Episode:87
◇Rufeir
朝日が谷を照らしてる。
吐く息が白い。もう秋も半ばだし、標高も少し高いから、朝晩は冷え込むんだろう。
まだみんなが寝てる中、あたしはそっと木々の間から覗いてみた。
野営をしたのは目的地から少しだけ離れた、森の中だ。だから竜が居たとしても、そう簡単には、見つからないだろう。
広場の様子は、昨日と別に変わらなかった。紅葉の始まった黄色い木々を背景に、祭壇らしい大岩が静かに佇んでいる。
上空も、今のところはさわやかな青空だ。
――起こしたほうが、いいかな?
山の天気は変わりやすいから、晴れているうちに片付けるほうが、いいような気がする。
急いで天幕へ戻ると、声が聞こえてきた。
「いつまで寝てるの、起きなさい! 起きないなら減点するわよ」
もちろん、イオニア先輩の声だ。
天幕の中で動きがあって、出入り口からみんなが出てくる。
「あ、ルーフェ居ないと思ったら。おはよー」
「おはよ。えっと……寝れた?」
あたしの質問に、ナティエスがうなずく。
「でも、やっぱりベッドがいいかなぁ」
「何当たり前のこと言ってんだい」
シーモアの言葉に、ナティエスが笑った。
「お喋りはそこまで。さっさと身支度して、食事して。早くしないと天気が変わるわ」
先輩に急かされて、みんなで慌てて用意を始める。
「朝メシ、パンとチーズと燻製肉と、お茶だけだかんな」
「上等じゃないか」
持ってきたありあわせの材料なのに、出てきたのはけっこう立派な朝食だ。
「スープが欲しいところだな」
「ムリ言わないでください。つか生野菜食いてぇ」
このメンバー、どういうわけか男子のほうが、食べるものにうるさい。携行食なんかに比べたら格段においしいのに、それじゃ不満みたいだ。
「いいから食べなさい。文句あるなら食べなくていいわよ」
「用意したの、俺ですけど……」
イマドが抗議してるけど、イオニア先輩が聞くわけない。
「リーダーは私よ。逆らうの?」
「……やめときます」
なんかもう先輩、高笑いでもしそうな雰囲気だ。
「ミルちゃんおかわりー!」
「ねぇよ! つか俺だって食いてぇっての!」
そんなやり取りを聞きながら、必死で朝食を食べ終える。
先輩があたしたちを見回した。
◇あとがき◇
いつも読んでくださって、ありがとうございます♪【夜8時過ぎ】の更新です。たぶん。前作とは一転、バトルやや多目の冒険風味です。
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