Episode:07
◇Nattiess
任務の話がきてから5日後、あたしたちアヴァンにいたの。
っても、これでもけっこう強行軍。なにしろ話聞いた2日後には学院発って、そのまま列車内で2泊しながら、首都のイグニールへ直行。すぐ船に乗って、船内で1泊しながらアヴァンまで。
ホントは今日1日くらいゆっくり遊んで、それから顔合わせしたかったんだけどなぁ……。
ちなみに顔合わせの場所になったのは、去年とおんなじ屋敷の、おんなじ部屋。ただ、メンバーはちょっと違うわけで。
「……僕はそこのルーフェイアを、指名したはずだが」
なんか殿下、すっごく不満そう。理由はなんとなく分かるけど。
「あら、そうでした? こちらへ来た書類では、同行者3名も一緒にと書いてありましたから。
なんでしたら、どうぞ書類をご確認くださいな」
対峙するイオニア先輩ったら、いつもと同じく高飛車。殿下といい勝負かも。
「仮に殿下のご意向とは違うことを、そちらのどなたかが付け加えたにせよ、こちらは逆らえませんの。
所詮雇われですから」
同行者も連れて来いって書かれてる紙突き出されて、殿下ったら反論できなくて。
それにしてもこの殿下にこれだけ言ってのけたの、イオニア先輩がはじめてかも?
「ともかくこの件に関しては、ルーフェイア以外の人選は、こちらに一任されてましたから。
――あぁ、今からご指名の誰かを連れてくるって手はあるわね。4日はかかるでしょうけど」
わざとじゃないんだろうけど、先輩すっごいケンカ腰。ちょっとこれ、まずいかも?
それからイオニア先輩、少しの間殿下を品定めするみたいに見て、付け加えたの。
「申し上げておきますけど殿下、このメンバーを選んだの、ルーフェイアですからね。そちらが指名した子が、任務のために選んだ仲間ですから、ガマンしていただかないと」
らしいかも、って思った。
鋭いイオニア先輩のことだから、殿下がなんでルーフェを指名したかは、もう分かっちゃってるはず。でもそれを逆手に、逃げ道塞いじゃってる。
「彼女が選んだのなら……やむを得んな」
殿下が眉間にシワ寄せながら、折れて。
――ちょっと気の毒かも?
任務って称してルーフェイア名指しして、仲良く野営って、思ってたんだろうなぁ。
「ところで今回の任務、どこまで聞いてる?」
殿下の問いに先輩、めんどくさそうに髪をかき上げた。
「聞いてないにきまってるじゃありませんか。それとも私たちに、この書類以上のことを事前に問い合わせろとでも?」
話だけ聞いてると、どっちが上かわかんない。だけど殿下……ちょっとだけ楽しそう?
「まったく、言いたい放題だな。
今回の話は少しは聞いたかもしれないが、代々伝わる儀式がらみだ」
ここで殿下、あたしたち以外の人を下がらせた。どうやら他の人たちに聞かれると、まずいことみたい。
殿下が声をひそめる。
「うちの家では、正式な継承権を得るためには、この儀式を経なければならなくてな。16歳になる前に終えておかないと、一生継承権が得られん」
「くだらない話だわ」
イオニア先輩ったら、あっさり切って捨てて。
でも殿下、楽しそうに笑ってる。ずばずば言っちゃう先輩のこと、案外気に入っちゃったのかも。