Episode:81
それと問題なのが、やっぱり殿下とイマド。
まぁイマドとルーフェはあの関係だから、要するに殿下の横恋慕なんだけど、アプローチがけっこう凄いの。
で、ルーフェは「雇い主」って思ってるから、反論しなくて殆ど言いなり。イマドのほうも同じで、口出し出来ないし。
魔視鏡なんかでよくやってる、ドロドロの三角関係とはまた違うけど、妙な緊張感ありすぎかも。
というか、これが原因で作戦失敗しちゃったらヤバすぎ。
「ルーフェイア、お前は平気なのか?」
今も殿下、意味も無く話しかけてて。
「え? あ、えっと、何がでしょう……?」
無視できないルーフェは、困った顔。
けどもう分かってるイオニア先輩が、上手く割って入った。
「殿下、無駄口叩く余裕があるなら、ペース上げますけど?」
「いや、それは……」
さすがの殿下も、口ごもって。
そこへ先輩、追い討ち。
「あと子猫ちゃんに手出すのも、適当にしていただかないと。この子何しろ、一番の戦力なんですから」
言外に、「ヘンなことで悩ませるな」って含みが満々。
まぁ確かに大人しくて、基本後ろ向きなルーフェだから、悩ませたら抜けられなさそう。
ただこの子、バトルってなると人が変わるから、大丈夫かなぁっても思えたり。
「てか先輩、そろそろメシにしません? 俺腹減って」
イマドのほうは殿下そのものは、気にしてるんだかしてないんだか。けどルーフェのこと見ては、ちょっと深刻な顔するから、なんかそっちではあるっぽいかな。
「今朝、私の3倍は食べたでしょうに。効率が悪いにもホドがあるわよ」
「ンなこと言われても……」
人一倍食べるイマドが、困り顔なのが面白かったり。
ってももうお昼だし、朝は早かったし、ずっと歩いてたしで、仕方ないって言えばそうなんだけど。
「僕も休んで食べたいところだな。正直疲れたぞ」
殿下も、きっとホンネ。
ただ、そんなに言うほど歩き通しじゃないの。けっこう小まめに休憩入れて、そのたびに先輩、殿下の足をちゃんとチェックしてる。
それでもこんな感じなのは、やっぱり「殿下」だからなんだろうなぁ。
あたしたちと違ってどこへ行くにも送り迎えだし、訓練なんて、それこそ見たこともないんだろうし。
イオニア先輩も殿下を一瞥したけど、それだけで。さすがに殿下には限界なの、分かってるんだと思う。
「仕方ないわね、昼食にしましょ。そこのボウヤ、早く用意なさい」
「え……」
さすが先輩。いつの間にか食事係が誰か、見抜いちゃってる。