Episode:82
「先輩……やりません?」
「待つのならするわよ」
平然と切り返されて、イマドがうなだれる。
「えっと、イマド、あたし……手伝うから」
「いいっ! お前は頼むから座ってろっ!」
ルーフェは親切心だったんだろうけど、全力でイマドが拒否して。
――まぁ、分かるけど。
なんて言ってもルーフェ、すっごい料理音痴。時間がかかるだけならまだマシで、ぜったい足を引っ張るだけ。正直切るだけだって、いつまで経っても終わらないんだもの。
同じ刃物でも、太刀ならあんなに上手く扱うのにね。
「イマド、何にするんだい?」
「別邸でサンド持たせてくれたろ。あとサラダ作って果物剥きゃ、カッコつくって」
意外だけど料理はそれなりのシーモア、手伝うみたい。
「早くしてちょうだい。待たされるのは嫌いなのよ」
もしかして先輩、殿下より威張ってるかも?
「ここで食べるのか?」
「でしたらお一人で、お好きな場所でどうぞ」
慣れてない殿下のこと、先輩ぜったいからかってる。
「そういうわけじゃないが……座る場所がないぞ」
殿下がなに言ってるのか、やっとみんな納得。生まれが生まれだから、あたしたちみたいに「その辺でテキトーに」って発想がなかったみたい。
「どこでもいいのさ、殿下。その辺の地面なりにちょっと座りゃ」
「そ、そうか……」
言って殿下が、腰を下ろそうとしたとき。
「殿下、ダメですっ!」
ルーフェが鋭く叫んで、魔法を唱えて。
「フー・ルヴァレ!」
驚いて飛びのいた殿下の目の前で、小さな炎が上がる。
「なにを――うわっ!」
炎をまとわりつかせた、蛇が飛び出してきたの。
すかさずルーフェが、抜いた太刀で一刀両断にする。
「殿下、こちらへ。あたしの傍なら安全ですから」
「分かった」
ルーフェは責任感から言ったんだろうけど、殿下はすっごく嬉しそう。ちょっと近すぎって距離で、ルーフェの隣に座って。
黙ってご飯用意してるイマドの顔、みるみるうちに険悪になるし。
「こ、この辺になんか敷いて、並べるかい?」
シーモアが話そらしたけど、ちょっと遅かったかも? イマドの手の動きが、なんか大雑把で速いし。
そのまま彼、近寄りがたい雰囲気で一気にサラダ作って……無言でお皿置いて。
「じゃ、食べましょ」
平然としてるのは、先輩だけだったり。




