Episode:90
「よく調べてみるとこの儀式、始めたのは厳密には建国王ね。相方の竜に、自分の子孫に力を貸して欲しいと、頼んでるから」
建国王は竜騎士だったから、自分の子供たちにも同じ力を、伝えたかったのかもしれない。
何しろ現代だって、竜を従えてるとなれば、それなりに有利なのだから。
「あ、じゃぁそのために、力試しなんだ」
やっと納得がいった、そんな顔でナティエスが言った。
「そういうこと。だからある程度、取り決めがなされてるわけね」
この辺から先輩、不意打ちはないと判断したんだろう。
「ただ、何事も予定通り行くなんて、思うほうが馬鹿。だから万一の時は……」
「逃げろ、ってわけですか」
あとを引き取ったイマドの言葉に、先輩が頷いた。
「まぁ、召喚した時点で魔法は発動しているわけだから、そこまで出来ればこちらの勝ち。逆にそれ以外は、考えても仕方ないわ。予定と違ったら逃げる、それだけよ」
たしかに古代竜相手じゃ、それくらいしか方法はないだろう。
「ほかに質問はないなら、準備して。すぐ出るわよ」
慌しくなる。ただ準備といっても、いつもの装備にプラスして、各自魔力石をひとつ持つだけだ。すぐにみんな終わって、待機状態になった。
「全員配置に着くまで、ルーフェイアと殿下はここで。展開が終わったら連絡するから、それから定位置へ出てちょうだい」
「分かりました」
答えるあたしにうなずいて、先輩が号令をかける。
「作戦開始!」
みんなが緊張した面持ちで、でも静かに出て行って、あたしと殿下だけが残された。
「僕らはどのくらい待つんだ?」
「少し……かかるかと」
通話石からは、先輩とみんなの会話が時々流れてくる。でもまだナティエスも配置についてないから、まだまだだ。
なにしろ全員を、それなりの広さへ配置しなきゃならない。しかもこういう任務に慣れてなくて、各自自分で計測して判断してってわけにいかないから、なおさらだった。
「それだとヒマだな。本でも持ってくるんだったか」
「すみません……」
つい謝ると、殿下に怒られた。
「なぜお前が謝る」
「え、あ、でも、殿下がこういう待つことに、慣れてないの気づかなくて……」
任務なんて正直、待つ時間が大半だ。けど殿下は急がしいのが当たり前だし、待たされるなんてことはないだろうから、辛いだろう。
それを考慮に入れなかったのは、雇われたあたしたちのミスだ。
けどそのことを言ったら、余計に怒られた。




