Episode:61
「じゃぁ先輩、これで正解?」
「正解というか、答えの一つね。まぁ戦術の初歩だから、本当はヒントがなくても分からなきゃダメだけど、あなたたち候補生でもないものね。今回は目をつぶってあげるわ」
やっぱり、けなされてるような気がする。
「いい機会だからこの手の作戦の立て方、ざっと教えてあげるわ」
含み笑いをしながら、イオニア先輩があたしたちを見回した。こういう謀略とか、好きなのかもしれない。
「まずそうね、今の答えに沿って、あなたたちの作戦を披露してもらおうかしら? そこから詰めていくほうが、分かりやすいはずだから」
「えっと……」
さすがに作戦を立てるとか誰も慣れてないから、みんなでちょっと考え込む。
「あぁ、さすがにムリ? しょうがないわね、じゃぁ今回のクリア条件から言ってごらんなさい」
先輩の言葉に、まずナティエスが口を開いた。
「えっとそれって、殿下とあと何人かで竜玉持って谷へ行って、契約の追加をする?」
「ナティエス、同年代ってのが抜けてっぞ」
イマドが付け加える。
「あ、そっか。だとすると今回儀式に行ったメンバーみたいので、行って契約しなおしすればいい、ってことかな」
「単に谷ではなく、奥の方だな。確か竜岩というのがあるはずだ」
イオニア先輩がなんでこんなことをさせるのか、みんなの言葉を聞きながら腑に落ちた。
こうして話すうちに、次々と足りないものが出てきて、穴も埋まっていく。しかもどれも、忘れていたら大変なことばかりだ。
これは初歩だから大したことはないのだろうけど……上級隊なんかはこうやって、もっと緻密な作戦を立てていくんだろう。
「じゃぁ整理してみましょうか?」
ひととおりの話が終わったところで、先輩が言った。
「いいこと、よく聞くのよ。まずアヴァンの本来の継承は、竜を得ること。そしてそのためには、竜玉が必要。ここまではいいわね?」
「はい」
イオニア先輩の言葉にみんなうなずく。
「よろしい、じゃぁ次。その竜を得るためには谷の奥の竜岩まで言って、契約を更新する。手法は契約の言葉を竜に聞かせて、自分を契約者に加える。殿下、これでいいわね?」
「ああ、その通りだ」
殿下の答えに、満足そうにうなずく先輩。
あの頭の中、いったいどんな思考回路が詰まってるんだろう? ちょっと見てみたい気がする。
「で、その際に試練があるわけだけど、それについてはとりあえず割愛。どんな試練か分からない以上、防御を固める以外手の取りようがないわ」
理路整然とした説明は、ちょっと姉さんに似てる。何言ってるのかさえ分からない母さんとは、大違いだ。
「一方で試練のクリアの仕方だけは、ヒントがあるわね。だとすると今回は特殊なケースだから、それに従えば、自動的に試練からのダメージは防げると考えていいわ」
「なる……」
先輩の説明はまるで、綺麗に図を描いて無駄な線を省いていくみたいだ。