表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/121

Episode:74

「もっかい、いけるか?」

「うん、だいじょぶ」

 魔力の余波が治まるのを待って、もう一度、威力を限界まで絞って唱えてみる。


「――シュヴェア=ブロカーデ」

 働いてはいるけど、目立っては分からない。その程度で魔法が発動する。


「……これで、いい?」

「いいけど、次から黙っててくれっか? 慣れてねぇ魔法だから、どうも見落とすわ」

「あ、ごめん……」

 せっかく頑張ってるイマドのジャマをするなんて、あたし何をしてるんだろう。


「えっと、じゃぁ、もう一回」

「ああ。何度も悪りぃな」

 ホントはひとつも悪くないのに、気を遣ってくれるイマド。それに甘えてる自分が、情けなくなってくる。


 それでも失敗しないように、息を整えてまた唱えた。

 ――あたしに出来るのは、これだけだから。

 上手くこの魔法で石が作れるようになれば、きっとイマドの役に立つだろう。


「シュヴェア=ブロカーデ」

「おし、捕まえたぜ」

 予想もしなかったイマドの声に、あたしまで嬉しくなった。

 思わず話しかけようとして……今度は必死に押さえる。また迷惑をかけたら、話にならない。


「んー、まぁ出来たかな」

 少し経って、イマドのそんな言葉。


「ちっと石に、魔力足してくれっか? 型だけ書き込んじまったから、きっと魔力入ってねーと思う」

「あ、うん」

 ふつうとはかけ離れた手順なのに、基本的なところは同じなのだなと、妙なところで感心する。


 通常はこの手の魔石は、魔方陣を使って呪を上手く石に固定化させたうえで、あとから魔力を注ぐ。

 理由は簡単で、このほうが事故が少ないことがひとつ。あとこの手順を分離することで、魔力を注ぎなおすとすぐ再使用できるのが大きい。


 この手法が発明されてから、世界の文化水準は一気に上がった。

 何しろ火を起こすにも明かりを点けるにも、それ用の魔石を用意すればいい。それまでの苦労に比べたら何もしないも同然で、当然あっという間に世界中に広まっていった。

 今はほとんどの家庭で、この魔法が書き込まれた石と、魔力だけが込められた石をセットにして使うやり方で、道具なんかを動かしている。


「あんま、魔力入れなくていいからな。まず試さなきゃなんねーし」

「うん。えっと……入れすぎそうなら、言って」

 視えるイマドに頼んでから、慎重に魔力を注ぎ込む。


「あともうちっと……あ、そこで」

 即座にやめると、彼の満足そうな笑顔があった。

「ありがとな、助かるわ」

「ううん」

 役に立てて、ほんとに嬉しい。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ