Episode:66
「じゃぁ聞きなさい。上位種の竜の特徴は?」
「んー、飛べる、大きい、頭がいい、魔法が使える、あと魔法があんまり効かない?」
訊かれたナティエスが、次々と挙げる。ほぼ正解だ。
イオニア先輩も、満足そうにうなずいた。
「よく出来たわ。で、その中で今回問題になりそうなのが、“魔法が効き辛い”ってこと。これは分かるわね?」
「あ、はい」
みんなうなずく。
「で、仮にこの魔法で足止めしたとして。予想通りの効果が出なかったら、あなたたちどうするつもり?」
「あ……」
そこまで考えてなかったんだろう、ナティエスやシーモアが慌てた表情になる。
「やれやれ。まぁ候補生でもないなら、こんなものかしら? とりあえず何か思いつくなら、言ってごらんなさい」
少し考えて……あたしは思い切って言ってみた。
「あの、複数で唱えるのは……」
「方向としては、悪くはないわね。でもムリよ」
あっさり却下される。けど、悪くないのにダメな理由が分からない。
「あぁ、子猫ちゃんには難しかったかしら?」
あたしの表情で分かったんだろう、先輩がそんなことを言う。
「子猫ちゃん、あなた、魔法得意でしょ?」
「え? あ、はい」
なんであたしが子猫なのかは分からないけど、魔法が得意なのは確かだ。
「やっぱりね。まぁその年じゃ仕方ないけど、覚えておいたほうがいいわ」
そう言うと先輩、腰をかがめてあたしと視線を合わせた。
「この魔法、誰でも使えるものじゃないわよ?」
言葉と一緒に、ぱちんとおでこを弾かれる。
「えっと、あの、えっと……?」
「あぁいいのよ、才能があるのは悪いことじゃないから。ただね、誰でもあなたみたいに、こんな大きい魔法が使えるわけじゃない。分かるわね?」
言われて気づく。
確かにこの魔法、たぶん扱いづらい部類だ。あたしでも同時に複数発動させられなさそうだから、相当魔力を食うんだろう。
だとすれば上級隊ならともかく、候補生くらいだと発動させられない。ましてやこのメンバーじゃ、使えるのはあたしとイオニア先輩くらいだ。
「あの、でも、あたしと先輩で……」
「理解が早くていいこと。でもムリね。私でもこの魔法、おそらくキツいわ。制御でミスるでしょうね」
ちょっと悲しそうな、先輩の表情。
「すみません……」
「いいって言ったでしょ。私の力が及ばないのは、私の責任。あなたが気にすることじゃないわ」
言いながら先輩が、あたしの頭を撫でる。
――意外と、優しいかも。
最初はもっと怖い人かと思ってたけど、そうでもないみたいだ。