Episode:88
「まず、ルーフェイア以外は石を用意。それを持って、祭壇を中心に正六角形に展開。ここまではいいわね?」
「はい」
声が揃う。
「場所は、祭壇の前方がルーフェイアと殿下。それからイマド、あなた石の扱い得意そうだし、ルーフェイアとの相性もいいみたいだから、反対側に行って安定させて頂戴」
「了解」
上級隊なだけあって、メンバーひとりひとりをよく見てるな、と思った。
「シーモアとナティエスは、祭壇奥側の左右へ。どっちがどっちでもいいわ。ミルは手前の右を。私は手前の左。みんな分かったわね?」
「はい」
間違うわけにはいかないから、みんな真剣だ。
「連絡は、任務開始時に配った通話石で。発動の同期もこれで取るから、聞き落とさないように。というか、聞き落としたら死んでもらうから」
先輩が平然と言い放つ。
でも聞き落として失敗したら、もれなく竜とのバトルだから、頼まなくても死ねそうな気はする。
「細かい位置は、私が一緒に行って指示するわ。一周しながら一人一人置いていけば、ぜんぶ一回で終わるし」
「俺ら置物ですか」
イマドが不満そうに言ったけど、先輩はさらに上だった。
「置物の役がもらえるだけ、感謝して欲しいものだわね。見習いなんて、本来は戦力外。連れてだって来ないわ」
いったん言葉を切って、また先輩が続ける。
「手順は別邸で話した通りよ。まず学院生が同時に魔法を発動。殿下は魔法の代わりに、竜の召喚。その後殿下は続けて、例の契約の言葉を。分かったかしら?」
「はい」
いい作戦だな、と思う。
大掛かりな割に、手順がシンプルだ。こういう作戦は、失敗が少なくていい。
先輩がうなずいてから、言った。
「さっきも言ったけど、何より同期に気をつけなさい。ここをしくじったら、全部が瓦解するわ」
先輩の視線が動く。
「特に殿下、召喚と契約の言葉は、ともかく手早く正確に。魔法が効いてる間に言い終わらないと、何が起こるか分かりませんから」
先輩が脅してるけど、念のためだろう。
何しろ使おうとしてる例の重力魔法、発動すればそれなりの時間効いたままだ。その間に契約の言葉を言い切るくらい、出来ないほうがおかしい。