Episode:79
「この先……ちょっと、滑るから」
「ほんと?」
1回行ったことのあるルーフェたちを先頭に、川沿いを歩いてく。
あたしたちが立てた作戦は、割と単純で、でも確実かな?っていうもの。
殿下抜いて、あたしたちって6人。だから六芒星作って、まず魔法を発動。
同時に殿下が竜を、六芒星の中へ召喚。間髪入れずに、契約の言葉とやらを聞かせちゃおう、ってやり方。
もちろんこれだって、完璧とは言えないわけだけど。でも呼んでから唱えたり戦ったりするよりは、きっとずっとマシなはず。
「けっこうこの川、長く続くんだね。洞窟まで、あと少し?」
「まだちょっと……あるかも」
そんなことを言いながら、川べりを歩いてく。
川の中は相変わらず、お魚が泳いでた。帰りに捕まえてみても、いいかもしれない。
「魔石、ちゃんとあるんだよね?」
「あるわよ。あなたたちじゃあるまいし、忘れるわけがないでしょ」
イオニア先輩が、少し怒ったみたいにいう。
「ですよねー、センパイ。センパイみたいな頭いい人が、忘れるわけないしー」
ミルが擦り寄って、ご丁寧に足まで滑らせた。
ごちんと盛大な音がする。
「いったーいっ!」
「何やってんだい……」
ほーんとミル、相変わらずかも。
これでどうしてついてくる気になったのが、やっぱり謎。
ルーフェ辺りが請け負ってるからだいじょぶだろうけど、それだって、危険がないわけじゃない。
まぁもしかすると、怖いもの見たさかもしれないけど……。
ただそうだとすると、引っ掻き回されちゃうから、今度はこっちが危なくなるし。
何より謎なのが、なんでミルがこんなにアヴァンに、絡むのかって事。
ミルのお父さんはケンディクの人だから、これは関係なさげ。だから関係あるとすれば、きっとお母さん?
他にも、去年来たときもアヴァン語とかよく知ってたし、町もよく分かってたし。アヴァンの内情もすごくよく知ってて、挙句に竜玉なんて大事なもの持ってて。
どう考えたってこれ、普通のレベルじゃないはず。
この辺から思うに、きっと何か裏があると思うんだけどなぁ……。
けどミル、話してくれないの。不思議に思ったから何回か聞いてみたんだけど、そのたんびに上手くはぐらかされちゃって。
ただ、殿下がミルにどういうわけか、一目置いてるのは分かったの。
何でだかさっぱりなんだけど、ミルのこと殿下、あたしたち庶民と同じには思ってないみたい。竜玉持ってきたからなのかな?