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Episode:95

 そのとき急に辺りが揺らいだ。

 そして同時に感じる、妙な胸騒ぎ。


 どうもヘンな能力があるせいか、俺は見え方感じ方がおかしいらしい。

 んでそのせいか、たまに世界が歪んだりする。ってももういい加減慣れてっから半分無視しつつ、惑わされてその辺にぶつかったりしないように、気をつけるくらいだ。


 でも、今は無視しきんなかった。何かとんでもないものが、潜んでる気がする。

 意識を澄ます。違和感の正体に焦点を合わせる。


 ――竜か!


 分かった瞬間、全部が見えてきた。

 その辺を焼き尽くすんじゃねぇかってほどの、悪意と殺意。けどまだ俺が感じられるだけで、現実には現れてない。


 何かが俺に囁いてた。俺が行けば事態が変わる、と。

 何の根拠もねぇのに、何がどうなるか手に取るように分かる。


 一瞬だけ躊躇ったあと、俺は地面に例の魔石を置いた。

 魔石ってのは発動させるのに、人の意思が要るように作られてる。つかそうじゃないと、その辺で勝手に発動して、危ねぇなんてもんじゃない。

 逆に言うと、手近にないと発動させらんねぇってことになる。


 それを――覆す。

 石に関しちゃ得意分野だから、元から手触れないで発動くらいは出来る。問題は距離で……けど、やるしかない。


 失敗したら、あのタカビーな先輩にムチャクチャ怒られっだろうな、と思う。

 でも裏を返しゃ、そんだけの話だ。減点は食らっちまうだろうけど、別に学院追んだされたりしない。

 むしろ今のままのほうが、竜にやられてヘタすりゃ全滅コースだ。


 もちろん今の時点で、ケツまくって逃げりゃ逃げられる。けどそれはさすがに、プライドが許さなかった。

 命令違反だろうがなんだろうが、あいつを竜の前に置き去りで逃げるとか、やれるわけがない。


 また意識を澄まして、石の波動を捉えてから、走り出す。

 悪意と殺意は今も感じるけど、竜の姿はまだ見えなかった。これなら間に合うはずだ。

 気づかれないようにシーモアの後ろ抜けて、ミルの辺りまで来たとこで、通話石から声が聞こえた。


『ルーフェイア、応答して。こちらは全員、配置についたわ』

『了解、こちらも配置につきます』

 同時に、高まる悪意。


 それからいくらも間をおかねぇうちに、ものすごい咆哮が空気を震わせた。

 ルーフェイアのヤツの厳しい声が飛ぶ。

「先輩、竜です。すぐ魔法を!」


 一旦立ち止まって、石に意識を合わせる。さすがに走りながらってのはムリだ。

 ――行け。

 距離を置いたとこで発動した魔法を、必死にコントロールして安定させる。






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