Episode:64
「彼の言うとおり、あらかじめ罠を張るのはムリと見たほうがいいわね。思い違いで、竜が居ない可能性もあるけど、そんなものに賭けるわけにいかないわ」
当たり前の話だった。一縷の望みに賭けるくらいなら、最悪を想定して動いたほうがいい。そのほうがアテが外れたとしても、被害が少ないのだから。
「だとすると、魔法かね。あれならこっちで準備してけば、あとは即発動させられるわけだし」
「じゃぁ、眠りとか、石化とか?」
シーモアの言葉に、ナティエスが代表的なものを挙げる。
「そこまで行かなくても、ほんのちょっと足止め出来りゃいいんじゃないか?」
「そっか……何があるだろ」
考え込む二人に、イマドが言った。
「つかお前ら、それ効くのか?」
「あ……」
どっちも、しまったという表情になる。
竜、それも上位種は、魔法があまり効かないことで有名だ。元から強大な魔力を持つせいで、外から魔法をかけても弾かれてしまうらしい。
「眠りダメ、石化ダメ、その他の似たようなのもたぶんダメ……やりようないじゃない!」
ナティエスが、ほとんど悲鳴みたいな声をあげる。
「これで何とかしろとか、ムリ、ぜったいムリ!」
「ってもナティ、少なくとも4人はやってのけてるんだ。何か方法あるんじゃないか?」
負けず嫌いのシーモアは、逆にやる気がでたみたいだ。
その辺はイオニア先輩も似てるみたいで、僅かに笑いながら考え込む表情が、すごく怖い。
「そうね……直接がダメなら、間接はどうかしら? 周りの地面や何かなら、問題なく魔法がかかるでしょ」
「えっとそれ、落とし穴とか?」
「ナティエス、竜って飛べるから……」
思わず言う。人間なら引っかかるだろうけど、竜にはムリだ。
「あーそっか、走竜じゃないから飛ぶんだっけ。足止めには良さそうかなと思ったんだけど」
彼女の言葉を聞きながら、何かが引っかかった。落とし穴じゃなくて、似たような方法が何かあった気がするのだけど……。
「――あ、重力」
やっと思い出す。
「重力? それがどうしたんだい?」
「確か範囲内だけ、それを強くする魔法が、あったはず……」
どこかでそういう呪文を、見た記憶がある。
「使えるのかい?」
「えっと、ちょっと待って。あたしも、うろ覚えで……」
記憶をたどりながら、呪文を唱えてみる。




