちゃいそうなんだが!?


 そうして煩悶していたら、胸のなかから怒ったような拗ねたような声が聞こえてきた。


「何をぼさっとしているの?」

「へ? え、いやその……っ」

「早く抱き締めなさい」

「い、いいの?」

「婚約者があなたのことを思って心を乱しているのよ? ここは力強く抱き締めるのが紳士の勤めでしょう!?」

「な、なるほど!」


 抱き締めていいのか。

 しかも優しくじゃなくて、力強く……!


 フィオレ本人から免罪符を得て、俺はドキドキしながら腕を動かしていく。しかし両手が彼女のか細い肩と背中に触れそうになったところで、鉱山夫たちの感嘆の声が聞こえてきた。


「いやー、こりゃすげえな、リオ様。あんだけいたゴブリンが全滅だぞ」

「100匹や200匹じゃなかったぞ。雪崩みてえにゴブリンが来てたもんな」

「リオ様、いつの間にあんなに強くなったんだよ。伝説の勇者か何かみたいだったぜ」


 フィオレの後についてきたらしく、屈強な鉱山夫たちが口々に褒め称えてくれる。と同時に俺はがばっとフィオレから離れた。途端に全員でニヤニヤとからかってくる。


「あ、こいつは失敬」

「リオ様、どうぞどうぞ。続けてくれや」

「俺ら見てないフリっすからさ」

「いや絶対みんな見るだろ!? 公衆の面前で淑女を抱き締めたりできるか!」


 まったくデリカシーのない連中だ。

 俺にデリカシーないって言われるなんて相当だぞ。

 危うく衆人環視のなかでフィオレに恥をかかせるところだった。


 ……とホッとして居たら。


「…………ばか」


 フィオレがメチャクチャ拗ねていた。

 白い頬を膨らませ、そっぽを向いている。


「え、なんで怒ってるんだ!?」

「…………抱き締めてくれなかったじゃない」

「いやだってみんな見てたし!」

「…………そんなこと関係ないわ」

「関係ないことはなくない!?」

「…………心を痛めた私をあなたは抱き締めてくれなかった。とても心配したのに。泣いてしまいそうなほど心配したのに」

「うっ。……ご、ごめんなさい」


 さすがに申し訳ない気持ちになり、直角に頭を下げて謝った。

 途端、鉱山夫たち爆笑。


「おい見ろ、リオ様が平謝りしてんぞ。尻に敷かれてんなぁ!」

「ま、リオ様にはああいう嫁さんが合ってる気がするわ」

「だなぁ。放っとくと何するかわかんねえ人だし、嫁さんに怒られて止まるぐらいがちょうどいいだろうさ」


 おのれ、みんな好き勝手いいやがって。

 給料3割減にしてくれようか。


 ちなみに最近、どこにいってもフィオレが付いてくるので、俺の婚約者だということは領内に知れ渡り始めていた。同時に『破滅の魔女』の噂も届いてはいるようだが、みんな、『ま、リオ様が選んだ人なら悪い人じゃないだろう』と言って見守ってくれている。ありがたい話だ。3割減はやめておこう。


 あと普通に『エナジー・ドレイン』を使ってるんだが、そっちについてもあまり驚かれない。もともと俺の神冠の剥奪(クラウン・テイカー)についてはみんな知っているし、大して気にしていないのかもしれない。


 もちろん今のゴブリン退治みたいにやったことについては驚かれるが……まあ、そんなことより今はフィオレのご機嫌を直すことが先決である。


「えーと、その……フィオレさん」


 ごほん、と咳払いし、俺はフィオレにだけ聞こえるように耳打ちする。


「屋敷に帰ったら……君を抱き締めたいんですが、よろしいでしょうか?」

「――っ!」


 一瞬で彼女の頬が色づいた。

 驚いたように俺の方を見て、囁き返してくる。


「……本気?」

「はい、もちろん。俺もその……抱き締めたいとは思っているので」


 恥ずかしくてしょうがない。

 しかしここは本音を吐露する。そうすべき場面だ。


 途端、かぁーっと彼女の顔がさらに赤くなった。

 そしてうつむき加減につぶやく。


「……いいわよ」

「じゃあ、さっきのことは許してくれる?」

「…………許すわ。すべて許します」


 なんか最後だけ敬語だった。

 いつもとのギャップでやたら可愛く感じてしまう。

 俺は頭をかきながら礼を言う。


「ありがと」

「仕方ないわ。だって、そんなあなたについていくと決めたんだもの」


 照れ隠しのように彼女はブロンドの髪をかき上げる。

 その姿もやはり美しかった。

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