Episode:67
「ともかくそういうわけだから、複数名で同じ魔法をかける方法はムリ。分かったわね」
ただ相変わらず、言い方は高飛車だ。
「……要するに、魔法さえ発動させられりゃいいんですよね?」
ずっと話を聞いていたイマドが、確認するように聞いてきた。
「それがムリだって、今言わなかったかしら? 二度も同じことを、言わせないでちょうだい」
「いや、もしかしたら、出来るかもしれないんで」
先輩はもちろん、あたしも一瞬言葉を失う。
「魔法……使えるの?」
「わかんね。けど、試してみたらやれっかも」
イマドのいつも通りの、いい加減な答え。
「それじゃ分からないわね。ちゃんと説明も出来ないのかしら?」
「説明する前に、言わないでくださいってば」
言い返してから、彼が説明を始める。
「魔石、ありますよね?」
「あるわね。だから何?」
傍から聞いてると、まるでケンカしてるみたいだ。
「だからって言われても。空のそいつにこの魔法放り込んで、発動させたらダメですか?」
「え……?」
またみんなが言葉を失う。
イマドの言ってること自体は、ムリってわけじゃない。
ただ何かの呪文が込められた魔石を作るって、けっこう面倒だ。きちんとした魔方陣を作って手順を踏まないと、中にきちんとした呪文が入らない。
ましてやこんな、扱いの難しい魔法を込めるなんて、そう簡単に出来ることじゃないはずだ。
「出来る……の?」
「んー、たぶんな。ただどんだけの威力が出せっかは、わかんねー」
要するに、作れるものの効果は未知数、ってことらしい。
でも、試してみる価値はあると思った。これが使えるなら、かなり話が楽になるはずだ。
「イマド……だったかしら? 必要なのは何? 空の魔石は当然として、魔方陣を組むならそれ用のインク?」
先輩も同じことを考えたんだろう。詳細を訊きはじめる。
けどイマドの答えは、あまりにも意外だった。
「空っぽの魔石と、こいつ借りれば出来ますよ」
言って、こっちを指差す。
「あたし……?」
「そそ、おまえ」
嘘を言ってるようには見えない。でも、こんなのは初耳だった。
何でもそうだけど、魔力を付与するのは簡単じゃない。本来持たないものに持たせるわけだから、かなり無茶な状態を作るわけで、そのためには魔方陣なんかが欠かせなかった。
これは魔石も同じで、親和性が高いから魔力を込めるだけなら簡単だけど、呪文そのものとなると一仕事だ。
それを、こんな簡単にやるって……。