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Episode:76

◇Lowell side


 「歴史の長い公爵家でも、五本の指に入りそうな状況」。それが現状に対してローウェルが下している、判断だった。

 この家が王位を継いでからはまだ200年にも満たないが、歴史は古い。

 なにしろアヴァン建国王の、次男がその祖だ。生まれ順で継承しなかっただけの話で、本家と長さの点では同格だ。


 その後200年ほど前から始まった周辺地域の相次ぐ独立の際、もっと西方の首都に居を構えていた本家は、ロデスティオに滅ぼされてしまった。そのため現アヴァンを中心に国の東方を治めていた公爵家が、王位を継いだ。

 つまり、実質建国からいままで、国と共にあったと言っていい。

 その長い歴史の中でも、こういう自体は、おそらく初めてだろう。


「まったく、あの連中ときたら……」

 つい口に出る。とはいえ誰もいない部屋だから、聞かれる心配はなかった。

 あの連中というのはもちろん、報道のことだ。


 公爵家は概してあの手の報道関係者を、蛇蝎のごとく嫌っている。

 「知りたがる者の代弁者」などと称して、己が書きたてられたら激怒する内容を、時に嘘まで交えて広めるのだ。


 叔母の結末もまさにそれで、「嘘ではないが本当でもない」というような偏った物言いをしなければ、この国の行く末までも違っただろう。

 どんな理由をつけようともやっていることは、井戸端会議好きの女が隣近所の根も葉もない噂を、作り出しては喋っているに等しい。


 知るというのは、確かに大切なことだ。

 ただそれは、理解できるだけの知識があって初めて、言えることでもある。


 10歳かそこらの子に、高度な魔方陣を教えても、身にはつかない。それどころかその難しさから、半分放り出してのいい加減なものになり、取り返しのつかない事故へと繋がりかねない。

 会社の経営も、似たようなものだ。まったく経験のない新入生に、経営を任せるわけにはいかない。


 外交もまた、同じようなものだった。国同士の利害が極めて複雑に絡み合ううえ、人脈や今までの経緯も影響する。

 これに加えて各国の国民感情までも、考慮に入れなければならないのだ。

 すべてを完全に丸く……とまではいかないまでも、可能な限りの妥協点を見つけ出すのは、並大抵のことではない。


 国内も似たようなもので、あちらを立てればこちらが立たず、双方の利害がぶつからないようにまとめるのは、至難の業だった。

 それを国民が、どこまで分かっているのだろうか?


「……知らぬのだろうな」

 自分のように生まれた時からそういう中にいるならともかく、ふつうは政治など遥か彼方の話だ。よほど興味がない限り、国際情勢や細かい関係を知ることなど、まずないだろう。

 結果、漏れ聞こえる面白おかしい話だけを喜ぶ、おかしな状態になるのに違いない。




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